幕間 結婚式
7年ぶりの生存報告です。
これから不定期更新します。
突如現れたサタンの結婚式。
新しい春を迎え、高校2年生になった俺達は式場へと向かっていた。
新クラスは吉良はもちろん雪乃や愛、ついでに隆士まで同じクラスになるという奇跡がおき、賑やかな日々を送っている。
『緊張するわね、一体どんな御相手なのかしら。悪い人に捕まってないといいんだけど…サタンに限ってそんなことはないわよね』
リリスはすっかり母の顔である。
『我々のサタンが選んだ花嫁だぞ、心配することは無い。きっと聡明な方でいらっしゃるであろう』
ルキフゲは未だサタンへの忠誠心が抜けないのかどこかかしこまった言い方をしている。
「なんか、2人とも精神体で話すのが普通になってきたよなリリスとかすっかりキャラ変わってるし」
『あら、私の素は元々こんなものよ。今までの方が無理していたって感じだわ』
その割には随分とノリノリだったような気がするけど…
今日は吉良と2人で電車旅である。
といってもサタン(むこう)も配慮してくれたのかせいぜい1時間程度である。
泊まりにならなくてよかった。リリスとルキフゲは会うとやたらとピンクな雰囲気を見せ始めるのでめんどくさいことこの上ない。
お泊まり事件の時はあらぬ疑いを家族に招いたし俺もちゃんと学んだのだ。
電車に乗っている途中で寝てしまったが無事吉良の「フルーツタルト飛んでくよ」で目的地に着く
「優奈ちゃん、道そっちじゃないよ。式場までは僕が案内するから、ほら」
向けられた手を素直に握り返す。
もう慣れた。キスはまだちょっと恥ずかしいけど手を繋ぐくらいはもうお手の物だ。
俺も成長したのだ!
しかし吉良というガイドがいるといつも便利だなと思う。まさか下調べに1度来ているとかじゃないだろうな…
____
「やぁ、父さん母さん。御足労さま。今日はよろしく頼むよ。着替えはあっちに用意してるから、その後にお嫁さんを紹介するよ」
スタッフさんに連れられて着せ替えが始まる。「これは逸材です!」と慣れない服を取っかえ引っ変えされたが、こういうのはもう
姉ちゃんで慣れている。
お眼鏡にかなった所で表面意識をリリスに渡す。
「うん。ピッタリねまぁ少し胸がこころもとないかしら」
『お前どんだけ巨乳だったんだよ!』
まぁ、夜の魔女さんにかなうわけもないか。
って別に俺は胸の大きさで張り合う必要なんてないだろ!
いかんいかん少しムキになってしまった。
吉良は既に着替え終えていた。ピシッとキマっていてカッコいい。流石は吉良といったところだろうか。ってそんなのはどうでもいい!
「綺麗だよリリス。この世の美で君に勝るものは無い」
「ルキもなかなかイカしてるわ。まぁでも私達少し若すぎる気もするわね」
「そこは母さんの出番でしょ。お着替えご苦労さま。2人ともよく似合ってるよ」
待ちかねていたかのようにサタンがやってくる。
彼も着替え終えている。いつもの羽はどこへしまっているのだろうか
「紹介するね、僕のお嫁さん。真鈴ちゃんだよ」
「あっあの…サタンくんにお世話になってます。真鈴と言いますっ。お義父さん、お義母さん今日はよろしくお願いしますっ」
ペコペコと頭を下げる彼女から悪い雰囲気は全くしなかった。少し気が弱そうな感じはするけど、なんだか守ってあげたくなるような人だ。まぁ、俺たちからすると年上なんだけど。
というか、普通に日本人なんだな。外国人の可能性だって充分にあったけど、アレなのか?日本は悪魔的にそんなに居心地がいいのか?
