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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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元凶

「ヒヒヒヒヒ!」

 シロヤの叫びに対して、レーグは嘲笑うかのように含み笑いを続けた。

「くっ・・・。」

「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 シロヤの額から汗が垂れる。確かにレーグは拘束されて身動き一つできない。だが、何故かシロヤはレーグに体を掌握されているような錯覚に陥っていた。

「ヒヒヒヒヒ!その調子ならまだわかっていないようですね・・・ヒヒヒヒヒ!」

「わかっていない・・・?どういうことだ・・・?」

 シロヤの問いに、レーグはさらに含み笑いを強くしながら語り始めた。

「ヒヒヒヒヒ!今回の襲撃、あれは偶然ではなく必然なのですよ!ヒヒヒヒヒ!」

「必然・・・?」

「それは、あいつらが来ることをお前は事前に知っていたということか?」

 レジオンの問いに、レーグは笑いながら答えた。

「えぇ、日時や場所も全てわかっていましたよ!ヒヒヒヒヒ!」

 笑うレーグに対して、次はローイエが口を開いた。

「あの人達って誰なの?魔物でもなさそうだし・・・。」

「ヒヒヒヒヒ!あえて言うならば・・・"亡霊"ですかな?ヒヒヒヒヒ!」

「亡霊?」

 シロヤ達は想像がつかなかった。しばらく流れた沈黙の後、シロヤが口を開いた。

「何であいつらは今現れたんだ?目的はなんだ?」

 シロヤの問いを聞いたレーグは・・・。


「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!」


 聞いたこともないような笑い声。封印獄に響き渡るレーグの笑いに、シロヤは内臓を掴まれるような感覚に陥った。不思議と呼吸が荒くなる。

「何がおかしい・・・。」

 それを聞いたレーグは、すぐさまシロヤに目線を向けた。

「彼らが今現れた理由は明確ですよ!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 またしばらく笑い続けたのち、レーグは指を指すかのようにシロヤを見た。




「貴方が原因なんですよ!」




「・・・!」

 レーグの言葉に、誰もが耳を疑った。

 突然の来訪者がシロヤの命を狙ってやって来たこの事件の発端、それがシロヤなのだとレーグは言ったのだ。

「そんな話・・・信じるわけなかろうが!」

 叫んだのはシアンだった。ズイッとシロヤの前に出てレーグを睨み付ける。

 しかしレーグは・・・。

「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!事実を事実と認めることも大事ですよ!シロヤがこの地に居座ったことが一番の原因!この事件の元凶はシロヤなのですよ!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 勝ち誇ったように語り続けるレーグ。

「シロヤ!聞き入るな!」

「お兄様は元凶なんかじゃないもん!」

「シロヤ様は私達をお救いくださった方です!そのような事実はあるわけがありません!」

 レジオン、ローイエ、クピンもレーグを否定しようと次々に口を開く。しかし、シロヤはそれを受け入れようとした。

「俺の・・・せい・・・。」

「シロヤ!」

「そうですよ!先程そこのメイドが予知したバスナダ崩壊の未来を作り上げたのは、バスナダを救った英雄ということです!皮肉なものですな・・・ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 膝から崩れ落ちるシロヤ。

「俺が・・・バスナダを・・・壊したのか・・・。」

「違う!シロヤはこの国を救ったのだ!」

「また現実から逃げるのですか?そうやって逃げた結果、シアン様、あなたはシロヤを崩壊させてしまったのですよ!ローイエ様がプルーパ様を殺しかけたのですよ!」

「!!!!!」

 レーグの巧みな話術は、シロヤだけではなくシアンとローイエをも飲み込んだ。事実、シアンもローイエも現実から逃げていた。事実を認めずに、シアンは国を動かし、ローイエは武器を拾ったのだ。

「シアン様!ローイエ様!お気を確かに!」

「レーグ!!!てめぇ・・・!」

 殴りかかろうと扉に向かって拳を向けるレジオン。




「待ってください!」




 背後から声がした。振り向いたレジオンの先にいたのは、緑髪の青年だった。

「リ!リーグン!」

 ゆっくりと歩み寄るリーグン。牢屋の前に立つと、リーグンはゆっくりと口を開いた。

「お父様・・・。」

「ヒヒヒヒヒ!計画遂行を邪魔してくれた約立たずの息子が何の用かな?ヒヒヒヒヒ!」

 リーグンは表情を変えずに語り出した。


「お父様・・・。お父様はお父様なりにこの国を救いたかったのでありますね。間違ったやり方ではありましたが、お父様の気持ちも私達と同じものだと思っています。

 だから、私達は現実から逃げません。もし本当にシロヤ様が元凶だとしても、私達は一生シロヤ様に使え、共に戦います。

 お父様が果たせなかったこの国の未来を、必ずこの手につかんでみせます。」


 リーグンはそれだけ言うと、頬に涙を流しながら扉を離れた。

「・・・シロヤ様。」

「リーグン・・・様・・・。」

 リーグンはシロヤを見ながら、頬の涙をぬぐわずに口を開いた。

「信じることは一番の力になります。ですから・・・私達を信じてください。」

「・・・!」

 シロヤは、リーグンの手を強く握った。

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