女の子になりました
この物語を書くにあたり、アンダーバー4つ(_____)を多用しておりますが、これは場所の切り替わりもしくは時間の経過を表します。
読みにくいとは思いますがご勘弁下さい。
____授業が終わり、帰宅部の生徒の波が静まった放課後
この物語の主人公は
「好きです!付き合ってください!」
女の子から告白されていた。
____
俺の名前は木下 優。
16歳の高校一年。
はっきりいうと、俺は結構イケメンだ。
顔立ちはなんというか…まぁ、可愛い系だ。いわゆる童顔ってヤツ。
残念ながら俺自身は自分の顔があんまり好きじゃない。
俺は今の女の子の告白に
「なんで?」
と返した。
顔は可愛くても、性格まで可愛いわけじゃない。
そもそも付き合うだのなんだの、高校生だからってうかれやがって。
よそでやってくれよな。まったく。
「俺は別に君のこと好きなわけでもないし、そこまで仲良くもないよね?まぁ、告白されたのは嬉しかったよ。それじゃ。」
いつものセリフを吐いて立ち去る。
顔がちょっといいからって、ろくに話したこともない奴に告白なんかするなっての。
男のくせして可愛い顔のせいでナメられる。
小さな頃からそうだった。
いつだって周りからは女の子扱い。
俺はそれに対して『抗った』
だから____吉良 大雅…あいつみたいなのは本当に気に入らない。
どんなやつかって?まぁ、テキトーに説明するよ。
見た目はいいわ、頭もいいわ、運動できるわ。
まるで少女漫画にでも出てきそうな男。
おまけに性格もよろしくて周りから慕われている。
お家柄もいいんだとか。
そして、なんとなく主導権を握られる感じがものすごく嫌だ。
俺は別に、こいつに嫉妬してるわけじゃない。俺の生活だって充実している。
じゃあ何が嫌か?それは周りへの対応。
前にも言ったが性格もよく、友達も多い。
嫌なヤツではないのだ。
何に対しても肯定、同調する。
でも結局自分は中立の立場。
爽やかに見えるんだが、自分の本心などを全く出さない。
それがとても気持ち悪い。
あいつには力があるじゃないか。
顔もキリッとした爽やか系。
あんな生き方せずとも、人の中心に立って、皆から畏れられつつも憧れられる。
そんな人間になれるはずだ。
…さっきの言葉は撤回しよう。
俺は、吉良に嫉妬しているのかもしれない。
決して自己主張しないあいつに。
カッコイイくせに『従う』ことしかしないあいつに。
だから、一発シメようとか、そんなんじゃない。
俺は別に不良でもないしな。
ただ、あいつとは一度生き方について話をしてみたい。
なんて、カッコつけすぎかこれは。
いやまぁ、クラスは一緒なんだけど…
なんというか、話しかけ辛い。
まぁ、仲良くなりたいわけでもないからいいんだけどな。
____
「優ちゃん、また告られたのか〜?」
見慣れた顔が俺の前に現れる。
「おー、隆士いたのか。まぁ、いつものように告られただけだよ。」
こいつの名前は森山 隆士。
家が向かいにあり、物心ついた頃からつるんでいる。
…親友だな。
よく運動ができるんだけどそこまで頭がよくない。
性格は…ノリがものっすごくいい。
無駄なくらいにノリがいい。
「で?また断ったんだろ?いいご身分だな?」
茶化すように俺に言葉を投げかけてくる。
「うるせぇ!俺なんかと付き合うとろくなことねぇから、忠告してやってるだけだよ!」
実際にそうだ。俺は誰かと付き合ったことはない。恋とかそういうのは全くわからないんだよな。
まったく、わかってるくせにわざわざ言ってくるんだから。めんどくさい
「なんでそんなにツンツンしちゃうかな〜?素直になって、彼女つくれよww」
ちなみに隆士には彼女さんがいる。
同じ中学だが、高校は随分と離れてしまった。
まぁ、隆士の頭が悪くて、彼女さんの頭が良かったからなんだけど。
俺も知ってる人だが、なかなかいい人だ。
リア充爆発しろなんて言わないでやってくれ。
まぁ、彼女が同じ学校いないから、隆士は俺と帰ってるのかもしれないな。
爽やかな付き合い方をしている隆士と彼女さんを、俺も応援はしている。
____
帰り道、俺達、帰宅部2人組は少し駅をぶらついて帰った。
2人対戦の格ゲーをしたんだが、三連敗した。
くそっ、リズムゲームなら負ける気しないのに…
なんとなく、あの手のゲームは苦手だ。
大体、ゲームで殴り合って何が楽しいんだ。男ならもっと、こう…
…今度練習しておこうかな。
こいつに負けるのは癪だ!
