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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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偽物

 シロヤとシアンは王室から離れていった。

「シアン様!どこに逃げればいいのですか?」

「訓練所に向かうぞ!あそこなら隠れ場所も多い!」

 二人は訓練所に向かって走る。その道には、何人もの兵士達が王室の方に向かって走っていっていた。

 走る兵士もいなくなった頃に、シロヤとシアンは訓練所にたどり着いた。


「!」


 訓練所の中の兵士達は一人もいなくなっていて、その中央には兵士ではない人が立っていた。

「シロヤ様!」

 立っていた人は、入ってきたシロヤの名前を呼んだ。

「プ!プルーパ様!」

 訓練所の中央に立っていたのはプルーパだった。プルーパはすぐさまシロヤに駆け寄った。

「シロヤ様!王室に現れた戦士は凄腕の戦士です!ここは兵士達に任せて逃げましょう!」

「逃げるって・・・!見捨てるつもりですか!?」

「王族が生き残れば何とでもなります!兵達の犠牲を無駄にしてはいけません!」

「・・・。」

 逃げることを促すプルーパの姿を見て、シロヤは違和感を覚えた。

 何かがおかしい。普段のプルーパは、人を犠牲にしてまで助かろうなんて思うだろうか?

 目の前のプルーパにだんだんと違和感を募らせていく。

「とにかく早く逃げるわよ!ほら!」

 プルーパが差し出した手を、シロヤは違和感そのままに握った。


「ッ!!!」


パシン!


「シ・・・シロヤ・・・様・・・?」

 手を握った瞬間に襲ってきた強烈な悪寒に、シロヤは思わずにプルーパの手を弾いた。

「どうしたのですか?シロヤ様。」

 何をされたかわからない表情を浮かべるプルーパに、シロヤは剣に手をかけて叫んだ。

「プルーパ様は・・・俺に様なんてつけない!」

 シロヤはすかさず剣を抜こうとしたが、それは突如の乱入によって止まった。


ヒュン!


「!!!」

 シロヤが剣を抜こうと力を込めた瞬間、プルーパの頭に向かって何かが飛んできた。その何かはまっすぐに飛んで、そのままプルーパの頭に突き刺さった。

「・・・痛いわねぇ・・・!」

 頭に突き刺さった剣を軽く撫でるプルーパ。その表情は無機質で、まるで機械のような表情だ。

「お前・・・何者だ!」

「・・・仕方ないわね・・・特別に正体を明かしてあげるわ。」

 そう言うと、プルーパの偽物はゆっくりと後ろに下がってくるくると回り出した。

 光の粒を放ちながら回り続けるプルーパの偽物は、次第にプルーパの姿が消えていき、見たこともない女性の姿が現れた。

 やがてプルーパの姿が完全に消えた時、そこに立っていたのは青い長髪の女性だった。

「初めまして。私はルーブ。国王シロヤ、あなたを殺しに来ました。」

 そう言うと、ルーブは背中から何かを取り出した。

「!!!」

 ルーブの背中から現れたのは、巨大な斧だった。斧は銀色だったが、その刃は血のように赤く染まっていた。

「さぁ・・・死んでもらいましょうか!」

 ルーブは斧を振り下ろそうと力を込めた。


「シロヤ君!」


キィィィン!


「くっ!」

 突如よろめくルーブ。

 突如飛来してきた何かが、ルーブの持っていた斧を弾いた。

 地面に落ちた物を見ると、そこにあったのは見覚えのある短剣だった。

「シロヤ君!大丈夫!?」

 訓練所の入り口から響く声。それは紛れもなく本人だった。

「プルーパ様!」

「プルーパお姉様!」

 シロヤとシアンに近づいて、二人に向かって真剣な表情でプルーパが口を開いた。

「シアン!今すぐシロヤ君を牢屋の方に連れていって!」

「牢屋!?何故牢屋なのですか!?」

「行けばわかるわ!」

 プルーパがシアンの背中を叩く。そして、シアンはシロヤの手を握った。

「・・・シアン様?」

「シロヤ、行こう。」

 不安そうな表情になるシロヤに向かって、プルーパは前を向いたまま言った。

「シロヤ君。男なんだからシアンを守ってあげなさい!そんなんじゃ尻に敷かれちゃうわよ?」

 微笑むプルーパ。さらに続けるように、シアンはシロヤの顔を見ながら言った。

「シロヤが私を守ってくれるように・・・私もシロヤを守りたい。」

 それを聞いたプルーパは、小さく微笑んだ。

「ふふふ、シロヤ君は守るより守られる方があってるかもね。」

 プルーパとシアンが軽く微笑むのを見て、シロヤはシアンの手を握った。

「いいえ・・・守ってみせます!」

 決意を秘めた表情で、シロヤは再度シアンの方を見た。

「シアン様、行きましょう!」

 シアンの手を引いて、二人は牢屋に向かって訓練所を出た。


「あなた、他人を気にかけるなんてずいぶんと余裕ね。」

 嘲笑うように斧を向けるルーブ。それに対して、プルーパも同じように短剣を向けた。

「あなたこそ・・・待っててくれたみたいね。」

 同じく嘲笑うように言った瞬間、プルーパは短剣を投げた。

 しかし・・・。


「あ・せ・ら・な・い。」


「!」

 プルーパの投げた短剣は、空中で激しく亀裂が走ったのち、そのまま崩れ落ちた。

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