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悪魔の過去2

過去編その2です

戦争が本格化する。

六大上級悪魔が直々に指揮をとり、ルシファー様が教官の教育へ励む。

祓魔師(エクソシスト)への対策が次々と練られていく中で悪魔、人間それぞれが数を減らしていった。

祓魔師といえども人間である。祓魔術さえ切り抜けられれば低級あくまでもってしてでも殲滅は可能だ。


戦力は拮抗した、それに悪魔達は驚きを隠せなかった。

まさか人間に圧勝出来なくなるとは、と。

自分たちが圧倒的優位にあること、それが今まで悪魔たちを繋いでいた鎖だったのである。

やがて悪魔たちの焦りは形を持つようになっていった。

人間との共存を保つために禁止されていた禁断の契約、生きた人間の死霊化など、悪魔の法を犯すものがたちどころに増えていったのである。

それらに対する人間の対応は祓魔師教育の増加。まるで悪魔のような連鎖は止まることを知らなかった。


時は流れ、かつての六大上級悪魔(どうりょう)もその数を減らした。

すくすくと成長を遂げるサタン様のみが最後の希望なのである。

そんな中でリリスにある任務が課される。


「今現在人間たちによる首脳会談が行われている。リリス、お前にはこの各国の首脳陣をかき乱してほしおのだ。お前ならできるだろう?」

「お任せください、『夜の魔女』の名の通りすべてを虜にしてまいりますわ」

「ルシファー様!私は反対です!確かにリリス様ほどであれば心配をする方が失礼にあたりますが、リリス様は我が国の王妃です、万が一があってはなりません!」

「ルキフゲ、しかしこれはチャンスなのだ」

「これを期に人間たちも何かを仕掛けてくるやもしれません!やるとしても、別のものを用意するべきです!」

「いや、使える駒はリリスより他ない。お前も知っているだろう?これが一番確実なのだ」

「しかし!」

「ルキ、私なら大丈夫です。それよりも、そんなにルシファー様に歯向かうといくら宰相のルキでも、不敬罪になってしまうわよ?」

クスクスと彼女は笑う。

「笑い事ではないので「ルキフゲ!」

ルシファー様が威を放つ。

「これは我が決めたことだ。変更はない」

「それでは早速、準備をしてまいります」

私が立ちすくむ横を、リリスは通って行った。

「お前が国を思って言っているのは分かるが、熱くなりすぎだ、少し頭を冷やせ」

無言で一礼し退く。ここまでルシファー様に歯向かったのは初めてかもしれない。

愚かなことをしていると思っている自分もいるのだが、それでも胸騒ぎがする。心配でしかたがないのだ。


やがて、俺の嫌な勘が当たる。リリスが帰還予定時間に帰ってこないのだ。

城内が王妃の安否行方について騒がしくなる中、俺は一人部屋の中で違反を犯そうとしていた。

ルシファー様の許可なしに『財宝管理』を使う。

「私の宝…リリス」

目の前に自らの想い人が横たわる。標的(ターゲット)の趣味なのだろうか、肌の色が褐色になり、顔の造形も少々違っているがいつもと同じ、少し扇情的な服を着ているのは紛れもなくリリスだった。

