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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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過去

「ここってやっぱり・・・。」

 この空間が何なのか、そして自分が見た映像。それが一体何なのか、シロヤはわかり始めていた。

「ということはやっぱりここは・・・旧バスナダ国家、砂の竜王時代のバスナダ・・・。」

 話を聞いていると、度々登場するシアンは見るたびに成長していっている。つまりこれは、シアンの見た過去の映像。

 しばらくすると、再びシアンが現れた。先程よりも成長しているということは、先程から一年以上経っているということになる。

「お母様!」

「シアン・・・。」

 シアンが女性に話しかけると、女性はシアンを抱いて涙を流した。

「シアン・・・!あなたは私の子供よ・・・!絶対に・・・!」

「・・・うん!」

 抱き合って泣くシアンと女性。

「あの女性って・・・シアン様の母親・・・?」

 呟くと、再びシアンと女性は消えた。

 そしてまた新たに現れたのは、また一つ成長したシアンと母親の女性、そして玉座に座る国王の姿だった。

「国王様!」

 兵の一人が国王の前で膝まずいた。

「謁見を希望している旅芸人の者が来ております。」

「通せ。」

 兵はすぐさま王室を出ていく。しばらくすると、奇抜な格好をした奇妙な人物が王室にやって来た。

「国王様!ご機嫌うるわしゅうございます。」

 やけに甲高い声が部屋に響くと、旅芸人はすぐさま持っていた玉を懐にしまった。

「他国からの者か。我がバスナダに何の用だ。」

「我が・・・ねぇ。」

 旅芸人は小さく呟くと、急に高笑いを始めた。不気味な笑い声が王室に響き渡る。

「まぁあれですよ・・・砂が呼んでいると言いましょうか。」

「何・・・?」

「私達の大将はあなたのやり方に不満があるようですよ。」

 不気味な空気が王室を取り巻いている。旅芸人から発せられるその空気は、不快とは違う嫌な空気だった。

「何が言いたい・・・。」

「単刀直入に言うとですね・・・。」




「死んでください。」




 空気が揺れた。

 旅芸人はすぐさま懐から玉を取り出して国王に向けて投げつける。その玉は空中で鋭利な刃物となって国王に放たれた。

 国王もすぐさまその場を離れようとしたが、僅かに刃物の方が速かった。

「!!!」

 刹那、肉を刺し貫いたような嫌な音が響き渡る。

「・・・!」

 その場にいた全員が固まった。目の前に起きた現実を、シロヤが、旅芸人が、シアンが、そして国王が見ていた。

「あぁ・・・!」

 情けない言葉を漏らす国王の目の前には、国王をかばって刃物の餌食となった女性の姿があった。

「い・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 悲鳴のようなシアンの叫びが響き渡る。

「ちっ!」

 旅芸人はすぐさま身を翻して窓に向かって走り出した。そしてそのままガラスを突き破って城から出ていってしまった。

「イリーボア・・・!イリーボア!イリーボア!!!」

 国王はすぐさま女性―――イリーボアを抱いて叫び続ける。

「・・・あなた・・・。」

 イリーボアは小さく国王を呼ぶと、その頬にそっと手を置いた。

 そして・・・。


「・・・・・・・・・。」


 優しく国王に口づけをすると、笑顔を浮かべながらゆっくりと目を閉じた。

「・・・イリーボア・・・イリーボアァァァァァ!」

 泣き続けるシアンと共に、国王はイリーボアの体を抱きながら叫んだ。


「・・・。」

 しばらくすると、その映像もシロヤの目の前から消え去って、新たな映像が現れた。

 そこには、喪服を来たプルーパとシアン、そして赤ちゃんを抱いた国王の姿があった。

「あの赤ちゃん・・・ローイエ様か。」

 ローイエが過去を話してくれた時に母親の話が出なかったのは、母親であるイリーボアがローイエを産んだのは、旅芸人によって殺される一ヶ月だったからだ。

 喪服を来たシアン達は消え、再び国王とシアン達が現れた。

「ついに始まるか・・・。」

 国王はそう呟くと、近くにいた兵の方を向いた。

「レジオンを呼べ。予定通り、今から兵団長の受け継ぎを始める。」

「はっ!」

 兵はすぐさま王室を出ていく。

 しばらくしてから現れたのは、レジオンと金髪の男性だった。

「レジオンよ、お前は私が王位に就いた時から世話になっていたな。これからは戦術顧問として役に立ってもらいたい。」

「ありがたきお言葉!」

 頭を下げるレジオン。次に国王は、そのレジオンの横にいる金髪の男性に話しかけた。

「そなたに新たな兵団長を務めてもらいたい。」

「はい!国王様のご期待に応えられるよう、粉骨砕身の覚悟で務めさせていただきます!」

 敬礼をする男性に微笑みかけると、国王はさらに言葉を続けた。

「そなたの望みを一つ叶えよう。何でも申せ。」

 そう言うと、男性は迷うことなく言った。

「どうか、二人の私の弟を兵団に入団させていただきたいのです。」

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