今日は隆士がバイトのシフトが入ってるってことで早めに切り上げて、俺は、帰ることにした。
バイトあるのになんで俺を待ってたのかは謎だが、そんなにゲームで俺を負かすのが楽しいのか!
ちなみに俺は今はバイトはやってない。
そのうちやるかもな。
やっぱり運送とかがいいかな、体も鍛えられるしな。
最寄りの駅から家までは歩いて20分くらい。
さっさと帰ってテレビでもみるか。
そう考え、足を一歩踏み出したそのとき、目の前に黒いモヤモヤが浮かんでいた。
…え、なにコレ?
得体のしれない物体。生き物なのか、なんなのかもわからない。
触ってもいいのか、有害なのかそれすらも分からない。
まさに黒いモヤモヤ。
すごく…妖しい
だが、不審に思いつつも好奇心には抗えない。
いやいや、あやしすぎる!嫌な予感しかしない!
しかし、魔法にかけられたかのようにその黒いモヤモヤに手を伸ばしてしまった。
____指先がソレに触れた時、そこから"悪魔"が入ってきた。
黒い、気持ち悪いようないいようななんとも言えない感覚を覚える。
はっきりわかるのは、モヤモヤが自分の中に流れ込んできているということ。
この時、俺の頭の中には赤い目をした、褐色の肌のかなりエッチな格好をした女の子が思い浮かんだ…いや、言い方が違うかな、…現れた。
俺ってそんなに溜まってんの?
いや、別に褐色とか俺の好みじゃ…
そんなとき、頭の中に直接伝わるように、声が聞こえた。
(やぁやぁ、私はサキュバス!よろしくね!依代クン!)
ヤバイな。俺も相当キてしまってるようだ。
幻聴が聞こえるなんて。
やっぱり触らなけりゃよかったよな
すると、俺のそんな考えを感じ取ったかのように
(いやいや、私は君の妄想でも幻覚とかでもないぞ!)
腕を組んで得意そうに言い放つ
(私はただ、君に取り憑いただけだ!)
悪魔は楽しそうに微笑んだ。
…は?
取り憑いたってなんだよそれ!
頭の中でそう考える。
こっちの思考は筒抜けらしい。
(いやぁ、サキュバスってね、ヒトがイチャイチャするのを糧として生きる者なのよ。)
…イチャイチャ?は?え、なんなのコイツ!
わけわかんねぇ!
サキュバスっ?なんだよそれ!
(君、かなり顔可愛いから、取り憑いとけばそのうち彼女とイチャイチャするんじゃないかな〜って)
ちょっとまて、頭の整理が追いつかない。
(いや〜わざわざこっちから出向くのめんどくさいしさー、いい感じの人見つけて取り憑いて、寝転びながらイチャイチャをみれば楽だし楽しいし、いいじゃない?)
なんの話をしているんだ?
ただこいつはかなりめんどくさがりのようだね。
人のことも考えないし。
まぁ、これが夢であれなんであれ…
言ってることの意味、よくわかないけど俺は女の子と付き合う予定はまださらさらないから出ていけよ!
気持ち悪いし!
(そんなこといわれてもね〜出るのは入るのよりめんどくさいし、そもそも魔力結構使っちゃったしてか眠いから寝ていい?)
勝手に入って来ておいて何を言ってるんだろうか。
いや、俺が触ったのか。
つーか魔力ってなんだよ!マンガかっての!
いいから早くでてけよ!女の子とイチャイチャなんてしないから!
(そっかそっか〜)
俺の言葉を聞いた瞬間、悪魔はニヤリと笑った。
うーん。
…イヤな予感が
(じゃあ、"女の子"になってもらえばいいんだね!)
あー、確かに男の子とイチャイチャしないとは言ってないもんねー
…え、なにいってんのお前?
誰が男とイチャイチャじゃ!気持ち悪いわ!
これは夢だとしてもおかしい。俺は女になんてなりたくないぞ!
深層心理でもそんなこと思ってるはすがない!
(サキュバスちゃんはなんでもできるんだよー。えいっ!おやすみ!)
悪魔の声と共に俺は気を失った。
____
「大丈夫ですか?しっかり!おきてください」
誰かに声をかけられてるみたいだ。
俺は、寝てたのか?そういえば変な夢を見た気がする。
確か真っ裸の悪魔と話してたっけ?
女になるなんてバカバカしい。
いや、そんなことより早くおきよう。
心配されてるみたいだし。
…誰に?
