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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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人柱

「・・・。」

 ゴルドーの口から語られた話に、誰もが言葉を失い、聞き入っていた。

「この話はバスナダの歴史書にも載ってない遥か昔の話よ。」

 フカミが補足する。

 誰もがバスナダの真実に言葉を失っていた。

「・・・あ・・・あの・・・。」

 静まり返る中、一番最初に言葉を発したのはクピンだった。控えめに手を上げて、クピンは質問を口にした。

「今の話とこれからの戦いは・・・どう関係しているのですか?」

 その質問に、ゴルドーは再びゆっくりと語り出した。


「自らの命と引き換えに魔を封じた英雄は、礎に鍵をつけた。その鍵は英雄からその子へ、その子はまた子へと鍵を受け継いでいった。つまりは王が王位継承の際に新国王へと鍵を託すようになっていった。しかし・・・。」

 ゴルドーはここで一度を言葉を止め、再び続けた。

「この鍵は・・・ある一人の国王によって開かれ、魔は復活したのだ。」

 その言葉を聞いて、シロヤはハッと表情を変えた。

「まさか・・・その国王って!」

 シロヤはここで"しまった"と思って口を閉じた。

 そんな表情に気づきながらも、ゴルドーは苦い顔をしながら続けた。

「そう・・・砂の竜王時代の国王・・・先代国王、シアン達の父親だ・・・。」

 三姉妹の表情が一気に曇る。ゴルドーはそこで言葉を止めた。ゴルドー自身も、これ以上三姉妹の前で話を続けるのは辛いことだった。

 しかし、シアンは曇った表情のままゴルドーを見つめた。

「ゴルドー・・・続けてくれ・・・。」

「シアン・・・様。」

 シロヤは心配そうにシアンを見つめるが、シアンは曇っていた表情を必死に笑顔にしてシロヤの方を向いた。

「シロヤが逃げないと言っているのだ。それなのに私が逃げたら示しがつかないであろう。」

 苦しそうな笑顔でシロヤに言葉をかけるシアン。同じように、プルーパとローイエも苦しそうな笑顔を浮かべていた。

「そうよ。シロヤ君だけに辛い思いはさせられないわ。」

「お兄様。絶対に逃げないから安心してね。」

「プルーパ様・・・ローイエ様・・・。」

 辛いながらも笑顔を浮かべ続ける三姉妹に、シロヤも必死に作った笑顔で返した。

「・・・話を続けよう。」

 ゴルドーの言葉に、全員が再び話に集中する。

「復活した男は再びこのバスナダの地を手中におさめようと国に攻撃を仕掛けた。その攻撃の目的は、先代国王を亡き者にすること。」

「そ・・・それって・・・もしかして!」

 シロヤの脳裏に、シアンの心の中で見た過去の映像が蘇った。

「じゃあ・・・あいつが?」

「いや・・・ドレッドは違う。奴はただ男から出された目的を遂行するために使われた駒に過ぎない。」

「彼らは一体・・・?」

 ゴルドーは、ゆっくりと来訪者について語り出した。

「来訪者二人、ドレッド、ルーブは男と共に封じられた忠実な僕。それでいて絶対的な信頼を得ている強者だ。」

 バルーシとプルーパは額に汗を流しながらその話を聞いていた。

「続けよう。その攻撃は失敗、国王ではなく国王の妻、イリーボアが犠牲になった。」

 その一部始終を見たことがあったシロヤとシアンは、曇った表情を変えることができなかった。

「国王は、もう一度男を封じようと自らの命と引き換えに封じようとした。しかし、国王一人では封じられぬほどに男の力は強くなっていたのだ。そこで国王は・・・。」

 そこでゴルドーは、席からゆっくり立ち上がった。

「封印に人柱を使ったのだ。」

「人・・・柱?」

 全員が疑問を持った。

「人柱とは言わば何かを成すために犠牲になるべき者のこと。一人の命と一人の人柱を使うことで、先代国王は男を再び封じることが出来たのだ。」

 その言葉に、シロヤがその場の全員を代表して疑問を口にした。

「その人柱って・・・。」

 その疑問に、ゴルドーは悲しげに答えた。

「・・・俺だ。」

 その場の全員が再び言葉を失った。

「先代国王が男を封印した時、再び同じ鍵が礎を封じた。そして今・・・。」

「再び鍵が開かれた・・・。」

 ゴルドーの言葉に続けて、シロヤは口を開いた。そしてその言葉を聞いて、ゴルドーは深く頷いた。

「これが・・・これから始まる戦いの始まりの話だ。」

 ゴルドーはそこで話を終えた。

「・・・。」

 伝えられた話を聞いた全員は、黙ることしかできなかった。静まり返る作戦会議室。

「シロヤ・・・。」

 心配そうに話しかけてきたのはシアンだった。話しかけられたシロヤは、まるで生気が抜けているかのように固まっていた。

「どっちにしろ・・・今の状態のまま戦うのは死にに行くようなものだ。はっきりとした目的もない今なら尚更だ。」

 そう言って、ゴルドーは作戦会議室を出ていった。


 ゴルドーがいなくなった作戦会議室は、まるで空気が通ってないように静まり返っている。

「・・・皆の者。」

 そんな空気の中、最初に言葉を発したのはシアンだった。

「皆も戸惑っているだろう・・・私も一体何が起きているのかわからない・・・。しかし、戦いの狼煙はもう上がっている。」

 シアンは作戦会議室にいる全員にはっきりとした声で言った。

「それぞれ心を落ち着ける時間が欲しいであろう・・・。」

 そう言って、シアンは指を二本立てて前に出した。

「二日・・・二日間だけ皆に考える時間を与える。

この二日間、各々が思う最高の答えを出して・・・またここに集おうぞ。」

 シアンの言葉で、全員が作戦会議室を後にした。

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