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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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哀愁

 一日目の朝。


「エイ!ヤァ!」

 部屋の中に響く威勢のいい声と、槍が空を切る音。

 少女―――ローイエは、自室で槍の素振りをしていた。

 これから始まる戦いに備え、ローイエは自分なりに準備をしていた。

「よし!素振り百回終了!」

 流れていた汗をタオルで拭い、ローイエは満足そうな表情で槍を立て掛けた。

「朝ごはん食べよ〜っと!」

 ローイエは意気揚々と歩いていった。


「ん?あれって・・・。」

 その途中、ローイエは廊下の先に人影を見た。その人影は、廊下の窓から景色を眺めている。

 ローイエはその人影に話しかけた。

「何やってるの?レジオン。」

 人影―――レジオンはローイエの方を向いて笑った。

「いや・・・ちょっと考え事をな。」

 レジオンは少し自嘲気味に笑った。

「ふ〜ん・・・あ!」

 ローイエはレジオンを見て、何かを閃いたように手を叩いた。

「ねぇレジオン!お願いがあるの!」

「何だ?デートか?悪いが10歳は守備範囲に入ってねぇぜ?」

「違うよ!!!」

 怒った感じで睨むローイエ。

「冗談だよ冗談!」

 慌てて弁解するレジオン。

 少しむくれた後、ローイエは閃いたことを口にした。

「ねぇレジオン、私の槍の稽古をつけて!」


「!」


 レジオンの表情が曇った。そんな表情もお構いなしに、ローイエは笑顔でレジオンに近づいていく。

「私もお兄様のために戦いたいの!お姉様よりも強くなってお兄様の一番になるの!だからレジオン!私に稽古をつけて!」


「・・・本気で言ってるのか?」


「・・・え?」

 暗い表情のレジオンの言葉に、ローイエは驚きと恐怖を覚えた。

「ローイエ・・・お前は本気で戦うつもりなのか?」

「も!もちろんだよ!お兄様のためだもん!」

 それを聞いて、レジオンはさらに表情を暗くした。

「駄目だ・・・。」

「何でダメなの?」

「・・・。」

 そこでレジオンは、ローイエを一心に見つめて口を開いた。


「ローイエ。お前を戦場に出すわけにはいかねぇ。」


「・・・え?何で・・・?」

 レジオンの言葉に、言葉がうまく見つからないローイエ。そんなローイエに、レジオンはさらに続けた。

「今回の戦いは今までの戦いとは訳が違う。お前の目の前で多くの人達が死ぬ。そんな場にお前を送り込むわけにはいかねぇ。」

「そんな!私だって戦える!お兄様の役に立ちたいよ!」

「いや駄目だ!お前は戦いが終わるまで部屋にいろ!戦いには絶対に参加するな!」

 次第に命令口調になっていくレジオンに、ローイエはどんどんと怒りを募らせていく。

「何で戦っちゃダメなの!?」

「・・・。」

「何でレジオン達と一緒に戦っちゃダメなの!?」


「・・・それが・・・ダメなんだよ・・・。」


「えっ・・・?」

 初めて見るようなレジオンの寂しげな表情。

 そんな表情を浮かべながら、レジオンは小さく呟いた。

「とにかくダメだ・・・お前をまだ・・・死なせたくない・・・。」

 そう言って、レジオンは寂しげな表情のまま去っていった。

「レジオン・・・。」

 去っていくレジオンの背中を見ながら、ローイエは小さく呟いた。

 今までのレジオンからは考えられないような表情は、ローイエの心の中に深く残った。自然とローイエの顔も沈んでいく。

「でも・・・。」

 しかし、ローイエはすぐさま表情を変えて、小さく拳を握った。

「諦めないもん・・・!絶対・・・皆を守るために戦うんだから!」

 ローイエは決意した。

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