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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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覚醒

 彼女はそこに佇むだけだった。

 それは、彼女が考えることを放棄したためである。何も考えず、何もせず、ただそこに立ち尽くしているだけ。それはさながら無機物の置物のようであった。

 彼女は現実からここに逃げてきた。ここは何もない虚空のような空間。

 それは逆を言えば、彼女を縛るもの、取り巻くもの、その全てがない空間だということだ。

 絶対的な安全と孤独は同じものなのだ。何もなければ何も傷つけない。何もなければ自分も傷つかない。後に残るのは、無機物のような自分の体だけ。

 しかし、彼女はそこにいる。彼女という存在は決して消えていない。ただそれだけで青年は満足だった。

「・・・。」

 彼女にとって、それは理解しがたいことだった。

 彼は置物なんかを好きになるのだろうか?

 彼女はただそれが何を意味しているのか考えていた。

「・・・。」

 放棄したはずの理性が戻り、彼女は意思を取り戻した。

 しかし、彼女は青年を理解することはできなかった。

 彼は何故私を見てくれているのだろう。

 彼は何故私を見て泣いてくれているのだろう。

 彼は何故私のために戦っているのだろう。




 彼は何故私に好きと言ってくれたのだろう。




 彼女の体がピクリと動いた。

 まるでパズルを組み立てるように、彼女は自分の意思で彼女を作り上げていく。

 それは、彼女を取り戻そうと戦ってくれている人のため。彼女を好きと言ってくれた人のため。

 完成されていく彼女という名のパズル。そして、青年は最後の一ピースを彼女に渡した。




「俺はシアン様の全てを愛します!」




 最後の一ピース、それは突然すぎる訪れだった。

 彼女の目から流れ落ちる最後の一ピース―――涙。

 完成した彼女。そして彼女は、心の中で叫んだ。




「シロヤ!!!」




 叫んだ時、彼女―――シアンは弓矢を構えていた。

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