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異変

 一方、一時的に場を離れるつもりだったウェンディは、事態に頭を抱えていた。

 スパランツァーニ率いる国連の重鎮、そして日本政府も、あまりの状況に沈黙していた。

 会議室に集まった面子は革椅子にただ黙って座り、蒼く燃えさかるウェンディの道場をただ見つめるのみだった。重苦しい雰囲気に絶えられず、ウェンディは中座し、ケインに電話をかける。2コール、3コール。新居条の研究所も事態の究明に追われているだろう。だが、ウェンディはとにかく、情報が欲しかった。

「ウェンディか。道場の件だな?」

 恐らく、道場の周囲に駆けつけた車の中なのだろう、エンジンのアイドリング音と背後から人の声が聞こえる。

「ええ、教えて頂戴。何が起こっているの?」

 ケインは一瞬言葉を詰まらせるが、すぐにまくし立てるように言葉を紡いだ。

「まず、周囲を覆う蒼い焔は、三千度近い高温の焔だ。いわゆる『青い炎(ブルークリフ)』の一種だろう。ただ一つ言えることは、たかだか数cmしかない層だが、これを貫通する手段が現状ない、ということだ。何故なら、これは『エピゴノイ』が身に纏う炎と極めてよく似ている。それが如何に強固かは説明するまでもないだろう」

 ウェンディは苦い顔をした。その炎の防御層を突き破るために、人類は恒星レベルの『タイダルフォース』を打ち込むという手段を捻り出さざるを得なかった。それほどに、強固だったのだ。

「じゃあ、『機殻兵(ドール)』に一発、『タイダルフォース』を打ち込んで貰えばいいじゃないの」

「ダメだ。試算したが、この防御壁を突き破れる規模の『タイダルフォース』を打ち込むと、内部の道場ごと周囲2Km圏内が吹き飛ぶ。そして、それほどの大出力を放てる『機殻兵(ドール)』は、この近辺には配備されていない」

 ウェンディは言葉を失った。

「そ、それじゃあクロヲと莉多は、救出できないってこと?」

 ケインは少し言葉に詰まるが、端的に答えた。

「そうだ」

「そんな……」

 ウェンディは絶望の声を漏らした。

「だが策はきっとあるはずだ、きっと! 諦めるな、ウェンディ!」

「ええ、そうね。じゃあ、わたしもどうにかできること、するわ」

 そして、ウェンディが電話を切ろうとした瞬間、ケインが叫んだ。

「待って! 何……これ?」

「どうしたの?」

「『青い炎(ブルークリフ)』の真ん中、つまり道場の内部で、膨大なエネルギーを観測したの……。何が起きてるの? 内部で!」

 ケインは電話越しで悲鳴にも似た声をあげた。

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