「私はリリス。そしてこちらはルキフゲ。あなたは事情を知っているようだから魅了は必要ないわね。このような体ではあるけれど私たちはれっきとしたサタンの家族よ。これからよろしくお願いしますわね」
「でっ、では私の両親を紹介しますっ。こちらへどうぞ…」
魅了を使って無事にやり取りを済ませ、結婚式へとのぞむ。
サタン側の参加者には悪魔も混ざって居るのだとか。傍から見ても全然分からないけど。
リリスが言うには皆借り物の体だが、見た目は悪魔の時の姿へと変わっていて見知ったものもいるのだという。
俺達のような関係の者が他にもいるということだろうか。
まぁ、あんまりよく分からないし正直どうでもいい。
リリスとルキフゲは真面目にもお酌を断りつつ式は『両親へのメッセージ』へと進んだ。
「父さん母さん、いままで僕を育ててくれて、見守ってくれてありがとう。僕も2人のように運命の相手を見つけたよ、それでも僕達は家族だ。まだまだ僕にも至らない点はあると思う。まだまだこれから先もどうか導いて欲しい、2人のような夫婦になれるように」
ニコッとはにかんでこちらへ目線を向けるサタン。俺の目にはじんわりと涙が浮かんでいた。ちなみにルキフゲは号泣である。カッコいい顔が勿体ない
「パパ、ママ。こうして私が素敵な人に出会えたのも今まで2人が私を愛して育ててくれたからだよ。最初はものすごく変わった人だと思ったけど、サタンさんはちゃんと私を幸せにしてくれる人だって確信してるから安心してね。これからも私達のことどうかよろしくお願いします」
2人のスピーチに会場から拍手が巻き起こる。
2人とも親思いであり、きっとこの2人の家庭は暖かなものになるだろうとみんな感じていたことだろう。
悪魔の余興は凄かった。おそらく仕込みなしで火を吹いたり氷で2人の彫像を作ったりしていた、魔力を使っているのであろう。
まぁ、それを全てなぁなぁに誤魔化すリリスの魅了が1番凄いのだとは思うけど。
ルキフゲはプレゼントとばかりに『魔のおしゃぶり』を渡していた。少し気が早いんじゃないか?
子供か…いつか俺達の間にも…って何考えてるんだ俺は!
____
「優奈ちゃんはどんな結婚式がいい?僕としてはやっぱりせいだいに執り行いたいんだけど、あ、写真もちゃんと撮りたいね」
時期からの帰り道ふとそんなことを吉良が呟く。
どんだけ先のこと考えてるんだよ吉良は…。コイツのせいだいは言葉のままだろうから絶対恥ずかしいことになるだろ!
「普通でいいんだよ普通で、というか気が早いわ!そもそも結婚すること確定なのかよ」
「確定だね」
少し思い浮かべてみる。仕事に向かう吉良へいってらっしゃいと笑顔で送りし…家事をしっかりこなし帰りを待つ俺。
うん、俺には無理だな!
そもそもそんなことになったら姉ちゃんがまた「花嫁修業よ!優!」とか言いかねない。
絶対嫌だ、ろくな事にならないのは目に見えている。
そんな現実逃避をしていると吉良がとんでもない爆弾発言をした。
「なんだったら一緒に住んでみようか、家と生活費は僕が持つから。サタンも呼んで二世帯住宅にしようよ」
「は!?お前何言ってんの?どんだけ金が必要になると思ってんだよ。そもそもお前なんかと常に一緒にいたら俺がもたないっての!そもそも親が許さないっての!」
「ルキフゲの能力ってなんだったっけ?」
「え?『財宝管理』だろ?」
「リリスの能力は?」
「それは『魅了』」
「だったら土台は整っているでしょ?なんの問題もないよ」
『財宝管理』で金銭を調達し、『魅了』で親を説得するってことか?
まぁ、できると言えば出来てしまうのか…
「大丈夫、僕からは手を出さないからそこは安心して?お目付け役…みたいなお手伝いさんも雇うし何一つ不自由させないよ。じゃあ帰りがてら早速優奈ちゃんの家族に許可を取りに行こう」
「えっ、おいちょっと待て!俺の意思はどうなるんだ!」
「大丈夫、優奈ちゃんのことだからすぐに慣れるって」
こうして俺の波乱の新生活が幕を開けることになるのである。