目を開ける。
「あっ、起きたんだね。よかった。
どうしたの?こんなところで倒れてたけど」
目の前には男がいた…ってかコイツ吉良じゃねぇか!
俺が言葉を発する前に吉良が言葉をつなぐ。
「というか…君って女の子だよね?どうしてうちの高校の…男子の制服をきてるのかな?」
ッ!コイツなにいってんだ?!
ふつふつと怒りが湧き上がる。
クラス一緒だろうが!なにが女の子じゃオラァ!
俺の顔すら覚えてないってか?あぁ?
「何言ってんだ!俺はどっからどうみても!…へ?」
声が高い。明らかにこれは女の声だ。さすがの俺もここまで声高くないぞ!
風邪でもひいたか?道で寝てたし。
いやいや、風邪で声って高くなるもんなの?
「お、話せるくらいには元気なんだね。それにしても俺っていう一人称は珍しいね。可愛い女の子なのに。もしかして、男装が趣味とか?あはは」
少しニヤつきながら話しかけてくる吉良。
おまえは俺に殺されたいのだろうか?
やっぱりこいつ嫌いだ!冗談でも言って良いことと悪いことがある!
「ふっざけんな!俺は男だ!」
やはり、声がおかしい。風邪だな。完全に。
いまはそんなことはどうでもいい!この舐めくさった男を成敗してくれる!
俺の右手よ!今こそ力を!
「うーん…どっからどう見ても…女の子にしかみえないけど?」
…いや、コイツを殴り殺す前に帰ろう。
俺にも限界がある。
「お前ッ!覚えてろよ!」
特撮の敵キャラのような捨て台詞を吐いて、俺はその場から立ち去った。
いやいや、俺は一体なんなんだよって話になってしまうじゃないか!
礼の一つも言わずになんて、筋が通らないじゃないか。
あ~、男としてまずかったな。
襲われた女の子じゃあるまいし。
もっと冷静な態度をせねば!なめられないように!
しっかし吉良め、おちょくりやがって!
____
「やれやれ、なんだったんだ?あの子。顔は可愛いんだけどな…まぁ、なかなか面白い子だったね。」
吉良大雅は、"彼女"が見えなくなったあと、微笑みながらそう呟いた。
____
「ただいま母さん!帰ったよ!」
あれから走って帰ってきた。風邪引いて体力が落ちたのか、いつもよりも息があがっている。
胸もなんか重い感じだ。
「おかえり。声おかしいわね。大丈夫?」
リビングから声がする。
やっぱり、人に気づかれるほどのとがやられてしまってるようだ。
リビングに向かい、薬を要求する
「母さん、薬ある?」
「今出したわ…ってあんたそれどうしたの?!」
なんだよ、急におっきな声だして。
どうした?ってなんのことを言ってるのだろうか。
怪我とかはなにもしてないんだけど
「どうしたってなにが?あぁ、道で倒れてたらしいから制服が汚れちゃってるかもしれないな。」
なんで寝てたのかは知らないけど。
あ、黒いモヤモヤだっけか?いやそれは夢か。
「道で倒れてどうすれば女の子になるのよ!なによその体!髪も!顔も!…いや、顔は元から私に似て可愛かったけど!」
さらっと自分のこと可愛いって言ったぞ!
いや、そんなことより今なんて言った?
俺のこと女の子って言ったよな?
母さんが冗談でそんなこというはずがない。
小さな頃から俺が女の子に間違えられるのが嫌いなのを知っているからだ。
「…今日ってエイプリルフールじゃないよな?冬だし。冗談キツイよ。なんで会う人皆、俺のこと女っていうんだよ!」
ドッキリかなんかしてんのか?
そろそろ俺、泣くよ?
母さんに抱きついちゃうよ?
「あんた気づいてないの?!鏡見て見なさい、今すぐ!」
ずいぶん手の混んだドッキリだな。誘導までするだなんて。
姉ちゃんでも待ち伏せしているのか?
「はいはい、分かったよ、みればいいんだろ?」
洗面所に向かう。
鏡にドッキリ大成功と書いてあるって線も外せないな
____目の前の鏡には、とてつもなく可愛い女の子がいた。
整った小さな顔に、クリクリの大きな目。小さくも潤った唇……いや、それは元々か。
しかし、明らかに髪の長さがおかしい。
しかもなんか、さらさらしている。
え、ちょっとまて、一旦制服脱ごうか
鏡に俺と同じ動きをして、裸になる女の子が映る。
ちょうどいい白さの肌、細い手脚。
妖艶なくびれに…大きめでいい形をした胸。
大きめでいい形をした胸?!?!
