それぞれの悪魔
短めですが本日2話目。
今回はイチャイチャしませんね、残念ですが。
「そこの悪魔に用があるのですよ、いやぁ情報を聞いてきてみればこれは実に運が良くてねぇ…いい獲物が見つかりましたよ。
俺は心臓が止まるかと思った。
まさかこの男には俺の中に眠る悪魔が感知できるのかと。
一方は女体化がどうにかなるのではという期待。
一方では魅了の魔法を使ったことのある俺に敵意があるのかどうかという不安。
その格好、その笑顔。俺の目にはそれこそ悪魔のように恐ろしくうつる。
だって、もし女体化がとけてしまったら吉良との関係が崩れてしまうから。
そこまで考えると、俺は何も言えなくなった。
こんな時に限って当の悪魔はうんともすんともいわない。
こんな相手に魅了がかけられるとも思えない。
戯言を言っているのか、からかわれているのかとも考えてみたが明らかにこの顔は理性を持って言っている顔だ。
「おやおや、ダンマリですか。会話がある方が円滑に進むのですがね」
「…。」
いま、吉良はどういう心境なんだろう。なんせコイツは事情を知らないんだ。巻き込んでしまって心が痛い。
とりあえず会話して様子を見なければ。
「あ、あの…「人間如きが偉そうにするんじゃない」
その場の空気が凍りつくような声。その声の発生源は俺の隣。
そう、吉良だった。
「姿を現しましたね。そう、それで良いのです!」
嬉しそうに笑う謎の男。
「おい、吉良?どうした?」
「…。」
「さぁ、それではメインイベントのハジマリです、そこの悪魔よ名乗ってもらいましょうか」
「…フン、俺は吉良大雅だ。」
いや、違う。吉良は自分の事を俺とは言わない…ん?
「違う!ソレは依り代の名前でしょう。そんなものに興味はない。アナタの名前が知りたいのです!」
「こっちはデートの帰り道を邪魔されて腹が立っているんだ。いや、デート中も付け回していただろう。クソッタレが」
明らかに口調がおかしい。でもこれは…何度か見たことがある吉良だ。
「それほどアナタに興味があるんですよ。チラっと垣間見えたあの魔力!フフフ、フハハハハハハハ!」
「うるせぇ、立ち去れ人間」
「いいんですか?あなたの大事な人間に危害が加わっても」
お、俺?!
「あぁ?」
「ワタクシの使い魔が既に…昨日の夜から彼女さんの影に忍び込んでいるんです。念には念をいれていてよかった。やはりこの女使えるようですね」
「殺されたいのか?人間」
「おいっ、吉良!殺すとか簡単に行ったらダメなんだぞ!しかも知らない人に!」
「名乗っていただけたらそれで良いのです」
一体このふたりはなんの会話をしているんだ?悪魔?使い魔?
俺の中の悪魔のはなしじゃないのか?
いつから俺たちの世界はこんなにファンタジーになってしまったんだ?
「チッ…ルキフゲ。ルキフゲ・ロフォカレだ」
ルキフゲ?その悪魔が吉良にとりついているのか?
「これは大当たりだ!宝くじなんてめじゃないようなねぇ!フフフ、フハハハハハハハ!もはや、この世界はワタクシの…。」
「もう捨てた名だ…使い魔を消せ、人間」
「いいでしょう、フフフ。しかしかの大悪魔ルキフゲとはねぇ…富と財宝の管理者。フフフ」
「さぁ、はやく俺の前から消えろ。イライラしてるんだよこっちは」
「フフフ、何を言っているんです?契約ですよ契約!悪魔の契約をしましょう!世界中の富と財宝をワタクシのもとに!」
「断る」
「何故!いいではありませんか!代償ですか?いくらでも支払いましょう!すべてが手に入るのだから!」
「財宝管理は引退したんだ。もうルシファー様との関わりもない」
なにルシファーって?!それあれだろ?堕天使だろ?一体どの次元の話をしてるんだよ?
財宝の管理?意味がわからないぞ!
もしかして、吉良は…悪魔だったのか?いや、それとも俺と同じ境遇なのか?そのことを吉良は自覚しているのか?…もう!謎が多過ぎる!
