お引越し
「どうだい!見てよ優奈ちゃん。これが僕達2人の愛の巣だよ!」
「声が大きい!」
ビシッと吉良にチョップをかます。一緒に暮らすと決まってから、いちいちテンションが高くて困る。
「父さん、なかなかの家だね。お招きいただき感謝するよ。さすがは『財宝管理』と言ったところだね」
サタンが満足気に頷く。
精神体のルキフゲも満足そうである。
確かになかなか大きい家だ。友達を気軽に呼びつけるには気が引けるくらいに。
真鈴さんは
「は、はわわ。こんな家に私達は今から住むんですか?!少しでも傷つけてしまったら一体どうすればいいのでしょうか」
と、ビビりにビビりまくっている。
「そしてこちらが僕たちのお世話役、セバス・チャンだ。家事は自分たちで分担する予定だけど、みんな全くの未経験だから何かと不自由がおこると思うそこでセバス・チャンの出番だよ」
「本日より皆様のお世話役を務めさせていただきます。セバス・チャンと申します。気軽にセバスとお呼びつけください。何かご用命の際は気軽にご命じ下さいませ」
白い口髭をたくわえた壮年の男性が綺麗に礼をする。御丁寧に髭先はクルんとまがっており、いかにもといった感じである。
セバスに連れられて家をまわる。
内装も綺麗だ。
もしかしてこれ…
「どうだい?優奈ちゃん、これが新築の匂いだよ!」
「…一体幾ら使ったんだよお前!」
「先行投資というやつだよ。大丈夫、こういうものは一生モノなんだからしっかりしたものを選ばないとね」
ウザったらしくウインクをする吉良。格好だけはつくのがイヤミったらしいことこの上ない。
「一生って重いわ!俺達まだ高校生だぞ!」
「でも、一生僕といてくれるんでしょ?」
「お前みたいな変態、俺以外じゃなきゃ制御出来ないからな!仕方なくだぞ仕方なく!」
こんな変態、そうそうよに放てるか!
「掃除は既に終えております。中でゆっくりとお過ごしくださいませ」
大きなリビングでお茶を頂く。本当に落ち着かない。
マジでここに住むのか…居づらいったらありゃしないな。あまりにも綺麗すぎる。
____
ピンポーンと家のチャイムがなる。インターホンを見るとニッコニコの姉ちゃんが映っていた。
「優、荷物もってきたぞい!さぁ早く部屋に案内するんだ!」
しっかし大きい家だねーと姉ちゃんが呟く。やりすぎだろコレと俺が返すと、吉良くんのことだからこの位は予想済み!と勢いよく返答してきた。
「セバスさん、俺の部屋はどちらですか?」
「優奈様、私のことはセバスで構いませんよ。では、部屋にご案内致します」
セバスに連れられてとある部屋に入る。大きなベッドと鏡台が特徴的な部屋に通された。
女の子らしい可愛いカーテンまでつけられている。…やれやれ。
というかこの家トイレとかお風呂とかどこにあるんだ?パッと見全然分からん。
これは当分セバスのお世話になることになるぞ。
姉ちゃんと2人で荷物を運び込む。吉良はサタンと真鈴さんのヘルプへ行った。
もう家の構造は理解しているのだろう。さすが下調べの吉良。ぬかりない。
「まさか優が私より先に家を出ることになるなんてね、しかも高校生の身で同棲?まったくもう 考えられないわよ」
「別に俺もやりたくてやってる訳じゃないんだけど…」
「その割には荷造り楽しそうだったじゃない?」
「うるさいっ!」
お姉様にその口答えはなんだー?っと頬を抓られながら荷解きを進める。
ん?これなんだ?
衣料を片付けていると変な紐が出てくる。
スルスル〜っと出すとほぼ紐の真ん中に少量の布が付いてあるモノが出てきた。
………コレって。
「おい姉ちゃんこれはなんだ!」
「いやぁ、これから必要になるかと思って?少し際どい下着を新調してみたのだ!」
使わねーよ!どうやってつけんだよこれ!
