封鎖
一方、劇場ゲートを防衛していた面々は、二人の『エピゴノイ』、かいら、そしてカナリヤと対峙していた。
そして、ログフェローは、戦略兵器と言っても良いほどに破格の威力を持つカナリヤを止めるために前線に上がってきた。同じく、ウェンディと董晶も前線に出ていた。
「董晶、お前が前線に出てどうする」
ログフェローが董晶に話しかける。
「言ってくれるじゃねぇか。なんでお前こそ前線に出てるんだよ。引っ込めよ」
董晶の言葉にログフェローが肩を竦めた。
「少々、敵が多すぎる。露払いをやりたかった」
「いいぜ。やろうか」
確かに、彼らの眼前、かつて『コデッタ』に破壊される前の状態を忠実に再現した新居条の前には、雲霞のごとく敵がいる。おおよそ一万を超える兵は、いまだ展開しているはずだ。
そして、ログフェローは居合いの構え、董晶は両手を頭の上に上げ、次の瞬間、眼前にいたかいらとカナリヤに向け、攻撃を放った。
かいらは、咄嗟にカナリヤを突き飛ばす。
「何すんのよ!」
そして、瞬間、何故彼女が突き飛ばしたかを理解した。
ログフェローの剣は、抜刀した瞬間爆発的に巨大化し、身の丈を三倍から四倍も超えた馬鹿げた長さの剣が、ログフェローの手に握られていた。
そして、ログフェローはそれを凄まじい勢いで振るった。一薙ぎで生まれた衝撃は、ログフェローの目前全てを青白い光で覆い尽くし、一瞬の間の後、それら全てが爆砕する。凄まじい衝撃が遠くの新居条の建物をも揺れ動かす。
眼前に展開していた敵は、もはや青白い光の洪水と言っても良いほどの膨大な光に曝された。そして、そのことごとくが全てを破壊する。
「とどめ!」
そして、続けざま董晶が腕を振りかざす。
すると、董晶の目前のほぼ全ての地面が、氷に覆われていくではないか。
ログフェローの直後に放ったため、光の洪水に呑み込まれた『エピゴノイ』たちは何が起こったかを理解できない。そして、その足下に迫り来る死の気配を、躱せなかった。その氷は、『エピゴノイ』全体のおおよそ七割を覆い尽くした。
そして、次の瞬間、『エピゴノイ』はその場に倒れ伏し、青い炎となって掻き消えていった。
「何が起こっているの?」
咄嗟に飛んでこの難を逃れたカナリヤは、倒れていく『エピゴノイ』たちを見て驚愕の表情を浮かべた。
「正面切って破壊するんじゃなく、『エピゴノイ』が必要とする主要臓器だけを凍り漬けにしたのさ。苦しまない上、俺もそんなに記憶対価を払わずとも済む。だから広範囲を一度に狙える」
『エピゴノイ』たちの肉体は見た目上、ほとんど損壊はない。一瞬寒いと感じた次の瞬間には、恐らく消えたのだろう。
たったの二撃。その二撃で、またも戦局は大きく揺れた。
「なんてこと……」
カナリヤは、あまりの惨状に焦りを覚えた。無理矢理突破するにしても、彼らを片付けなければ、徒に犠牲を増やすだけだ。
「私が出る」
かいらが呟いた。
「待って! 私がどうにかするから、かいらは下がってて!」
カナリヤは焦った。彼女はかいらのことを知っている。だからこそ、出来るだけ前に出したくない。
「あれだけの威力を持つ相手に、カナリヤの能力では太刀打ちできない。わかるでしょう、自分で」
かいらはカナリヤをじろりと見た。
「……ええ。防御手段が私にはないわ。『青い炎』では、あの攻撃に対抗できない」
「だから私が出る。彼らを潰さない限り、こちらに勝ち目はない」
カナリヤは、かいらの肩に手を置いた。
「消えないでね。瀬亥が悲しむ」
「当然!」
かいらは駆け出した。向かうは、ログフェローと董晶、そしてウェンディ。戦略兵器にも及ぶ驚異的な破壊力と、的確に『エピゴノイ』の弱点を突く攻撃。二種を相手にするのは無謀極まりない。
そして、ログフェローも董晶も手を抜かない。抜くはずがない。
ログフェローは居合いの構えを取り、董晶も『エンバディ』の構えを取った。両方とも、並の『エピゴノイ』なら確実な死が待っている。
そして、青白い閃光と、『エピゴノイ』の冷たい刃がかいらに襲いかかる。
しかし、かいらは躱そうともしない。
そして、正面からその攻撃を受けた。だが、その脚を止めない。
「どういうことだ?」
疑問に思うログフェローの元に、かいらの拳が迫る。拳が唸る。その迅さは並のものではなく、ウェンディは目を見張った。
(化け物じみた速度だ。あの『エピゴノイ』、あそこまで格闘に特化したタイプだったか? そして、何故攻撃を耐えることができた?)