そして、アレがない。
…今触った。無い!
…。
「なんじゃこりゃぁぁぁ!!」
嘘だ!嘘だろ!
男の勲章が!じゃなくて
本当に"女の子になってる"なんて!
____
「ちょっと、優!なにひきこもってんの?大丈夫?!」
状況が理解できない俺は今、自室に閉じこもっている。
いや、ほんとになんなの、どうすればいいの。
女の子扱いされるのが嫌な俺を女の子にするなんて、神様!俺そんな悪行を働きましたっけ?
そのとき、唯一の救世主がやってきた。
(おはよー。どう?いい感じでしょ?気に入った?)
コイツ、どうやら寝ていたらしい。寝ぼけ眼な悪魔が話しかけてきた。
気に入るもなにもないわ!
なにしてくれとんじゃー!
俺は叫んだ!
もちろん心の中で!
ってか、夢じゃなかったのかよ!
(なにしてって…女の子とはイチャイチャしないっていうから、男の子とならしてくれるかな〜と思って…テキトーにやってみたらできちゃった♪)
…ツッコミどころが多すぎる。
テキトーって…テキトーって…
…お前…アホなの?
(こんな事ができるなんてもはや天才だと思うけど?あ、元に戻せって言われても、できないからね。そもそも偶然の産物だし、魔力も残り少ないんだ)
テキトーに魔力消費せず、そもそも俺に取り憑かなければお互い平和だったんじゃないだろうか?
てか、どうにもならないの?
はぁ、何で俺なんだよ!
(黒いモヤモヤにさわったから)
あれか!やっぱあれか!そして黒いモヤモヤって呼び方定着してるんだ!
あぁ、そんなことやっぱりどうでもいいよ。
正直…死にたい。
これからどうすればいいのかもわからない。
家族にさえ受け入れられるのかも心配だ。
…研究対象とかにならないよな?
(魔力が溜まれば戻すのにも挑戦できるよ〜、めんどくさいからやりたくないけど。)
…それだぁぁぁぁっ!
はやく魔力を取り戻せ!
そして、戻せ!
(いや〜男女のイチャイチャが私の糧って前にもいったよね?
君にイチャイチャしてもらわないとどうにもならないな〜。
自然回復を待つなら、とりあえず800年くらいかかるけど?)
え、800年だとぉう!死んでる!もはやそれ死んでる!
目の前が真っ暗になる。
もはや手は無いのか。
でも、こんなことで自分から死ぬなんて、男らしくないよな。
…いや、今は女、か。
(ねぇねぇ、提案なんだけど。君にも魔法、使えるようにしてあげるから、一緒にイチャイチャ手にいれて見ない?)
なにこの取引。悪い誘惑をするおっさんの目をしているぞこいつ!
俺にメリットなさすぎんだろ!
というか魔法?そんなの存在するの?
これ、まだ夢じゃないのか?悪夢にも程がある!
…いいよ、やってやるよ。
俺だって、ちゃんと男の姿で死にたいからな!
できれば夢オチがいいけど。
で、魔法ってどんなの?
正直そういうの結構好きなんだけど
さっきから割とノリがいいのは魔法という響きのせいなのかもしれない。
決して隆士のノリのよさがうつったとは思いたくない。
(皆を魅了して、どんなことでもなんとなく誤魔化せる魔法だよ!すごいでしょ!)
なんだその、サキュバスを体現したような魔法は!
説明もテキトーだし!
(右目でウインクすると発動するからね!右目だよ!あ、私はこの魔法を…『魅了』と名付けたよ!)
しかし、考えようによっちゃ最強だなこの魔法。
…ふぅ、やるしかないのか。
いつまでも閉じこもっていられない。
扉をあけ、目の前の母親に宣言する。
「俺、今日から女の子としてやっていくわ。」
「はぁ?あんたなにいって…」
ここで発動!
すかさず右目でウインクする。
「まぁ、いいんじゃない?学校もちゃんと行くのよ?手続きはしてあげるから。」
魅了が効いたようだ。
はっと気がついて試しに自分の頬をつねる。
…痛い。
夢じゃない。残念だけど認めざるをえない。
まぁ、うじうじしてるのは男らしくないしな。
訳が分からなくてもとりあえずやってみるしかない。
これから、俺の女の子生活が始まる。
書き直しができてきましたので投稿します。
無駄な設定は省き、萌のために書かせていただきますが、ファンタジー要素も後々出てくる予定です。
別に魔法を使ったバトルとかにはならないので、気軽に優たちのイチャイチャな日常を楽しんでやって下さい。
なにかありましたら、感想のほうによろしくお願いします。