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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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狼煙

「兄さん・・・。」

 王室を離れ、ゴルドーを兵士達の詰所に案内するバルーシ。悲しそうな表情のまま、ゆっくりと話し出した。

「先代国王が暗殺された日以来・・・行方不明となっていた兄さんを私は探し続けました。しかし・・・兄さんの影一つすら見つからずに何年も月日が経っています。一体・・・兄さんはどこへ・・・。」

 そこでバルーシは話すのを止めて、ドアの前に立った。

「ここが兵士達の詰所です。」

 バルーシは扉を開けた。

「ん・・・?バルーシか?」

 詰所の中には先客がいた。先客は詰所の椅子に腰掛け、バラバラの紙を眺めている。シラフのレジオンだった。

「レジオンさん。」

 レジオンはバルーシの奥にいた人影に気づき、人影を見つめた。

「!!!!!」

 人影を認識した瞬間、レジオンは驚愕といった表情で固まった。椅子から勢いよく立ち上がり、石のように固まって人影を見つめ続けていた。

「レジオンさん・・・久しぶりですね・・・。」

 ゴルドーは懐かしむように前に出ると、レジオンも複雑な表情のまま近づいた。

「お前・・・生きていたのか・・・?てっきり死んだかと思ってたぜ・・・。」

「死んでなんかいませんよ。私は今、確かにここにいますから。」

 ゴルドーは笑った。それに合わせて、レジオンも笑い始めた。

「ハハハハハ!確かにおめぇは死ぬような人間じゃねぇな!」

 軽く笑い合い、レジオンはそこでゴルドーに問いかけた。

「んで?今までお前はどこにいたんだ?」

 軽い感じで聞いたレジオンだったが・・・。


「・・・。」


 ゴルドーは笑いを止めて、表情を引き締めてゆっくりと歩き出した。その様子を、レジオンとバルーシが見つめている。

 やがてゴルドーは詰所の窓の前に立ち、窓を開けて外を見ながら口を開いた。

「・・・始まるんです・・・この国の命運をかけた戦争が・・・。」

「・・・戦争・・・?」

 バルーシが疑問を口にすると、ゴルドーはゆっくりと語り出した。

「すでに、狼煙は上がっています。」

「狼煙・・・?まさか来訪者二人のことか?」

 窓を見ながら、ゴルドーはゆっくりと頷いた。

「あの二人は一体何者なのですか?これから・・・何が起ころうとしているのですか?」

 心配そうな表情で話しかけるバルーシ。そんなバルーシを見ながら、ゴルドーはレジオンとバルーシの方を向いた。

「バルーシ。明日、作戦会議室に皆を集めてくれ。」

「皆って、まさか封印獄で誓いあった・・・。」

 ゴルドーは頷いた。

「話しておかなきゃいけない。立ちはだかる脅威のこと・・・そして・・・バスナダと王家の真実をな。」

 窓から風が部屋に向かって吹き込んだ。風は、真剣な表情で決意を口にしたゴルドーの金髪を、力強く舞い上げた。

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