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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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幸福

 金髪の男性の望みを聞き、国王は大きく頷いた。

「うむ、ではそなたの弟達を兵団に迎え入れよう。」

「ありがたき幸せ!」

 頭を下げる男性に、国王はさらに言葉をかけた。

「ではそなたを兵団長としてここ任命しよう。」

 微笑みながら、さらに言葉を続けた。

「頼りにしておるぞ。――――。」


「ぐぁぁ!」


 シロヤは頭を押さえてうずくまった。

 急に訪れた激しい頭痛。そして途中で途切れた国王の言葉。

「何なんだ・・・言葉が・・・。」

 それはまるで、その言葉が世界から拒絶された言葉のように。

 まだきしむ頭を押さえながら立ち上がると、すでにそこに人はいなくなっていた。

「どうなってるんだ・・・。」

 ふらふらになりながら周りを見渡す。

 すると、体がシロヤの意思とは関係なく動き始めた。

「な・・・何なんだ・・・。」


 シロヤはずっと歩き続けていた。勝手に動き続けるシロヤの体は、いつの間にか城を出て砂漠を歩いていた。

 ふらふらになりながら砂漠を歩いていると、次第に空の色が変わっていることに気がついた。

「何だ・・・何がどうなっているんだ・・・。」

 灰色に染まっていく空は、まるで不吉なことを呼び込むかのように暗い。そんな空を見上げながら、シロヤはひたすら歩き続けた。

 そしてたどり着いたのは、城の入り口の反対方向の場所だった。

「あれは・・・国王とさっきの・・・。」

 さらにシロヤは、空に何かが浮いているのに気づいた。

「あれは・・・人だ・・・!」

 国王と金髪の兵団長が身構えて見上げる空の先に、灰色に染まった空を抱くかのように人が浮いていた。そしてその傍らにいたのは・・・。

「シアン様・・・だけ・・・?」

 浮いている人を見上げているのは、シアンだけだった。

「国王様!」

「やはり現れたか・・・バスナダの悪魔め・・・。」

 吐き捨てるように国王が言うと、浮いている人が左手を振り上げた。

「マズイ!シアン様!お逃げください!」

 左手が振り下ろされると、国王達の前の地面がまっぷたつに割れた。

「このままでは・・・バスナダが奴らの手に落ちてしまう・・・!」

「国王様・・・。」

 金髪の兵団長が一歩前に出た。

「・・・これからは、若い世代の人達が時代を紡がなければなりません・・・。」

「・・・そうだな・・・。」

 同じく国王も一歩前に出ると、二人は横に並びあった。

「国王様と共に戦えたこと・・・この国のために死ねること・・・誇りに思います。」

「・・・私もだよ。」

 二人は浮いている人に向かって手をかざすと、二人の手のひらが光を放ち始めた。

「シアン!」

 国王がシアンに向けて叫んだ。その表情は笑っていた。

「・・・強く生きろ。」

 それだけ言うと、手のひらの光がさらに強くなって、バスナダを包み込んだ。

 真っ白な光が全てを包み込み、そこでシロヤの見ていた風景は完全に消えてしまった。

 ただ残ったのは、上下左右のわからない真っ白な空間だけだった。

「これが・・・シアン様の記憶なのか・・・。」

 そう呟いた瞬間、シロヤの頭に声が響いた。




「願わくは・・・シアンが最高の幸せの中に生きていけますように・・・。」




「!」

 その時、まるでガラスが割れるように真っ白な空間が砕けていき、真っ黒な空間が姿を見せた。

「うわぁぁぁ!!!」

 真っ白な空間が砕け散った時、真っ黒な空間にシロヤは落ちていった。


・・・・・・・・・・・・・・・。


 真っ黒な空間に落ち続けるシロヤは、視界の先に何かを捕らえた。

 それは光輝く何かであり、シロヤはそれに向かってまっすぐと落ちていっていた。

「あれは・・・。」

 やがてその何かにたどり着くと、シロヤはその何かの上に着地した。

「ここは・・・?」

 真っ暗な空間の中にそびえ立つ塔のような何かの上に、シロヤは立っていた。

 そのシロヤの視線の先に、シロヤは再び何かを捕らえた。ゆっくりと近づいていくと、それが鮮明に見えてくる。

「!!!」

 鮮明に見えた何かは、中空を見るかのように立ち尽くしていた。そしてそれは、シロヤが一番会いたいと強く願った人物だった。

 シロヤは自分の持つ最高の大きさで叫んだ。


「シアン様!!!!!」


 シロヤはシアンに向かって駆け出した。早くシアンに会って話をしたかった。謝りたかった。そして、告白をしたかった。

 しかし・・・。

「・・・。」

「シアン・・・様・・・?」

 そこにいたシアンは、まるで脱け殻のようになったシアン、シロヤが見ていたシアンとは違うシアンの姿だった。

 何も考えず、何もせず、ただそこにいるだけの存在となったシアン。

「シアン様・・・シアン様!」

 呼びかけても反応しない。シロヤに絶望が襲った。

「そんな・・・シアン様・・・。」

 涙を流すシロヤの先に、立ち尽くすシアンの影が伸びていた。

「!」

 その時、影がシロヤの目の前で起き上がった。

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