例えるなら拳の結界。秒間数千から数万に達する拳は、半径数メートルを完全に埋め尽くした。
だが、その拳の連打を、ログフェローは全て剣で払い除ける。その速度、既に神域。
「さすが、未来予知にも匹敵するほどの先読み」
かいらが嗤う。
「貴公とて読めるだろう。故に合わせてくれているに過ぎんのだろう」
ログフェローは、神速に達しようかという剣で薙ぎながら、呟いた。
「では、これはどう?」
気配が、変わった。
秒間に十数の拳。そして交差する十に満たないほどの蹴り。
先程より遙かに速度は落ちており、動体視力と反射神経を駆使すれば、それを弾く事は十分に可能な筈だ。しかし、実際には、音速を超える速度で薙がれるログフェローの剣は、その全てを弾く事は出来なかった。
めり込む痛恨の打撃。五発もの強烈な打撃を全身に受け、ログフェローは顔をしかめる。
ホプキンスはログフェローとかいらの闘争をじっと厳しい目で見る。何合も拳と剣とを交わすが、その度にログフェローは傷を負う。
「まずいな。あの旦那の剣、『凄涼』は最早、あんな凄まじい戦いには耐えられねえ」
ホプキンスは様子を見ながら、思わず呟いた。
「ログフェローは攻撃を弾けなくなっている。スピードこそ遅くなっているのだが、何故だ?」
董晶が疑問をウェンディに持ちかける。
「……はっきりとは判らん。あたしの動体視力ではあのかいらの凄まじい迅さの攻撃は追い切れないからな。そして、龍眼と呼ばれるログフェローも、我々の何十倍と見える訳じゃあない。人並み外れた状況把握能力と、未来予知にも等しい『読み』。その二つであの異常な迅さのかいらの拳を弾いていた筈だ。それが出来ないとなると、その二つのどちらかが崩れた、と考えるのが自然」
「目は見えているようだ。という事は即ち、『読み』が出来なくなった、と」
董晶の言葉にウェンディは頷いた。
「その上、ログフェローの旦那、剣もイカれ始めてる。保って、数百合ってところと見る」
突如として巻き起こった乱打戦。あまりにも不可解な速度と、図抜けた防御。
(あのかいらとかいう『エピゴノイ』の能力がわからない……だから打開策もない)
董晶は焦りを覚えた。
そして、あろうことかウェンディはかいらに直接仕掛けた。
二対一。かいらにとって不利な状況。だが、これで少しはかいらの不可解な能力が見えれば、手が打てる。
ウェンディは猛然と乱打戦に持ち込むため、最高速で拳を撃った。無論、無策ではない。格闘家だからこそ出来る策だ。
そう、ウェンディは拳を合わせることで、かいらの策を読もうとしたのである。
拳と拳を合わせることで、少しでも流れ込んでくるものがある。それを狙ったのだ。
果たして、猛烈な拳の乱打は、ウェンディの想像を絶する速度であった。
だが、彼女には驚異的な弾きと、払いの技がある。無理矢理に割って入り、結界とも言えるほどの拳の嵐を、捌いてみせる。
そして、数打その攻撃を弾き、それだけで違和感を覚えた。それは、長年戦いに身を置き、拳を合わせてきた経験から類推できることであり、そして、それは誰しも、格闘を行う人間であれば確実に達していることだった。
かいらの拳には、それが欠けていた。
それは、無念無想、無我の境地ともいえる、意識せずに撃つ拳が、あれだけの数を乱打しているにも関わらず、ただの一打もないという恐ろしい事実だった。
