人影
「あ〜ぁ・・・派手にやったもんだな〜・・・。」
誰もいない国境を潜る男の人影。人影は周りを見渡しながら呟いた。
「まぁ・・・あいつらのやりそうなことだがな・・・。」
誰に聞かせるわけでもなく呟く。
そして、人影はゆっくりと城に向かって歩き出した。
「いやぁ〜・・・懐かしいなぁ〜・・・。」
時刻は昼。たくさんの人が行き交う街を抜けると、城への道が見えてくる。
今の時期に城へ行く人はあまりいないため、城への道に人はいない。
故に、城の衛兵に見つかりやすい。
「!!!」
衛兵はすぐさま、城に向かってくる人に向かっていった。
「何者だ!?」
怪しむのも無理はない。全身鎧でその身を全て隠す人が近づいてくれば、誰だって怪しむだろう。
しかし・・・。
「あぁ、怪しいものじゃねぇから安心しな。国王に会わせてくれや。」
馴れ馴れしく軽い口調で話しかける全身鎧の男に、衛兵はすぐさま門の前に立ち塞がった。
「ならん!今は謎の来訪者問題で関係者以外は城への入場を制限している!」
「シロヤ国王への謁見は出来ない!早々に立ち去れ!」
その言葉を聞いて、全身鎧の男は動きを止めた。
「シロヤ・・・?何だ、王はシアンじゃないのか。」
「貴様!口を慎め!」
剣を向ける衛兵を無視して、全身鎧の男は背中に手を回した。
「新しい国王か・・・どんなやつなんだ〜?」
背中に回した手がゆっくりと引かれ、剣が現れた。真っ白く光輝く剣を、男は衛兵と門の前に立って構えた。
「怪我はさせねぇよ。ちょっと道開けてくれや!」
叫んだと同時に、男の手が消えた。
そして・・・。
ビュン!
「うわぁぁぁ!」
男の手が現れたと同時に、衛兵は二人揃って強い突風に襲われて、体をまるごと弾き飛ばされた。
それと同時に、衛兵が守っていた門が切り刻まれてその姿を崩した。
「んじゃ・・・お邪魔するぜ。」
気を失った二人の衛兵に言葉をかけて、男は城に入っていった。