激昂
封印獄で平和を誓い合った日から数日が経ったある日・・・。
「国王様!!!」
兵士の一人が、王室に向かってやってきた。慌てた様子に、その場にいたシロヤ、シアン、プルーパ、ローイエはただ事ではないのを察知した。
「ど!どうしたんですか!?」
シロヤが慌てた様子で聞くと、兵士は早口で話始めた。
「突然現れた全身鎧の男が城の門を破って城内に侵入しました!他の兵士達は皆、全身鎧の男によって全員気絶させられています!」
「何だと!?またもや来訪者か!!!」
兵士の言葉を聞いたシアンは、すぐさま弓を持った。それに合わせて、ローイエとプルーパも武器を構えた。
「国王様は早く逃げてくだ!うわぁぁぁ!」
「!!!」
言葉の途中で、兵士は強い突風に吹かれて飛ばされ、壁に強く体を打ち付けて意思気を失った。
「あぁ〜!ここが王室か?忘れちまってたぜ!」
ガシャガシャと全身鎧の音を響かせながら、大柄な男が王室に入ってきた。
「貴様・・・奴等の味方か!」
シアンが矢を構える。それを見た男は、慌てて兜を取った。
「待ってください!俺は敵じゃないですよ!」
慌てた様子で弁解する男。
「!!!」
「あなたは!!!」
男を見たシアンとプルーパは、同時に目を見開いて驚いた。
「久しぶりだな。まだあの時は小さかったから覚えてないと思ったんだが。」
「・・・あ!まさかあなたは!」
シロヤも声をあげた。シロヤは目の前の男を見たことがあった。確かに男の顔を、シロヤは"シアンの過去の映像"の中で見たことがあった。
「大きくなったものだなぁ〜!」
昔を思い出すかのように語り始めた全身鎧の男は、周りをキョロキョロと見渡し始めた。
「・・・んで?その新しい国王って奴はどこにいるんだ?」
全身鎧の男が問いかけてきた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
全身鎧の男の一言によって、シアン達三姉妹が動きを止めて黙り込んだ。顔はさっきに比べて怪訝な顔になっている。
「あの・・・。」
「言葉を慎むのだ。」
口を開きかけたシロヤを制して、シアンはズイッと前に出た。
「今玉座に座られているお方が、我らがバスナダの新たな国王、シロヤ様でおられるぞ。」
強い口調で語るシアン。しかし、それを聞いた全身鎧の男は同じように顔をしかめてため息をついた。
「なんだよ〜・・・もう少しできるやつだと思ってたんだがな・・・。」
その言葉に、三姉妹の眉がピクリと動いた。怪訝な顔がさらに強くなり、シアンに至っては男を睨み付けていた。
「何が言いたいのだ・・・?」
「・・・お前ら・・・今この国に起きてることはわかってるよな?」
三姉妹は頷いた。
「だったらわかると思うんだがな・・・。」
「余計な言葉はいらない!今すぐ言いたいことを言え!」
気づけばローイエとプルーパも男を睨み付けている。一触即発の空気の中、男は口を開いた。
「何でこんな凡人を国王にしてるんだ?」
「!!!」
言葉が終わった瞬間、シアンは男に矢を放っていた。
「うわわわ!」
ギリギリで避ける男。
「貴様・・・シロヤを侮辱するつもりか!」
「侮辱も何も・・・今は国の存亡が関わった大事な戦いの前なんだろ?何も出来ないような凡人を国王にするなんて負け戦に出るようなものだろう。」
淡々と語る男の言葉は、シロヤにはもちろん、三姉妹の心にも突き刺さっていた。しかし、三姉妹はシロヤに比べると違うところに刺さっていっているようだ。
「シロヤ君を・・・凡人呼ばわりするな!」
短剣が高速で男に向かって飛んでいく。
「お兄様を馬鹿にしたら許さないんだからぁ!!!」
男に向かって、槍から強い衝撃波が何発も放たれた。
「我が夫への侮辱・・・!死してなお許されん大罪だ!!!」
シアンも矢を十本同時に男に向かって放った。
短剣、衝撃波、矢が男に向かって一斉に放たれた。
「な!何なんだよ急に!」
男は慌てて剣を持ち、素早く振るった。
その瞬間、男に向かって放たれた全てのものが空中で砕け散った。
「ったく!何でそんな奴に肩入れするんだ!?まさか・・・国が滅びるからってヤケ起こしたのか?」
男はすぐさま剣をしまって、三姉妹に向かって叫んだ。
「落ち着け!まだ国は滅びてない!まだ対策はいくらでもあるんだ!今すぐ信頼と実績のある奴を国王に即位させるんだ!こんな青二才が国王やってたら確実にこの国は滅びるぞ!」
男の言葉を聞いた三姉妹は、顔を真っ赤にしていた。それは、誰もが目に見えてわかる共通の感情、"怒り"だ。
「それ以上言ってみなさい!!!この場でその命を噛み殺してやるわ!!!」
「もう私は許さないからぁ!!!一生私の前に出てこれないようにしてやる!!!」
「もはやその魂が砕けても許されぬ罪・・・今この場で貴様の命を刈り取ってくれる!」
激昂する三姉妹。
「シロヤ様!」
突如、勢いよく扉が開かれた。