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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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少女

 上下の感覚もなく、右も左も何も見えない暗闇。自分が今どこを歩いているのか、自分は何の上を歩いているのか。それすらもわからない暗闇を、シロヤは歩いていた。

「ここが・・・シアン様の心の中・・・?」

 何もわからない不安定な暗闇が、今のシアンの心の中なのだろうか。

 突如、シロヤの目の前が白く光始めた。

「これは・・・道・・・?」

 突如現れた白い光の先に、小さな道があった。段々と強くなっていく道の光に向かって、シロヤはゆっくりと歩き出した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 白い光が止んだ時、シロヤは見知った場所に立っていた。

「ここは・・・シアン様の部屋だ。」

 さっきまでいたシアンの部屋の隅に、シロヤは立っていた。

 しかし、さっきまでいた部屋と今の部屋は違った。置いている物や本棚の配置が全く違うのだ。

「・・・!」

 突如、閉まっているドアの向こうから少女の声が聞こえた。

「マズイ・・・!」

 隠れようと周りを見渡し始めた瞬間、ドアが開けられた。

「シアン〜、いいこ〜いいこ〜!」

 入ってきたのは、赤ちゃんを抱いた少女だった。

 シロヤはその少女を見た瞬間、驚いたように叫んだ。

「プルーパ様!?」

 入ってきた少女はプルーパだったが、年齢が一回り以上違っていた。シロヤの腰ぐらいまでの身長しかないプルーパは、部屋の大きなベッドに抱いていた少女をゆっくりと寝かせた。

「はやくおおきくなって〜いっしょにおどろうねぇ〜!」

 頭を撫でていると、赤ちゃんは次第に眠りについていった。それに合わせて、添い寝をしていたプルーパも寝息を立て始めた。

「・・・まさか・・・あの赤ちゃんって・・・。」

 そうシロヤが呟いた瞬間、赤ちゃんとプルーパは煙のように消えてしまった。

「!?」

 気づくと部屋にはシロヤしかいなかった。

 何が起こったのかわからず、シロヤは周りをキョロキョロと見渡した。

「シアン・・・。」

「!」

 背後から声が聞こえた。振り向くと、窓側に少女を抱いた女性が立っていた。

「シアン、見える?」

「みえる〜!」

 少女は指を指しながら景色を見ていた。そんな少女を、女性はギュッと抱いて言葉を続けた。

「シアン、あなたは私の子供・・・強く生きてね・・・。」

「くも〜!」

 空を指差しながらはしゃぐ少女を、女性は涙を流しながら頭を撫でた。


 しばらく見ていると、女性はさっきと同様、煙のように消えてしまった。

「これって・・・もしかして・・・。」

 そう呟いた時、ベッドの方から再び声が聞こえた。

「シアン、あなたももう三歳、武道を習う時期よ。」

「ぶど〜?」

 女性は少女の頭を撫でて笑った。

「そうよ。プルーパお姉ちゃんがいつもやってるの見てたでしょう?」

「おねえちゃんみたいにおどるの〜?」

「いいえ、あなたが習うのは弓矢って言うのよ。」

「ゆみや?」

 女性は少女の手を握って、ゆっくりと部屋を出ていった。それに合わせて少女もゆっくりと歩き出して部屋を出た。

「・・・。」

 シロヤは女性を追って部屋を出た。部屋を出た瞬間、城の廊下の向こうに、シアンらしき影が見えた。

「シアン様!」

 影を追って走ると、たどり着いたのは玉座の前だった。そこには、部屋にいた女性と少女、そして玉座に男性が一人座っていた。

「おかあさま!わたしね!きょうね!まとのまんなかにあたったんだよ〜!」

「あら、すごいじゃない!よくやったわね、シアン。」

 女性は少女の頭を撫でると、少女は笑顔のまま口を開いた。

「わたしね!もっとうまくなってね!おねえさまもおかあさまもおとうさまもまもれるようになるね!」

「うん、期待してるわよ。シアン。」

 少女を抱き包む女性。シロヤはそれをずっと見つめていた。


「国王様!」


 突如、はっきりとした声が聞こえた。

 入ってきたのは、鎧に身を包んだ兵士だった。その兵士も、シロヤは見覚えがあった。

「あれは・・・レジオンさん!」

 プルーパと同じく一回り以上年齢が違うレジオンは、玉座に座る男性、国王に向かって膝まずいた。

「街の方でまた、減税を訴えるデモが始まりました。」

 それを聞いた国王は、ゆっくりと立ち上がった。

「鎮静に向かえ。兵団を使っても構わぬ。」

「はっ!」

 レジオンはすぐさま走っていった。

 その背中を見ながら、シアンを抱いていた女性が国王に話しかけた。

「やっぱり・・・本当のことを話した方がいいんじゃないかしら?」

「・・・そんなことすれば、国は混乱してしまう。」

 国王は再びゆっくりと玉座に座る。女性は国王を見つめながら悲しい表情を浮かべていた。

「だけど・・・。」

「いいんだよ。国を守るためには誰かが悪役にならなければならない。その悪役が僕だってことでいいじゃないか。」

 国王が女性に向かって笑うと、女性もそれに答えるように笑った。

 そして再び、国王も女性も少女も消えてしまった。

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