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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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追跡

 森地帯に入っていくレーグを確認したシロヤとプルーパは、目を見合わせた。

「明らかにおかしいわ・・・大臣が森地帯に一人で入るなんて。」

「それに・・・入る前に周りを確認してました。人目を気にしているんでしょうか?」

 レーグは明らかに挙動不審だった。森地帯に自分が入ることを他人に知られたくないのだろうか。

 考えている二人に、後ろから二人を呼ぶ声が聞こえた。

「シロヤ様〜!プルーパ様〜!」

 声の主が後ろから走ってくる。声の主はバルーシだった。慌てたような表情で、顔を汗だくにしていた。

「バルーシ!まさかあなた、レーグを追って?」

「はい!会議が終わると同時に、誰にも言わず護衛も無しに城を出ていきました。」

 どうやらレーグは、自分の行動を人に知られないように徹底している。不審な動き、怪しい噂には、レーグが何かしら関わっている可能性が非常に高いと三人は踏んだ。しかし、まだ証拠は不十分だ。

「バルーシさん、俺、レーグを追ってみます。」

 口を開いたのはシロヤだった。バルーシは慌ててシロヤを止める。

「無茶だ!この先は未開拓地帯だ!何が出てくるかわからないぞ!」

「でも怪しいなら確かめるべきです!どんなに危険でも行ってみましょう!」

 バルーシを説得するシロヤ。その瞳には熱意が秘められていた。

 その熱意が伝わったのか、プルーパが一歩前に出た。

「私もシロヤ君の意見に賛成よ。今動かなければ解決なんて程遠いわ。」

 二人の熱意に押され、バルーシは唸りながら頭を縦に振った。

「ん〜?バルーシいつ来たの〜?」

 バルーシの後ろから、食事を終えたローイエとクロトがのんきにやって来た。

「ローイエ、今からシロヤ君と行かなきゃいけない所があるの。」

「だからクロト、ローイエ様と城に帰っていてくれ。」

 ローイエは不満そうな顔をし、クロトはシロヤを心配するような瞳で見つめる。おそらく今から危険な所に行くのだろうと、直感で感じ取ったのだろう。

「大丈夫だ!プルーパ様に何かあったら俺が守ります!」 シロヤは肩の剣に手をかけて強気で言った。

「・・・シロヤ様がそこまで言うなら大丈夫かな?」

「シロヤ様を信じよう。シロヤ様とプルーパ様なら大丈夫だ。」

 バルーシはローイエを励ますように言葉をかける。

 それで安心したのか、ローイエは静かに首を縦に振った。

「ありがとう、ローイエ。」

 笑顔のローイエの頭を撫でるプルーパ。

「プルーパ様、行きましょう。」

 森地帯に入っていくシロヤとプルーパを、ローイエとクロトは心配そうに見つめていた。


 未開拓地帯は、国境近くの森地帯とは格が違っていた。国境近くの森地帯はまだ整備がされていたが、未開拓地帯はその名の通り何も手がつけられていなかった。

 大きな岩や見たことない植物が入り乱れる道を歩く二人。

「こんな先に・・・何があるんでしょうか?」

「レーグのことだからろくなものじゃないわよ。」

 緊張するシロヤとは対称的に、まるで慣れたように道を進むプルーパ。どんどんと二人の差は離れていった。負けじと気合いで追いかけるシロヤ。

 ふと、プルーパが歩くのを止めた。何事かとシロヤは近づいてプルーパに訪ねる。

「プルーパ様?何かあったんですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・来る!」


 プルーパが今まで見たことないようなオーラを放った瞬間、木々が意思を持ったように動き出した。木の枝が伸び、今にも二人を貫かんばかりの勢いで動き回る!

「う!うわぁ!」

 シロヤは尻餅をついた。今までの旅で見たことない相手だ。肩から剣を抜くが、剣を持つ手はカタカタと震え上がる。

 一本の枝がシロヤめがけて伸びる!

「うわあぁぁぁ!」

 シロヤはかろうじて受けたものの、今まで感じたことのない力に、全身が震え上がるほどの恐怖が襲いかかる。

 それを狙うかのように、シロヤを狙って再び枝が伸びる。シロヤは思わず目を閉じた。




「・・・?」

 訪れない痛み。シロヤは目を開けて目の前を確認する。

 枝は自分の目の前で止まっていた。そして枝には、三本の短剣が刺さっていた。

「シロヤ君!大丈夫?」 シロヤの横にいたプルーパは、切っ先が眩しいくらいに光輝く短剣を両手に持っていた。持っている短剣と、枝に刺さっている短剣が同じなのを見ると、どうやらシロヤを助けたのはプルーパのようだ。

「シロヤ君、今すぐ下がって。」

 凛とした声に押され、シロヤは後ろに下がった。

 プルーパはシロヤの位置を確認すると、シロヤに向かってウィンクをした。シロヤには今のウィンクが、「安心してね」と言っているように見えた。

 動き回る枝と向かい合うプルーパ。しばらく向かい合ったのち、プルーパが先に動いた。

「・・・?」

 プルーパの動きは、戦士のような動きではなかった。言うなれば、踊り子の踊りだ。まるで舞踊のように華麗に舞うプルーパ。舞いながら、向かってくる枝を華麗に避けている。

 そして一瞬見えた隙、ほんの一瞬の内に、プルーパは動き回る枝の奥、木々の本体を狙った。

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