「持って帰れ!絶対使わないから!どうせ他にもあるんだろ?全部撤収だ撤収!」
姉ちゃんにヤバそうな荷物を押し付ける。
やっぱり暴走したか。そうだよな、この人が大人しくしてるわけなんかないよな。
その後「花嫁修業よ!」といいはじめた姉ちゃんに家事を叩き込まれたのは言うまでもない。
____
ピンポーンと再びチャイムがなる。インターホンを見るとニッコニコの隆士が映っていた。
「引越し祝い持ってきたぞー!」
家に上げると我が物顔でリビングのソファーでくつろぐ隆士。
「しっかしデッケー家だなぁ。大雅から位置情報聞いてやってきたけど外観に恐れおののいたぞ!」
隆士が持ってきたのはいちご大福だった。引越し祝いとしてはどうかと思うが俺の好みを考慮した上でのことだろう。さすが親友、分かっているな。
「庭も広いもんなー、大雅!今度みんなでバーベキューとかやらないか?」
「それはいい考えだね隆士くん、今度優奈ちゃんの友達や隆士くんの彼女も呼んでみんなでやろうか」
「あはは、それは女の子が沢山いて花があるね。いててっ、真鈴つねるのはやめてくれないかな」
サタンがしょうもないことを言って真鈴さんに抓られる。真鈴さんも案外嫉妬深い人なのかもしれない。
ちなみに隆士はサタンと何度か会っている。まぁ、俺達の息子という説明はしていないが、一応吉良の親戚ということで話は通してある。
まぁ、当然のごとく普通に馴染んだ。
みんなで談笑しつつ、キリのいいとろで隆士は「また来るわ」と帰っていった。
____
その日の晩、真鈴さんの作ったハンバーグを食べた。とても美味しい。
俺は姉ちゃんに「甘いもの以外はやめときなさい!」と念を押されていたので人参のグラッセだけ手伝った。うん。自信作だ。
片付けもあらかた終わり、一風呂でも浴びようかと思っているとつんつんと吉良に呼び止められた。
「お風呂一緒に入ろうよ優奈ちゃん」
即座に右ストレートを振りかざす。が、しかしその手は吉良の左手に遮られた。
「大丈夫、水着を用意してるから」
一緒に入ること前提でなんてものを用意してくれてるんだとは思ったが、こうなると吉良は引かないので、仕方なく水着に着替える。
「変なことしたら殺すからな」
風呂場に入る…デカい。これ、2人入る前提で作っただろ!
「優奈ちゃんは長風呂だからね、ゆっくりと出来る風呂場を用意してもらったよ」
身体を洗っていると、後ろから
「うんうん、実に艶やかでいいね。クラクラしちゃいそうだよ」
と吉良が気持ち悪いことを言い始める。いよいよホントに変態じゃないか?コイツ。
洗い終わって先に湯船に入っていると、吉良にもう少し前に詰めるように言われる。なんだ?と思いつつも言う通りにすると後ろから抱き抱えるように吉良が湯船に入ってきた。
「ちょっ、お前近いぞ!」
「まぁまぁ、これくらいいいじゃない。普段どれだけ僕が我慢してると思ってるの?優奈ちゃん」
肌と肌が触れ合う。段々とその箇所が熱くなってきた。頭がポーっとしてくる。
ふと首筋に何かが触れる。
「ひゃんっ」
ちゅっ、と音が風呂場に鳴り響く。
「何すんだよお前!」
「ふふっ、キスマークつけちゃった。お友達にバレないようにせいぜい気をつけてね優奈ちゃん」
悪魔のような笑みを浮かべる吉良。先に上がるねと風呂場を後にする。
取り残された俺は少しの間ボーっとしていた。
慌てて鏡を覗くと首筋に赤い跡がくっきりとついていた。
風呂場を出て普段着に着替える。
俺達と入れ替わりで風呂に入るサタン夫婦と出くわす。
真鈴さんはどこか気合いが入っているようだった。
サタンは俺の首元に目をやるとニコッとはにかんだ。
この親子、いつか絶対とっちめると心に誓った俺だった。