全ての攻撃が計算尽く。頭で考え、意識した通り、何もかもを行う。それは今までウェンディが行ってきた格闘とは一線を画し、常軌を逸していると言ってもよい。
そして、ここで推論が生まれる。
(まさか、この少女の能力は……)
「董晶! さっきの撃って!」
近接戦闘に直接は加われないため、董晶はややその場で止まっていたが、その声に弾かれるように動く。
「いいぜ! 喰らえっ!」
途端、かいらは手を止めた。そして、鉄の塊のように硬くなり、董晶の凍結を躱した。
「やっぱり! 意志の力を肉体に反映できる能力!」
かいらはウェンディを睨み付けた。
だがウェンディはにやりと笑う。
「アンタ達のその格好といい、油断させて確実な一手でチェックメイトってつもりだろうけど、甘いよ! 手品の種がバレたら、そこまでだ!」
「しかし、倒せるなら、倒すといい。物理的な物なら壊せばいい。でも、わたしの心は何をもってしても壊せない。あなたたちのような、大地でのほほんと息を吸って生きていられる人間には!」
そして、かいらはくいっと首を曲げる。
「了解! ぶちかますわよ!」
途端、カナリヤが砲撃を行った。今度は手加減抜き、全弾を撃ち尽くすばかりの大砲撃だ。あっと言う間に『タイダルフォース』の壁は撃ち抜かれ、一瞬にして瓦礫と化していく。
「止めてみればいい。でも、わたしはカナリヤに一撃も入れさせない。最強の盾と最強の矛があれば、わたしたちは負けない!」
そして、かいらは仕掛ける。すでにタネがバレてしまったため、彼女も少しは焦っている。
ログフェローとウェンディも構えるが、今度は、驚愕する事実を突きつけられる。
「わたしの意志を、超えてみろ!」
今まで以上の最高速の拳。間に合わない。ログフェローは咄嗟に剣を振るったが、その『凄涼』ごと、拳がログフェローを破壊する。
ウェンディも弾きを構えるが、間に合わない。
そして、ウェンディははるか劇場ゲート側まで、おおよそ三百メートルほど拳で吹き飛ばされ、ログフェローはその手刀で胴体を貫かれていた。
いまだにカナリヤの銃撃は止まない。
「ホプキンス! 二人を頼む!」
董晶は、かいらがログフェローを払い除けた途端、眼前に立つ。
そして手を翳すと、空間を覆い隠すような壁が生まれた。透明な壁。だが厚く、強固だ。
証拠に、カナリヤの砲撃を受けても、びくともしない。
「なにこれ、どうなってるの!」
砲撃がまったく通らず、カナリヤは怒りの声をあげる。
対してかいらは、カナリヤを止めた。
「無駄よ。これは『繋脳者』国際ⅩⅠ級、しかも『チャリス』と『ソード』双方持ってる人間にしか作れない大技だわ」
カナリヤは焦りの声をあげる。
「そんな大物がいたって言うの? じゃあ、これ、ただの氷の壁じゃないの?」
かいらは頷いた。
「ええ。これは意志の氷壁。意志の力が保つ限り、その耐久度は無限」
カナリヤは首を振った。
「まるで、かいらの能力みたい……」
対して、当の董晶は厳しい形相を見せていた。
「オレもこんな大技、そうは保たない! 早くしてくれ!」
「ちっ」
ホプキンスは、崖を駆け下り、まだ五体がくっついたままの兵に大声をかけた。有り体にいって、先ほどのカナリヤの野放図な発砲で、満足に手足がくっついている方を探すのはなかなかに困難だった。うめき声と血肉の赤い色と、饐えたような匂いと糞尿と鉄の匂いが入り交じった戦場の匂いが立ち籠めるばかりだ。
