悪魔の過去1
過去編です。
「お、俺っ?!」
「優奈ちゃんが二人?いや…」
俺たち二人が、突然の私の登場に驚いている頃、ルキフゲは違う方向に驚きを見せていた。
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俺が生まれた時、すぐに自分の体に人格が二つあることを感じた。
そして、赤子である自分に思考力があることに驚き、また記憶があることに驚く。
俺の名前、前世の名前はルキフゲ・ロフォカレ。
ルシファー様に仕える六大上級悪魔の一人であり、この世のあらゆる富と財宝の管理を任されていた。
過去の話をしよう。とある時代、まだ『悪魔』の存在が人間たちに広く信じられている頃。
「ルシファー様、本日の財宝管理完了いたしました」
「あぁ、ごくろうルキフゲ。あぁ、そうだちょうどいいこの子を案内してやってくれ」
「はい、お任せください」
「『夜の魔女』で有名なリリスだ。一度私の城に来たいと言っていたのでな。今回招待したのだ。よろしく頼む」
長身であるルシファー様の影から、可憐な少女がひょこっと見えた。
「リリスともうします。今日はよろしくお願いしますね」
「私はルキフゲ・ロフォカレと申します。城の案内をさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
ルシファー様は一国の王である。我々悪魔も普段は人間にまぎれて過ごしているのである。
ルシファー様の治める国は、悪魔に対する措置がよく、より多くの悪魔が集まり自他共に認める悪魔国家だ。
美しさと実用性を兼ね備えた城は、そこまで迷うものではないのだが一部、危ないところもあるのだ。
「広いのですね」
「はい、ですがただっ広いのではなく実用性を加味して城の大きさはここまでに抑えてあるんですよ。ルシファー様が本気を出せばそれはもう悪魔も震え上がる大きさのものができるでしょう」
「まぁ、面白いことを言いますのね。私も一度震え上がって見たいものです」
リリス殿の対応はしやすい。堅苦しすぎず、自分も会話を楽しみながら案内ができている。
リリス殿は『夜の魔女』と呼ばれている。悪霊の生成や幻術に長けており、その才能は天才と呼ぶにふさわしいともっぱらの噂だ。
しかし、リリス殿の真骨頂はそこではない。
真に発揮するその能力は、異性は愚か同棲をも虜にするその魅力である。
あるいは私も、この時からリリス殿に好意を抱いていたのかもしれない。
やがて、リリス殿は悪魔城に住むようになった。
ルシファー様に『悪魔軍幻術教官』として招かれたのである。
私の仕事である財宝管理は主に城ですることが多く、同じく悪魔軍教育に携わるリリス殿も城にいることが多かった。
話す機会も多く、互いに悩み事を打ち明けられるような仲へと進展した。
この時には私のリリスへの心も、好意から恋へと変わっていた。長くある悪魔の生、この人を伴侶としたいと。
しかし、そんな時に城が慌ただしくなりはじめた。
悪魔を恐れながらも共存していた人間たちが、私たち悪魔に宣戦布告をしてきたのである。
それだけならば良い。過去にも何度かあった話だ。悪魔軍が戦力的には圧勝だ。最終的に平和条約を結ぶことになるだろう。
だが、ルシファー様は、部下一同がなぜこんな時に限ってと思うようなことをおっしゃったのである。
「みんなに集まってもらったのは報告があるからだ。我は『悪魔軍幻術教官』リリスと婚姻の儀を結ぶこととなった。此度の戦争、そろそろわれも疲れてきた。後継者を作ろうと思っていたのだ」
その後、リリスの挨拶が始まる。
私の初めての恋心は無惨にも散った。だが、良い。
相手は自らの主、ルシファー様なのである。私と過ごすよりもリリスが幸せになるのは目に見えている。
早急に準備のなされた婚姻の儀。
悪魔の婚姻とは、それすなわち出産と言っても過言ではない。悪魔に妊娠などと言った過程はないのである。
悪魔の子孫を残すには、婚姻の儀を結ぶしかない。
儀式に沿って事を進め、最後に婚姻の魔法陣の上で手を取り合い口づけをすれば、その取り合った手の中に子供が生まれるのである。
「それでは、手を取り合い口づけを」
悪魔神官が最後の台詞を述べる。
