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帰り道

「…あれ?」

「は?」

いや、ちょっと待ってなに言ってるの?


「へ?あ、そっか!ありがとう!昨日から少し僕に対しての態度が悪かったから断られるかと思っていたから驚いてしまったよ。よろしくね!」

はいはい、態度悪くてさーせん。

地味に皮肉言うの腹立つな。

いや、そんなことはどうでもいい!

「いやいや、なに言ってんだお前!そんなことあるわけないだろ!」

「う、うーん…承諾したのは優奈ちゃんなんだけどなぁ。ボイスレコーダー必要だった?」

「言ってない!言うわけない!そして、気軽に優奈ちゃんと呼ぶことを許した覚えはない!」


(完全に言ってたよ〜、ヒヒ、ウヒヒヒ!)

ちっ!こいつかァァァ!

調子に乗るなよ!こら!

てか、俺の乗っ取ることまでできるのかよ!


(いやいや〜せっかく向こうからきたんだから、これはいくしかないっしょ!イチャイチャっしょぉ!いぇーい!)

ぐぬぬぬ。確かにそれはそうだが、何故吉良なんだ!いやだ!

理由?イライラしすぎてイチャイチャなんかできるかー!

あと、これって絶対あれだろ!吉良のことが好きな女子の取り巻きにいじめられたりするやつだろ!

いやだわ〜そういうの絶対嫌だわ!

少女マンガ展開とかはいらねーんだよ!

高校生活くらい平和でいたい!


(ぐちぐちうるさいな〜、"男"らしくないぞぉ?ニヤニヤ)

そういうところで男もってくるんじゃねぇ!

「いいよ、何でもやってやろうじゃないか!」

しまったぁ!口にでた!

「え、あ、優奈ちゃん大丈夫?誰としゃべってるの?昨日にもまして変だけど。まぁ、そういう僕に媚びない、俺っ娘なところも惹かれるんだけどね」

俺も吉良も軽くパニックだな。収集つかねぇ!


(あのさぁ?もうすこぉ〜し可愛くできないの?まったく、うまくいくものもいかないぞぉ?お手本をみせてあげよう)

「その…実は…私も昨日あった時からあなたのことが…。助けてくれてありがとう!ニコっ!」

なんて媚び力だ。あえてあなたのことがどうなのか言わないことで期待を抱かせつつ話題を変え、満面の笑顔!

さすがはサキュバスといったところか!

ってなんで俺が解説しなきゃならないんだよ!くそっ!


あーだめだ。虫唾が走る。絶望だ。


「お前は、誰だ?」

吉良の表情が曇る。

「え?な、なに?私だよ?優奈だよ、大丈夫?」


「お前、俺の優奈じゃないだろう?一体どこのどいつだ。何故その体にいる」

(どうしよう、なにこれ、こいつってこんな奴なの?)

いや、知らねぇよ!なんだよこれ!怖すぎる!危ない奴だ!


「お、おい吉良?どうした?大丈夫か?頭やっちまったとかか?」

っうぉ!、主導権戻ってた


「…ん?どうしたんだい?僕の顔をじっと見て。何かあった?」

え、お、元に戻った!


「何だよいまの〜脅かすなよな!俺はもう帰る!」

「え?って、ちょっとまって!」

俺の手を掴む吉良。


「うわっ、な、何だよ?」

「一緒に帰ろうよ」

微笑みを向けてくる。こいつ本当ににっこにこだな。

こっちがイライラするほどに!


____

「な、なんだよ?」

吉良があのイライラするニコニコ顔を、ずっとこちらに向けてくる。

「いや、出会って2日なのにここまでこられるとはと思ってね」

本当にそれな!

この体になって2日で彼氏作るとか、俺はなんですか?ビッチですか、淫魔ですかぁ?!


(…よんだ?)

てめぇのせいだぁぁぁ!