そして数名の兵と共に、苦み走った顔をしてこちらを睨み付けているかいらと、鬼神のような勢いで銃弾を砲撃するカナリヤを壁の向こうに見つつ、ログフェローを回収した。
ウェンディは他の兵が回収している。
すると、ログフェローが弱々しいながらも自らの力で立ち上がろうとした。
「止めとけ! 今は逃げるしかねぇだろ。もう立て直せる状況じゃねぇ」
ログフェローはホプキンスに一喝された。
「P.U.P.P.E.Tで『不変閉空間』発生装置を設置していた奴がいただろう。彼に連絡を取りたい」
仁赫のことだろう。肩を貸しゲート側へと戻りながら、通信機を片手で動かし、ホプキンスはログフェローの口の辺りに付けてやった。
「ほらよ」
「こちらは……ログフェローだ。設置は? 完了したか。ならば、今から五分以内に起動しろ」
ホプキンスは目を見張った。
「撤退か?」
ログフェローに尋ねると、ログフェローは首を縦に振った。
「じゃあ、悪いけど全軍に通信してくれ。悪ぃな」
「いや、構わない」
ログフェローは呟き、全軍に向け通信が入る。
「このエリアを放棄、封鎖の上、劇場の『不変閉空間』発生装置を起動する。全軍撤退」
わあっと劇場ゲート前の兵は一斉にその場を放棄し、脱兎の如く駆け出した。
そして、通信が入る。董晶だ。
「オレが殿をつとめる。ホプキンス、あの馬鹿に伝えておいてくれ。五年くらい前にお前が買ったあの趣味の悪い絵の裏に、金が隠してある。それと、とっととかぼちゃのそぼろ煮を食えって」
「待てよ、帰ってくるんだろうが。オレに嫌な思いさせるなよ」
「まあそう言うなよ。あと、オレの机の上に置いてある、『権利のための闘争』の中に、手紙が挟んである。頼むぞ、伝えてくれよ」
ホプキンスは小走りでその場を離れながら、通信の意味を理解し、ため息を漏らした。
「いいか、少しでもどうにかなりそうなら帰ってこい。投げ出しちまえ。お前の帰りを、たとえどんなになろうとも、一人は絶対に待ってるんだからな」
通信に答えはなかった。そのまま、ホプキンスが立ち去っていく。
だが、董晶は、眼前に仁王立ちで立っているかいらとカナリヤを見て、身震いをしながら、『エンバディ』を保ち続けていた。
「私の能力は、知っていると思うけれど、意識をコントロールできる能力。防御だけじゃなく、攻撃にも転じさせることができる。悪いけど、『チャリス』にして『ソード』、しかも国際ⅩⅠ級といえど、楽には死ねないわ」
かいらは不吉な笑顔を見せた。死神のような儚い笑み。
「かいら、何するつもり? この壁は、アタシの攻撃でも砕けやしないわ」
カナリヤの言葉に、かいらは微笑んでみせた。そして、ゆっくりと氷壁に触る。
途端、董晶は激しい痛みに襲われた。四肢を少しずつ、少しずつゆっくりと刻まれ、磨り潰され、その痛みと感覚の喪失がゆっくり首へと迫ってくる。耐えられないほどの気色の悪さ。
脚を千切られ、内臓を噛み砕かれ、脊椎を焼かれ、心臓を握りつぶされ、肺腑を抉り抜かれ、その感覚は首へと迫っていく。
「どう? 拷問フルコースのお味は」