ただ、信じられないのはその胸に銀色の杭が刺さっているということ。


「リリス様…リリスっ!」

「んっ…ルキ?ふふふ、能力をつかったの?ダメじゃない仕事以外で使うのは」

「やはり、罠だったのか?!何があったんだ!」

「人間のお偉いさんのお部屋にお持ち帰りされたら、中で怖いお兄さん達がたくさん待ち伏せていたの。あ、これは聖銀よ。私はもうダメみたいね」

「抜くぞ」

「無駄よ、あなたの手が怪我するだけ。まったく、あの人たちも浅く刺しこんでいくんだもの。すぐにしねないじゃない」

「うるさい、この後に及んで軽口を叩くな。一児の母なら根性を見せろ」

手がジリジリと焼かれるのを感じながら、杭を引き抜く。

「ルキ、今日はえらく荒々しいのね。いつものあなたもカッコイイけどそういうのも魅力的よ」

「…治療するぞ」

「だから無駄だってば、ほら…いたたっ」

リリスが自分の胸元の布を剥ぎ取る。

「お、おい!王妃ともあろうものが」

と、言いつつもチラと覗いたその豊満な双丘は既に灰色に染まり崩れ落ちる最中であった。

「治療より、いいことしましょ?」

不意に唇に何かが触れる。それがリリスの唇だとわかる頃には、二人の唇は既に離れていた。


「私は鈍くないから、ルキの気持ちなんてちゃんとお見通しよ?私も…今だから言うけどあなたを愛していたわ。サタンをよろしくね」

満足そうに目を閉じながら、枯れゆく声でそう告げた後まるでリリスをこの世に繋いでいた最後の糸が切れたかのように灰となり崩れ落ちた。

「あ…あう、う、あぁ…あぁぁぁぁぁぁああああああああ!」

溢れ出す涙が灰に降り注ぐ。

私…俺は部屋を飛び出した。


部屋を出て向かった先はサタン様の寝室。

焦ることなく乳母や侍女に「ルシファー様のもとへお連れする」と告げて、サタン様を自分の手に抱く。

我が主、ルシファー様はあろうことか自分の妻であるリリスを駒として使ったのだ、俺の忠告を聞くこともなく。

リリスの仇を打つ。祓魔師(エクソシスト)どもを片付けるのは容易だ。だが、俺の心の中には打たなければならない相手はもう一人。

いくらあがこうが、力ではルシファー様には敵わない。ならばそれ以上の力を用意するまで。

『財宝管理』の能力…この世の富と財宝を自分の元へと呼び寄せる、または転送する能力。

しかし、誰にも知らせていない、ルシファー様をも知らない能力がある。

『財宝管理』の名のごとく異次元にある自分だけの世界(そうこ)を司る能力。

サタン様を抱いたまま、自室に戻りその能力を使う。

「リリス…俺がサタン様を育てる。それまで、あの世へはいけない」


_____

「バカ…な、我が、我が敗北などとぉぉぉぉ!」

王の間に木霊するルシファーの叫び、その眼前に立つのは成長したサタンであった。

「父上、悪魔と人間が共存する時代は終わったんだ。いや、この20年共存どころか戦争しかしていない。それも膜引きだよ」

「貴様ァァァ、我が子の分際で人間共に寝返りおったかぁァァァ!」

「違うよ、そんなことはしてないさ。ただ、これからは僕が悪魔を統べる。悪魔はもともと人の世の影の中で暮らすものだ」

「誇り高き…悪魔の存在を、消すというのか!」

「光があれば陰ができる。今、光は人間にあるんだ。僕たちは、陰になるだけさ」


ルシファーの目の前の空間がぐにゃりとゆがむ。

「ぐっ…ルキフゲ」

「ルシファー様、あなたはリリスの仇だ。しかし、あなたの下で働けたことを後悔はしていません。…さようなら」

20年間、錆びることのなかった聖銀の杭でとどめを刺す。

終わったのだ。戦争も、復讐も。そして…


「それではサタン様、私を殺してください」

「ルキフゲ…」

「約束しましたよね、お願いします」

「ルキフゲ、僕の父はあなたです。母さんによろしくね、父さん」

「ありがとう」

サタンの手から、柔らかな光が放出される。優しく包むような光に誘われ、俺は灰になった


_____

以後、悪魔が人の世に現れることはなくなった。

しかし、あるいは物語、あるいは伝説となり永遠に語り継がれていくこととなる。

いつの時代も、人間の陰には悪魔がいるとかいないとか。

悪魔の王サタンは、自らの両親(・・)の幸せを祈りつつ、今日も光差すことのなき闇の中で静かに暮らしている。

ハッピーエンド?というわけで時は現代へと戻ります。

ファンタジーな恋愛物語、続きに乞うご期待!


感想お待ちしております!

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