「いや、あなたの力は消えてはいないでしょう?さぁワタクシと共にこの世界を統べりましょう!そんな女はほうっておいて」
「…そんな女だと?」
吉良の顔に青筋が入ったような気がした。
「えぇ、アナタほどの悪魔ですから。そんな女に固執しなくても、もっといい女がこれからはいくらでも侍らせることができるのですよ。ワタクシと一緒にね」
おい、なんてこというんだ!俺が捨てられたらどうするんだ!って違う!なんだよ捨てられるって!俺は女子か!
「人間はどいつもこいつも…いいか?ひとつ教えてやろう。この世で一番尊い財産は愛だ。愛は万の事全てに繋がりを持つ。そして…」
「俺はこの女を愛している。…お前は悪魔の怒りの琴線に触れた、覚悟はいいか?」
「ヒハハハハハハっ!悪魔が愛を語るなどと!面白い。かの有名な大悪魔も落ちぶれたものだ。契約?いや、ワタクシが使役して差しあげよう!」
男は黒色のコートの下から剣のようなものを抜いた。
いや、先が尖っている。…レイピアというのだっけか?
っておいおいおい!
「大雅!こいつ危ない人だって!関わらずに逃げたほうがいい!」
「…安全をとってお前は逃げろ、優奈」
「あれ見ろよ!刃物持ってんだろうが!大雅も一緒に「大丈夫だ、心配するな」
「だから、お前のその態度はなんなんだよ?!大悪魔?なんの話だっ!…でも、それよりもまずは逃げなきゃだろ!刺されたりしてみろ、どうするんだよ」
「俺は優奈が無事ならそれでいい、問題ねぇ。説明は後でする」
「いやはや、これが悪魔と人間の『愛』ですかぁ?涙ぐましいですねぇシクシク…なんて言ってるうちに準備は整いました。ワタクシの編み出した悪魔使役『刺突』。大悪魔とて逃しはしませんよ。あ、残念ながらその体は捨てることになりそうですねぇ、ワタクシの『刺突』は威力がありますからこの辺り一帯、もちろんそこの彼女さんも消し飛ぶでしょう。フフフ」
「…おまえ、俺が誰なのかわかっている上でよくそこまで余裕でいられるな。だが、人間の癖に悪魔のような性格してやがる。いや、古来から欲にまみれば人も悪魔も変わらん、か」
「イキますよぉぉ!悪魔使役、『刺突』」
狂ったような声をあげながら、男がレイピアを構えこちらに突っ込んでくる。
異常だ。怖すぎる。
「一応離れてろ」
足がすくんでいる俺を押しのけ、真っ向から立ち向かおうとする吉良。
吉良と男の姿が重なる。
「大雅っ!」
「フフフ、これでこれで全てはワタクシのもの…え?」
悦に入る男の顔はそれは醜い悪魔のような顔だった。
「早とちりをするな、クソッタレめが」
吉良が男を蹴り飛ばし距離を稼ぐ。
「残念だったな。俺に対して物質による攻撃は意味がない。」
「何故です!ワタクシはしっかりと突いたはずだ!」
「この剣、そして技は…おまえの財だ。もともとこの世の富と財宝は全て俺の管轄だ。そもそも、人間如きが大悪魔を使役?どこの世界の物語だ?」
「なら、ワタクシは…ワタクシの…富は!財宝は!ワタクシの富はどうなるのです!世界はワタクシの…あぁ、あァァァァァァァァッッ」
「悪魔の裁きを与えよう、お前の富を制限する。なに命は奪わねぇ。俺に不快な思いをさせたんだその代償をいただくだけだ」
どんな会話をしているのか分からない。
吉良はどうやら無事のようだが…あれは?男の様子がおかしい。
「目が見えないっ!…はっ?!聞こえない、聞こえないぞ!なにも、何もわからない!ワタクシは誰だ?怖い、どこだここは?一体なんなんだ!」
「視覚聴覚、一部の記憶と引き換えに生き地獄をプレゼントだ。これが悪魔との契約」
吉良は最後にチラっと男を見ると、こちらに体を向け側まで近づき
「帰るぞ」
と、俺に告げた。
えぇ、なかなかの展開ですが暴走ではありません。
色々と吉良くんには設定がありますので…
色々な謎はこれからの展開をご期待ください。
と言いましてもこの十三話目、作者としましても色々と考えさせられるところがあります。
ぜひ率直な感想をお聞かせ下されば、今後の書き方の参考にしたいと思っております。
協力お願いいたします。