意志が砕けない限りは破壊されない氷壁。裏返せば、意志を自在に操ることが得手な相手からすると、肉体にダメージはないにせよ、意志や意識にダイレクトにダメージを受けることになる。
だが、鋼の意志を持った董晶は耐えた。彼女は負けられなかった。彼女には帰りたい場所があった。
脂汗を流しながら、耐えなければならない。全隊が撤退するまで、耐えなければならない。
「強情ね……」
そして、次にかいらはあらゆる箇所を針が射貫く痛みを与えた。舌。眼球。顔。脳髄。腹膜。指先。子宮。爪先。あらゆる箇所を針が突き刺し、ぐりぐりと焼け火箸のような痛みが全身隅無く駆けめぐる。それでも耐える。
舌打ちをしたかいらは、にやりと微笑んだ。
「では、これはどう?」
それは、脳裏に浮かんだ風景。笑みを浮かべるマサムネ。
董晶は鳥肌を立てた。何をするつもりだ。そして、マサムネの目前に立つのは、董晶自身だった。感覚がある。刃物を持った感触がある。そして、笑みを浮かべるマサムネめがけ、董晶は刃物を振り下ろした。肉を抉る感覚。ほとばしる血。
マサムネは、それでも抵抗しない。落ち着け、何があった、何でも俺が力になる。いつも、落ち着くその声をあげる。だが、容赦なく董晶は刃物を振り下ろす。マサムネは抵抗すれば出来るにもかかわらず、抵抗しない。彼は、血みどろになりながらも、董晶を落ち着かせようと、その逞しい腕で彼女を抱きしめる。血でぬめるその感覚も董晶は感じる。
それでも、董晶は刃物を振り下ろした。マサムネは、何度刃物を振り下ろしても抵抗しない。本来ならばいくらでも抵抗できる強靭な肉体を持っているにもかかわらず、一切抵抗しない。
そして、あらゆる箇所を切り刻まれ、最後に、愛しているとだけ言って、事切れた。
たまらなかった。董晶は、すでに氷壁を築いていられる精神を保っていられなかった。
「どうかしら。本当に、同じことをこの男にしてあげるわ」
かいらは笑う。悪魔だ。この女は悪魔だ。そして、そのままかいらは氷壁が消えた瞬間、董晶の肺腑をその手で突き刺した。今度は感覚ではない。実際に、だ。
どっと董晶は喀血する。
「あっけないわね。あなた、修行不足よ」
「お前だけは許さない」
だが、董晶は腕を抜こうとするかいらの手を、握りしめた。
「お前は許さない。お前だけは、倒す」
かいらは、焦った顔を見せた。
「あなた、何をやるつもり?」
「人間を舐めたな、お前。オレが教えてやる。これが、人の力だ! 人を愛する者の、力だ!」
途端、董晶を中心に、全ての空間が凍り付いていく。触手のように氷が伸び、肥大し、あたりを覆い尽くしていく。無論、腕を引き抜けないかいらも同じだ。
「……そんな! こんなに、こんなに強大な意志が!」
「かいらを放せ! 私たちも帰らなければならないの! 瀬亥と一緒に!」
カナリヤは砲撃する。だが、完全に凍り付いていく董晶には、まったく効果がない。
「そんな……」
そして、そのままの姿勢でカナリヤも凍り付いていく。
「瀬亥……」
かいらは、抵抗したが、もはや逃げられない。涙を一筋流し、それも凍り付いていく。
そして、その凍りの触手は次第に肥大し、一帯全てを覆い尽くしていく。蜘蛛の巣状に氷の筋が生まれ、それはやがて洪水となって、『エピゴノイ』たちを飲み込み、凍り付かせていく。すべての空間、ありとあらゆる箇所が、凍っていく。もはや、誰もその場で動く者はいなかった。