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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
97/156

大空

「クピン・・・。」

 添えていた手で軽くクピンの頬を撫でながら、プルーパはゆっくりと口を開いた。

「クピン・・・私逹はあなたを絶対に見捨てないわ。」

「・・・!」

 クピンは驚きの表情でプルーパを見つめた。

 クピンが恐れていたのは、霊力がさらに強くなることで再び自分が"化物"と呼ばれてしまうことだった。再び自分の居場所がなくなってしまうことが、クピンにとっては何よりの苦痛だったのだ。

 その苦痛を解きほぐすように、ゆっくりとプルーパはクピンに語りかけていく。

「あなたに強い霊力があるからとか・・・そんなの関係ないわ。あなたはクピン、化物なんかじゃない、私達の大事な仲間よ。」

「・・・。」

 その言葉を、クピンは涙を流しながら聞いていた。

 クピンの不安を一つずつ解きほぐしていくプルーパ。その言葉に嘘偽りはもちろんない。

「・・・でも・・・強すぎる霊力は・・・災いを招くと・・・私のせいで皆さんが・・・。」

「それは違うわ!!!」

 ガシッ!とクピンの体を強く抱く。胸の中で一瞬震えるクピンに構わず、プルーパは言い続けた。

「もしもよ・・・もしもあなたが皆に黙って国を出たとしても・・・私はあなたを探しに行くわ・・・。」

「・・・。」

「もちろん・・・シロヤ君もね。」

「!」

 プルーパの話は間違いなかった。もしもクピンが本当に国を出ていってしまえば、間違いなくプルーパもシロヤも、もちろん他の仲間逹も探しに来るだろう。

「だから・・・ね?私達は絶対に裏切らないから・・・私達を信じて・・・!」

「・・・うぅ・・・!」

 涙をボロボロと流しながら、クピンはプルーパを抱き返した。

「私は・・・皆さんといて・・・よいのですか・・・?皆さんと共に・・・戦ってもよいのですか・・・!?」

 止めることのできない涙をそのままに、プルーパは再びクピンを強く抱いた。

「もちろんよ・・・!私達は仲間でしょ・・・?」

「・・・はい!」

 クピンの顔がさらに涙で濡れていく。




「・・・ふぇ!?」




 突如、二人を奇妙な浮遊感が襲った。

「ク!クピン!?」

 慌てて足をつこうとするも、どんどんと二人の体は宙に浮いていく。

「ちょ!何これ!?どういうこと!?」

「わ!私にも何がなんだかわかりま、ふわわわわ!!!」


ビュュュュュン!


 一際強い力が働き、宙に浮いていた二人はそのまま窓から城の外へと飛んでいった。

 しかし、二人の体は変わらず宙に浮いたまま、城の周りを漂っていた。

「これってもしかして・・・霊力の卵が孵化したの!?」

 クピンを取り巻く強い光。これは紛れもなく、クピンの霊力の卵が孵化した証だった。

「これが・・・霊力なんですか?」

 まだ何が起こったのか理解できないクピン。そんなクピンに向かって、プルーパは満面の笑みを浮かべた。

「すごいわクピン!二人も長時間宙に浮かせるなんて!」

「そ・・・そうなんですか?」

 意外と言った表情から、徐々に笑顔に変わっていくクピンの表情。

「・・・!」

 目の前に広がる砂漠の大地を見ていたクピンの表情が、次第に笑顔に変わっていく。

 そして、クピンの表情が最高の笑顔になったとき、クピンは大空に向かって体を伸ばした。

「私・・・私!空を飛んでいます!こんなの初めてです!」

 笑顔のまま、クピンはバスナダの空を飛び続けた。その表情には、もう不安や苦痛は一切無くなっていた。

「あははは!バスナダを空から見たのは初めてです!すごい綺麗です!」

 無邪気にはしゃぐクピンを、プルーパは満面の笑顔で見守り続けた。




「プルーパ様、ありがとうございます。」

 再び図書室に戻ると、クピンはプルーパに深く頭を下げた。そんなクピンを、プルーパは再び抱き締めた。

「私こそありがとう・・・!あなたのお陰で・・・答えが出たわ・・・!」

「プルーパ様・・・?」

「絶対に皆を守るわ・・・!この戦いが終わっても・・・皆一緒よ・・・!」

「・・・はい!」


 二人は誓い合った。誰一人欠けることない未来を目指して戦うことを・・・。


 二人はしばらく抱き合った。

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