戦士
二日目・・・。
「・・・。」
頭にとりついた違和感が抜けず、バルーシは眠れないまま朝を向かえた。
「・・・。」
昨日から頭にとりつく疑問に答えを出そうと、バルーシはずっと思案していた。
しかし、昨夜から早朝の今まで思案していても、何も答えは出てこなかった。
「・・・。」
バルーシは考えることをやめ、体を起こして部屋を出た。
まだ誰もいない早朝の城内に、バルーシの重い足音が響き渡る。
「・・・。」
考えることをやめようとするが、バルーシの頭はすぐさまリーグンの言葉について思案してしまう。さらには、あの時のリーグンの哀愁を浮かべた顔のことも思案してしまう。
「・・・。」
あんなリーグンは今まで見たことがない。バルーシは思った。
「・・・!」
しばらく歩いていると、バルーシは作戦会議室の前に着いた。作戦会議室の扉は少し開いていた。
「誰か・・・おられるのですか?」
恐る恐るバルーシは作戦会議室を覗きこんだ。
「・・・誰もいない?」
作戦会議室の中には誰もいなかった。しかし、明かりがついていることから、誰かがいたことは容易に想像できた。
「・・・!」
明かりを消そうと作戦会議室の中に入ったバルーシは、紙が一枚、テーブルの上に置いてあるのに気づいた。
「これは・・・?」
昨日の自分の忘れ物だろうか?バルーシは紙を手に取った。
「・・・?」
紙は白紙ではなかった。バルーシは紙をひっくり返して、紙に書いてある内容に目を通した。
「勝手な行動を取ったことをお許しください。リーグン」
「これは・・・!」
間違いなくリーグンの手紙だ。
バルーシはすぐさま部屋を飛び出した。
「一体何が・・・!」
バルーシは、すぐさま城を飛び出して、一つの砂丘へと走り出した。
勘でしかなかったが、バルーシは必ずそこに何かあったのだと信じて、砂丘へとたどり着いた。
「・・・やはり!」
勘は当たっていた。
昨日、二人が黙祷を捧げた山はえぐりとられていて、小さな木の棒は二つに折れて転がされていた。
「一体・・・誰がこんなことを!」
バルーシは次第に怒りが沸いてきた。拳を強く握り、銀髪が逆立たんばかりに怒りを露にする。
「!!!」
そんなバルーシの目の前に、足跡が見えた。
荒らされた墓からまっすぐに未開拓地帯に向かって伸びている足跡は、時間が経っているのか、少し消えかけていた。
「まさか・・・リーグン様はこれを追って・・・!」
バルーシはすぐさま剣を構え、足跡を頼りに未開拓地帯に向かって走り出した。
「・・・。」
鬱蒼としている未開拓地帯の森を、バルーシは剣を片手にゆっくりと警戒しながら歩いていた。
足跡はとうに消えていたが、森は一本道で迷うことはなかった。
「リーグン様・・・一体・・・。」
どんどんと歩いていくと、やがてバルーシは小屋にたどり着いた。
「ここは・・・確かあの時の・・・!」
この小屋は、シアンがシロヤを連れ戻そうと追い詰めた場所だ。そして、バルーシはここで自らの腕を切り落としたのだ。
バルーシは警戒しながら小屋の中を見る。
「!!!」
小屋の中を見た瞬間、バルーシはすぐさま小屋の中へと向かった。
「リーグン様!!!」
小屋のドアを蹴り開け、バルーシはすぐさまリーグンに駆け寄った。
「これは・・・。」
リーグンは全身傷だらけで小屋の中で倒れていた。その傷は剣のような鋭利な刃物で切り裂かれたような傷だ。
「!!!」
その隣に、見知らぬ男が同じように倒れていた。しかしこの男に剣のような傷はなく、手にはこん棒らしき鈍器が握られていた。
「これは・・・第三者の仕業か。」
「ぅ・・・うぅ・・・。」
「リーグン様!!!」
苦しそうに呻き声を上げるリーグン。すぐさま駆け寄ってリーグンを介抱するが、まだ上手く言葉を発せられないでいる。
「一体・・・誰がこんなことを・・・!」
カチャ・・・。
「!!!」
急に聞こえた鎧の音。
バルーシはすぐさま剣を構えた。
「誰だ!?」
そこにいたのは、全身鎧に身を包んだ戦士だった。
バルーシはすぐさま体制を整えて戦士と向き合う。
「貴様・・・何者だ!」
バルーシの言葉を無視して、戦士はバルーシに切りかかってきた。
「くぅ!」
「・・・。」
戦士の重い一撃を寸でで返すが、次第に上体がブレていく。
キィィィン!!!
「しまった!」
剣を弾かれてしまい、バルーシは体制を崩した。
「・・・。」
戦士は、体制を崩したバルーシに向かって剣を構えた。
しかし・・・。
「・・・。」
男はそこで動きを止めた。
「・・・?」
何が起きたのかわからないバルーシ。そんなバルーシを後ろに、戦士は身を翻して小屋を出ていってしまった。
「ぐ・・・!」
「リーグン様!」
我に返ったバルーシは、すぐさまリーグンを背負って小屋を出ていった。