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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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秘策

「それでおめおめと逃げ帰ってきたって訳か・・・。」

「・・・返す言葉もないわ。」

 暗い空間の中で、男と女が話していた。

「俺は違うぜ!俺はケーキのいちごは最後まで食べないタイプなんだよ!」

「・・・どういう意味だ。」

「バルーシ・・・あいつは俺がみっちり料理してやるぜ!だから残しておいたんだ!」

 女の後ろにいた男―――ドレッドが叫んだ。

「・・・まぁいい。」

 男はすぐさま身を翻し、暗い部屋の奥に向かって膝をついた。

「・・・我らが王よ。創生の準備は整いました。今すぐにでも出撃命令を出していただければ・・・。」

 そう言うと、暗闇の奥から低い声が響き渡った。それはまるで、ドラゴンが唸るような声だ。

「焦るな・・・まだ時期ではない・・・。」

「時期ではない・・・と申されますと?」

 女性―――ルーブは暗闇の奥に疑問を投げかけた。

「お主らに新たに与えた新たな駒・・・奴はまだ覚醒していない。」

 三人は一斉に同じ方向を見た。その視線の先にいたのは、一人の男だった。男は置物のように動かなく、一言も発していない。

「覚醒にはどれぐらいかかるんだ?」

 ドレッドが聞くと、暗闇の奥から二本の指が出てきた。

「・・・二日だ。」

「では、攻撃は二日後ということですか?」

 指が暗闇に戻り、奥から笑うような声が聞こえた。

「ふふふ・・・忌々しきチラプナの子孫共・・・必ずこの手で抹殺してくれる・・・。」

 悪魔のように響く声。

「しかしよぉ、本当にあいつらを倒せるのか?」

「何だドレッド。珍しく弱気ではないか。」

 嘲笑うように言うルーブ。それを横目に、ドレッドは言葉を続けた。

「奴らは今までの奴らとは何かが違う・・・それに向こうには星もある。」

「心配するな・・・ドレッド。」

 暗闇の奥の声は、含み笑いをしながら一つの方向を指差した。

「奴は・・・そのための秘策なのだ・・・。」

 指差した方向にいたのは、置物のように佇む覚醒していない男だった。

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