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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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化物

 光に包まれた視界に浮かぶ一つの景色。それは、プルーパが見知った景色だった。

「これは・・・バスナダ?」

 やがて視界から光が消え、プルーパはその景色に降り立った。しかし、街はいつもと違っていた。

「街並みが違う・・・あれ?」

 プルーパは街に貼られているポスターに目をやった。そこに書かれていたのは、今日の日付より5年古い日付が書いてあった。

「ここは・・・どうやら過去の世界みたいね。」

 どうやらクピンの霊力の力で、5年前の世界に来てしまったようだった。


「!!!!!!!!」


「・・・何かしら?」

 中央広場から何か怒鳴るような声がする。プルーパは何事かと身構えながら中央広場に向かう。

 中央広場に着くと、途端に騒がしい人達の声が耳に入ってくる。

「・・・人だかり?」

 見てみると、中央広場に人だかりが出来ていた。人だかりは何かを取り囲むように形成されていて、人達は人だかりの先に向かって何かを投げながら、怒号のような叫び声を上げていた。


「この化け物が!!!」

「この街に居座るな!」

「今すぐこの国から出ていけ!!!」

「出ていけ!出ていけ!出ていけ!」

「化け物は国から出ていけ!!!」


「化け物!?」

 すぐさま短剣を持つ。いつでも迎撃できるように構えて、プルーパはゆっくりと人だかりの間だから向こう側を見た。


「・・・ぅ・・・やめて・・・ください・・・。」


「!!!」


 向こう側にいたのは、化け物とは似ても似つかない少女だった。少女は街の人達が投げる物を全身に受けてたくさんの傷を作り、頭からは少量の血を流している。

 プルーパはすぐさま少女の名を叫んだ。


「クピン!!!!!」


 少女―――クピンに叫ぶが、その叫びは空を切るようにクピンの耳をすり抜けていった。

「・・・私は・・・化け物・・・じゃないです・・・。」

「うるせぇ!お前は化け物だ!!!」

「あんたをここに置いといたら私達の身が危ないよ!」

「さっさと国から出ていけ!」

「そうだそうだ!出ていけ出ていけ!」

 物を投げる勢いがさらに増していく。クピンはうずくまって飛んでくる物に耐えている。

「あなた達!いい加減にしなさい!」

 プルーパは街の人達の一人の肩を掴んで止めさせようとした。


スッ・・・。


「・・・!?」


 プルーパの手は肩を掴むどころか、まるで蜃気楼を掴むかのようにすり抜けてしまった。何度も触れてみようとするが、誰の体にも触れることができなかった。

「幻・・・?いえ、違うわ。」

 プルーパは気づいた。他の人が幻なんかではない。自分が蜃気楼のようになっているのだと。

「声が聞こえなかったのも・・・きっとこのせいね・・・。」


「もう・・・やめて・・・やめて・・・!」


「!!!」


 その場が凍りついた。プルーパは思案を止めてクピンを見てみた。

 涙声になったクピンの体が、急に発光し始めていたのだ。

「魔力だ!化け物の証拠だ!」

「逃げろ!殺されるぞ!」

 発光し始めたクピンを見た街の人達は、急に走って中央広場から逃げていった。

「違うのに・・・私は化け物じゃ・・・ないのに・・・。」

 光はゆっくりと強くなっていき、クピンの体、特に傷口に集中していく。

「化け物なんかじゃないのに・・・!」

 クピンの体から光が止んだ。その体からは、さっきまで刻まれていた傷は影も形も残さず消え去っていた。

「私・・・これからどうすればいいのかな・・・。」

 そう呟いて、クピンはうずくまったまま動かなくなった。

「・・・!」

 それを見ていたプルーパの視界が突如揺れた。見ている景色が反転していく。

「うぅ・・・!」

 意味のわからない空間に放り出されて思わず目を閉じる。

「・・・!?」

 次に目を開けた時、プルーパの目の前に広がっていた景色は、たくさんの本が転がっている図書室の景色だった。




「・・・そういうことだったのね。」

 今のはクピンが見せた過去の映像だろう。それを見たことで、クピンが何を恐れているのかが容易に想像できた。

「それに・・・ボロボロだったクピンを城に招き入れたのも・・・私だからね・・・。」

 プルーパは、倒れているクピンにそっと手を添えて、ゆっくりと語りだした。

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