エピゴノイの覚悟
「無礼をお詫びいたします」
膝を付き、ブレザーを着た若者が、ゼルペンティーナの前に跪いた。
檜皮瀬亥である。目を伏せ、一心に敬意を払っている。
「ここはどこだ?」
ゼルペンティーナの問いに、瀬亥が答える。
「ここは、最終決戦の場。計画とは変わってしまいましたが、我々は劇場に籠城するよう、当初から考えておりました」
ゼルペンティーナは頷いた。
「ほう、ここは劇場か。貴様らも味な真似をするものだな」
瀬亥が頷く。
「はい。我々『エピゴノイ』の狙いは、当初からあなたを防衛することにありました。それには、この世界でもっとも警備体制の強固な劇場が相応しい、という判断です」
ゼルペンティーナは疑問の声を漏らす。
「私を防衛だと? 意味がわからんな」
瀬亥が答える。
「人類は、最終的にあなたを殺すことで、『フェアツェルング』の能力で変革された未来の揺れ戻しをなくそうと考えています。それはさせません。あなたを絶対に殺させはしません」
瀬亥が続ける。
「我らの願いは、変革を行わせないこと、ただそれだけ」
ゼルペンティーナは、またも疑問の声をあげた。
「何故だ? 何故、変革をそうまで嫌うのだ?」
瀬亥は、目を伏せたまま答える。
「我ら『エピゴノイ』は、『コーダ』が起こった後の人類。そう、『ザナドゥ』で生まれた人類だからです」
「なんだと……」
ゼルペンティーナは呻いた。