(まぁ、なんかその…その吉良って男なんか怖かったから、めんどくさいしあとは自分で頑張って。うん。私は寝ておくから)

も、もうやだ…

てか、魔法も使える悪魔がなんでただの人間に怯えてるんだよ!


「ねぇ、優奈ちゃん」

「なんだ?」

「手、繋がない?」

「は?何でだよ!」

こいつ、おかしいんでねぇの?

なんで俺が帰り道に野郎と手をつながなきゃいけないんだ!


「…いや、僕さっき君に告白したよね?」

「出会って2日なのにな」

「で、優奈ちゃんもOKしてくれたよね?」

「まぁ、仕方なくな」

「僕達、付き合ってるんだよね」

「いろいろと都合上な」

「手、繋いでいい?」

「嫌だ。」

「…。」


「なんだよ!そんな顔するなよ!俺が悪いみたいじゃないか!」

(いや、相当悪いと思うけど?)

なんでだよ!

高校生にもなってそんな気持ち悪いことできるか!


(いや〜、それくらいいいじゃないの。というか、いちゃいちゃのチャンスを逃すでない!)

嫌だよ!なんで男と手を繋ぐんだよ、女なら未だしも!


(いいから、繋いでみようか!)

「あー、もう、めんどくさいなぁ…ほらっ」

手を差し出す。

自発的にこういうのやると本当に寒気がするぞ。


「優奈ちゃんって、こういうのに弱いよね。あっさり折れるっていうか」

ニコニコ笑顔で手を握ってくる。


「お前まさか!これも計算のうちか!?」

こっ、こいつ!危険すぎる!


「この吉良大雅、やることなすこと何から何まで計算ずくだよ?」

に、ニコニコするのをやめろぉ!



____

「そういえば、吉良の家ってどこにあるの?」

無言で歩くのもなんなので、(仕方なく)話をふる。


「僕は駅から10分くらいかな。あ、優奈ちゃんとおなじ駅だよ。」

「10分か。なるほど。」

結構近かったんだな。いままでよくばったり会わなかったもんだよ


「優奈ちゃんは?」

「ん?あぁ、俺は20分くらいかな。結構近いんだな」

「そっかそっか」




____

やがて駅に着く。

「なぁ、いつまで手繋ぐの?電車の中で繋ぐとか、無茶苦茶なこといわないよな?」

「なんで?いいじゃない?悪いことあるかな?」

こいつの頭に羞恥心という言葉はないのだろうか?


「いや、そのね、道ゆく人はすれ違うだけだから未だしも、電車はそうもいかないだろ?」

「ふーん。恥ずかしいんだ?」

くそっ!ニコニコするなこいつ!


「はっ、そ、そんなんじゃないし!」

「まぁ、今は帰宅途中のサラリーマンとかでいっぱいになる時間だから、そうもいかないかな電車で手が使えないのは色々と危ないしね」

おっしゃ!ざまぁみろ!



____

「で、どうしてこうなった」


俺は今、電車の扉と吉良に挟まれている。

…近い。


「僕の優奈ちゃんが、痴漢なんかされたら嫌だからね」

「いや、俺を痴漢なんかする奴はいないだろ」

そもそも、痴漢なんか本当にあるのか?見たことないぞ


「あのね…優奈ちゃんはもう少し、自分の顔がいかに可愛いかを自覚した方がいいと思うよ?」

ぬぐぐっ…。


「俺のことを可愛いって言うな!」

「やれやれ…困った子だな、電車ではお静かに。だよ?」

くっそぉぉ!舐められてるぅぅ!

なにが電車ではお静かに、だ!


