再来
「国王様!ご機嫌うるわしゅう・・・!」
「え?あぁ・・・どうも・・・。」
現れたのは、奇抜な格好をした旅芸人だった。両手に大道芸用のお手玉を持ちながら頭を下げていた。
「新たなる国王様の噂は各地に広まっております!大変勇敢な方だと聞き及んでおります!」
「えぇ!もう広まっていたのですか!?」
固まるシロヤに、旅芸人はさらに頭を下げた。
「この度は私の大道芸を新国王のシロヤ様に見ていただこうと思い、この場にやって来た次第でございます!」
「え・・・?あぁ・・・じゃあ、お願いします。」
すると、旅芸人が立ち上がって手に持っていたお手玉で芸を始めた。
芸は単純にお手玉をクルクルと回しているだけだったが、時間が経つにつれてどんどんと回すスピードが速くなっていく。
やがて、お手玉が見えなくなるほどにスピードが速くなった時、旅芸人が動いた。
「・・・!」
旅芸人は急にお手玉をやめて、持っていたお手玉をシロヤに向かって投げつけた。
「ッ!」
何事かと思った瞬間、お手玉が空中が剣に変化した。
剣はまっすぐにシロヤに向かって飛んでいく。避けようとするが、剣の方がわずかに速かった。
「!!!」
キィン!
響く金属音。何事かと思い見てみると、飛んできた剣が勢いを無くして床に落ちていた。そしてその横には、剣を弾いたと思われる物―――矢が落ちていた。
「・・・!」
驚いて見てみると、シロヤの横にいたシアンが弓を構えていた。そしてその表情は、見たこともないほどに殺気立っていた。
「二度も同じ手は食らわぬぞ!!!」
シアンはさらに矢を放つ。まっすぐに飛んでいく矢を、旅芸人はお手玉で弾いた。
「まさかお前・・・あの時のガキか!?」
「貴様の顔・・・忘れてはおらぬぞ!」
それを聞いて、シロヤも思い出したように声を上げた。
「まさか・・・お前シアン様の!」
「何でてめぇが知ってるんだぁ!?」
驚く旅芸人。
そして、旅芸人は後ろに飛び退くと同時に奇抜な服を脱いだ。
「ちっ!顔がバレてるんじゃしょうがないな!」
旅芸人はすぐさま服の下から剣を取り出して構えた。それに合わせて、シロヤとシアンも戦闘体制に入る。
「お前・・・何者なんだ?」
「知っても意味ねぇだろ?だってここで死ぬんだからなぁ!」
旅芸人は持っていた剣をシロヤに向かって投げつけた。高速で飛来してくる剣を受けようと構えるシロヤ。
「シロヤ様!!!」
突如聞こえる叫び声。叫び声と共に、飛んでくる剣に向かって強い風が吹いた。その風によって、飛んできた剣は軌道がそれて城の壁に突き刺さった。
「ちっ!誰だ!?」
旅芸人が振り向くと、強い風を起こした人物が旅芸人に向かって構えていた。
「バ!バルーシさん!?」
構えていたのはバルーシだった。剣をまっすぐに旅芸人に向けて立っていた。
「ハ!真空波を剣で起こせる奴がまだいたとはな!」
高笑いする旅芸人。バルーシは、その奥にいるシロヤとシアンに向かって叫んだ。
「シロヤ様!シアン様!ここは私に任せて今すぐ避難を!」
「バルーシさん・・・。」
心配そうに呟くシロヤの手を、シアンはそっと握った。
「大丈夫だ・・・バルーシを信じよう・・・。」
「・・・・・・はい!」
シロヤとシアンは同時に走っていった。
「あぁ?逃がすと思っているのか!?」
旅芸人はすぐさま剣を投げようと構えた。
「させるか!」
「ぐぅ!」
旅芸人が剣を投げるよりも速く、バルーシは旅芸人の腕を封じた。今までのバルーシよりもはるかに速くなっている。
「バルーシさん!」
「すぐに後を追います!」
バルーシはシロヤとシアンに向かって微笑んだ。シロヤとシアンはその微笑みを見て、安心したように走っていった。
「てめぇ・・・よくもやりやがったな!」
旅芸人は持っていた剣でバルーシに斬りかかろうとが、バルーシはすぐさま自分の剣でそれを受け流す。
さらに斬りかかろうとするが、全ての剣戟をバルーシは受け流した。
「てめぇ・・・相当できるやつみたいだな。名を聞いておこうか。」
「聞いてどうするんだ。」
「あぁ?流れだよ流れ。いいから名乗れ。」
「・・・バルーシだ。」
それを聞いた旅芸人は、すぐさまバルーシから離れて剣を構え直した。そして、剣を持っていない方の手を背中に持っていった。
「ハッハッハ!覚えたぜバルーシ!貴様を俺!ドレッド様のライバルにしてやるぜ!」
「よくわからん・・・。」
そして、ドレッドはすぐさま持っていない方の手を勢いよく振った。
その手には、持っていた剣と同じ剣が握られていた。
「ハッハッハ!ドレッド様の最強二刀流!特と味わいやがれ!」
「・・・馬鹿か・・・。」
バルーシは、日本の剣を構えて走ってくるドレッドに向かって構えた。