美しい容姿をした二人の口づけは、見ているものを魅了するまさに芸術であった。
二人の手の中には、闇と光が渦巻きやがて一人の赤子となる。
「我の光とリリスの闇が混ざった子か…まさに悪魔の王だな。名は…サタンと名付ける」
ルシファー様の声とともに歓声が巻き起こる。儀式は終了。宴の始まりである。
「ルシファー様、ご結婚おめでとうございます。そしてサタン様の誕生を心より祝福いたします」
「あぁ、ありがとうルキフゲ。おまえにはサタンんの教育を頼むかもしれんな。信頼している、よろしく頼むぞ」
「はっ、お任せください」
「リリス様、ご結婚おめでとうございます。友人として心から嬉しく思います。サタン様も大変元気で可愛いらしく将来は目に見えるように安泰なことでしょう」
「ルキ、リリス様なんてよそよそしい呼び方はやめてよ。いつものとおりリリスでも構わないのよ?」
「いえ、我が主ルシファー様の伴侶となられたお方。そのようなことはできません。ですが、わがままを聞いてもらえるのならこれからも良き友人として頂きたく思います」
「もう…ルシファー様、よろしいですか?」
「もちろんだ。お前達の仲の良さは知っている、それをわざわざ切り離すことも無いだろう。ルキフゲ、これからも妻の良き友人として話を聞いてやってくれ」
「はっ、ルシファー様の寛大な御心に感謝いたします。ルシファー様、もう一つよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「私からサタン様へ贈り物があるのですが」
「あら、さすがルキね!どんなものかしら?」
「『魔のおしゃぶり』というものです。これを装着すれば、赤子のうちから魔力を取り込めるようになり、魔力操作の向上にもつながります」
「うむ、効果は確かなようだ。しかし、このような宝があっただろうか…」
「いえ、ルシファー様のものである財宝に手を出すことがありましょうか!それは…恥ずかしながら私が作り出したものなのです」
「ほう、おまえがか?」
「はい、なにせ婚姻の儀や宴ではセンスのない私に出る幕はありません。せめて贈り物をと思い、あらゆる富と財宝を研究し『魔のおしゃぶり』を作り出しました。私としましても、『魔のおしゃぶり』は今までで作った私の魔道具のなかでも最高傑作です」
「うむ、確かにこれはすごい魔道具だ。さすがルキフゲだな、ありがとう」
「勿体なきお言葉、ありごとうございますルシファー様、リリス様、サタン様のお役に立てるようこれからも精進いたします」
国王であるルシファー様のご結婚に国中がわく。戦争への勢いもますばかりだった。
人間よりも体が強く、また魔法の使える悪魔と、数が多いだけの人間。勝利は明確に悪魔軍にある。
そして、最近はリリスを代表とする各魔法のプロフェッショナル達が軍の指導をしていたのだ。もしかすると、こちら側の死者は出ないのではないかといった考察をする者までいた。
しかし、状態は一変する。
「ルシファー様、ご報告があります!」
「どうした?サタナキア」
サタナキアは悪魔軍の大将である。場の空気に緊張がはしる。
「私の部下、アモンの軍が壊滅したとの情報がありました」
「なに!あのアモン軍が負けるだと?!」
その時、王の間になだれ込む物がいた。
「アモン?!」
「ルシファー、さまぁ…ご無礼をお許しください…罰は後ほ、ど、それよりもご報告が、うぐっ…」
「アモンがこれほどにやられるとは!一体何があった!話すのだ!おい、治療を!」
「かはっ、げほっげほっ。人間のなかに祓魔師と呼ばれる、者、達がおります。悪魔を滅することを生業とし…光の術を使います。私の軍はそれにより一網打尽に…わたし、も数十人の祓魔師を殺しましたが…ぐっ…奴らの中には、相当な、実力者がいます。ぐぁぁぁ」
力を使い果たしたアモンが灰となる。
場は沈黙に包まれた。
「これより、光の術に対する術を教える!戦闘職の将軍数名に収集をかけよ!また、祓魔師にでくわした際は戦略的撤退を取るように指示せよ!」
「はっ!」
希望は『堕天使』ルシファー様と『光と闇の子』サタン様にあった。
この物語、たしかジャンルは…恋愛ですよね?
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