「おっ、降りる駅だぞ!しっしっ!」

「まぁ、素直じゃないところが好きなんだけどね♪」

こいつはどんな趣味をしてるんだ本当に。


____

「もう、おまえと電車乗りたくない」

「やだな〜、そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」

「…だまれ」

「…やれやれ。あ、優奈ちゃん、寄り道していかない?」

「なんでだよ。俺はもう、一刻もはやく家に帰りたいんだけど!」

これ以上一緒にいてられるか!暴れるぞ!そのうち

「うーん、そっかぁ。女の子なら、甘いもの好きかと思ったんだけど、仕方ないね。帰ろっか」

「…ちなみに、どこへ行くつもりだったんだ?」

おっほん、甘いものと聞こえたきがしたぞ。

「ふふっ、まぁ僕がよく行く小さなカフェなんだけど、最近新作のケーキができてね。一緒にどうかな〜って」

「…そういえば、今日はお母さんに寄り道をして帰って来いと言われたような気がする」

「…なかなかかわった伝言だね、それで?」

「仕方がない。吉良がそこまで行きたいというのなら、カフェでケーキを食べてあげよう」

「ふふふ。決まりだね」

そう言うと吉良は俺の手をとって歩き出した。


いや、俺別に甘いものに釣られたとかじゃねぇし。

人の誘いを断るのもね?うん、仕方なくだよ。

さっそく付き合いだしたわけだし?別になんの不自然もないよね。はっはっは!




____


「んまぁぁい!なにこれ!」

「ふふふ。美味しいでしょ?ここのケーキ、どれも美味しいんだよ?」

俺が食べたのはオススメだという『たっぷりふるうつケーキ』まず、クリームがいい。滑らかでほんのり甘い。しつこすぎず、飽きることなく食べることができる。

そして何よりたくさんのフルーツが入っていて、様々な味、食感が舌を喜ばせる。


なんというか、その、コーヒーに合わせて作られてて、甘さは控えめだがとても美味しく落ち着いて食べれる。

たぶん。

「まぁ、苦くてコーヒーが飲めないっていうのは、流石に分からなかったよ。ごめんね」


そう。俺はコーヒーが飲めない。

たぶん、これはこのカフェのコーヒーを一緒にのんでこそ完成するのだと思う。

しかし、苦いからコーヒーは飲むことができない!

なんという屈辱!


俺にはこの、ホットココアしかないのか!

…このココアもちょっとビターだけど。


「〜ふぅ。本当にここのケーキはコーヒーに合うなぁ。落ち着くね」

うぬぬぬぬ。こいつめ!


「おい、吉良」

「ん?どうかした?」

「そのコーヒーちょっとよこせ」

「…これ、ブラックだけど?」


「…うるさい」

優奈、大人になります。


よし、まずは小手調べだ。とりあえず。とりあえず舐めるだけだ。

唇をカップに近づける。

ふ、震えてなんかないぞ。


「あっ、これって間接キスだね」

「ふぇっ!」

吉良の言葉に驚き、カップを落としそうになる。


「優奈ちゃん!」

咄嗟に吉良が、腕を出して庇う。


パリーンっ!

コーヒーカップが地面に落ちる音がする。


「優奈ちゃん大丈夫?かかってない?」

いや、お、お前のせいだからなっ!

変なこと言うから!

「…って!吉良!お前!」

キラの右腕はコーヒーで濡れている。


「大丈夫か?火傷は?おい!」

「僕は大丈夫。優奈ちゃんも、怪我はないんだね?良かった」

ニコニコ顔をこちらに向ける吉良。


……カッケーっっっ!

うぉぉぉぉ!なんだこいつ!紳士だ!うぉい!


「店員さん、すみませーん…」

じ、事後処理もたんたんと済ませてるぞ!

これがあれか、日々クラスメートに紛れてあれこれ自分から進んで面倒を受け持つうちに身についた行動力か!


____

帰り道


「吉良、本当に腕大丈夫か?結構熱かったぞ?」

「なんのこれしき!男の子はこれくらいなんともないんだよ」

お、おう。うぅぅぅ。ここで男って文字を使ってくるか…


「ごめんな?本当に。そのっ、えーっと服とかクリーニング代と、カップの弁償したの、俺が…あ、一応病院もいっておくか?」

「いーや。僕が変なこといったからあぁなったんだ。もし優奈ちゃんに火傷でもさせたら大変なところだったよ。今回は全面的に僕が悪いから、優奈ちゃんは謝ることなんてないんだよ」

いやー、そんなことねぇよ。俺にも非があるって。

何かしないともどかしいよ!


「やっぱり、クリーニング代だけでもさ!」

「いらない。んー、強いていうなら」

「な、なんだ?何をすればいい?」

俺だって、きちんと筋通してスッキリさせたいぞ!

男だからな!


「優奈ちゃんの、唇が欲しいかな♪」

…こいつ、女たらしか?

さすがに、く、唇は飛躍しすぎだろ。こいつ!

今の話の流れでよく冗談言えたな!

本気で心配してたのに。

「殺すぞ?」

「ふふふ。冗談、冗談。仲良くなったのに、嫌われる真似はしないよ」


仲良く…なったのか?

まぁ、確かに、いままで毛嫌いしてたのがなんでか分からないくらいこいつ、いい奴だよな。


まぁ、いい奴すぎるから裏があるんじゃないかとも思うんだけど、今日、こいつは誰かに流されるわけでもなく、自分からカフェによるのを提案してきた。


俺が見てないだけで、けっこう大変そうだな。こいつも。

従うもの故のスキルは見せてもらったけど。


「おい、吉良、お前ちょっと屈んで目つぶれ」

「ん?なになに?」


ちゅ

俺は吉良の頬に唇をつける。


「なんというか、その、あれだ。付き合いはじめの記念っつーことで!」

「っ!…うれしいな。ありがとう」


つってもまぁ

(よっしゃー!キタキタキター!イチャイチャパワー、きてますきてます!)

これのためみたいなもんだけど

まぁ、お詫びにこれくらいならしてもいいよな?



____

あのあと、吉良は俺の反対を遮って、わざわざ俺の家まで送ってくれた。

まぁなんというか、本当に紳士だな。


「ってなわけで、付き合うことになっちゃったわけだ」

今は家で姉ちゃんとおしゃべり中。というか報告?


「なるほど。つい昨日まで男だった、あんたがねぇ?なんか、できすぎな感じがするんだけど」

それを言われると返す言葉がない。

物事をできすぎた方向に持ってく悪魔にとりつかれているのだから。

「まぁ、何つーか、いい奴だよ。割と」

「まぁ、彼氏にするわけないだろって言ってた昨日のあんたはどこへいったのやら」

「姉ちゃんが、彼氏にすればっていったんじゃないか」

まぁ、あの言葉はとくに関係ないけど。


「まぁいいわ。あんたの心変わりはおいといて、だれかと付き合うことになったんなら…」

「より、女の子らしくなることが大事よね?」


お姉様、目が、目が怖いっす



____

(いいね〜、素晴らしいね!)

なんだよ、俺はもう姉ちゃんのレッスンで死にそうなくらい疲れたんだけど。


(いちゃいちゃとはやはり素晴らしいもので、生きる活力がわいてくるね)

おー、そういや今日のでどれくらいたまったんだ?


(まぁ、魅了(チャーム)一回分くらいかな)

え…それ少なくないかっ?!


(だってねー?そこまでイチャイチャしていたわけでもないし)

俺、ほっぺにチューまでしたんだけど?!


(所詮は頬っていうか?まぁ、サプライズなところは初日にしては良かったんじゃない?)

お、おう、さすがだろ?


(まぁ、淫魔サキュバス目線からすると、何もしてないのとあまりかわらないくらいささいなことなんだけどねー。)

あ、あんまりだぁぁぁぁ!


____


「今日は、楽しかったな〜♪優奈ちゃんから、頬にちゅーもしてもらえたし」

自室でニコニコと今日の出来事を思い出す吉良大雅。


「でも…」

「体育館の時の優奈は誰だ?明らかに違う雰囲気だった。気持ちの悪い、俺の嫌いな感じだ」


「…さて、また美味しいスイーツのあるところ探さないとね」


彼はニコニコと微笑む。

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