表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
61/156

理由

「方法・・・?」

 突然の発言に、その場の視線が全てリーグンに集まった。

「しかし・・・これには未知数の危険が伴う可能性があります・・・。」

 そこでリーグンは言葉を止めた。リーグンにとっても言いづらいことであるため、表情をどんどんと険しくしていく。

「・・・どんな方法なんですか?」

 一番最初に聞いたのはシロヤだった。リーグンはしばらく黙った後、決心したかのように口を開いた。

「・・・シアン様は心の中をさ迷っている状態にあります。ならば戻す方法は一つ。さ迷っているシアン様を見つけることです。私の魔法を使えば、シアン様の心の中に一人だけならば送ることができます。」

「じゃあ!」

「・・・しかし・・・。」

 シアンを救える方法を聞いて、シロヤは笑顔を見せた。

 対してリーグンはさらに表情を険しくした。シロヤにとっては希望だが、リーグンは非常に危険な賭けであることを理解していたため、希望とは呼べずにいた。

「シアン様の精神状態は非常に不安定です・・・心の中がどうなっているのかわかりません。」

 安定している心を持つ人は、人に危害を加えることはない。それは心でも同じことである。

 しかし、不安定な心と言うのは危険であり、場合によっては人をも殺しかねない。それは心の中でも同じことである。リーグンの心配はそこにあったのだ。

「非常に危険です・・・何が起こるか想像がつきま」

「俺が行きます!」

 リーグンの言葉を途中で遮るシロヤ。その場の全員がシロヤの方を向いた。

「シロヤ様、お気持ちはわかります。しかし・・・何が起こるかわからない故に」

「だからといって何もしないわけにはいきません!」

 シロヤは立ち上がって拳を強く握り、強い決心を顔に浮かべていた。

「このままではシアン様は目覚めないのなら、例え危険でも賭けにのります。」

 視線を一切リーグンからそらさず、シロヤは本気の言葉を口にした。その心に嘘偽りがないのはリーグンがよく知っていた。

「・・・お兄様。」

 突如、ローイエが口を開いた。

「お兄様・・・自分が嘘ついたせいだからお姉様を助けにいくの?」

「・・・確かにそれもあります。」

 シロヤのその言葉には、シアンに対する罪滅ぼしの意味も込められていた。

 しかし、シアンを助ける理由はそれだけではなかった。もちろんそれは、罪滅ぼしよりももっと単純且つ明確な理由だ。

 シロヤはその想いを初めて口にした。

「でもそれだけではありません・・・シアン様のことが・・・好きだからです。」

 少し頬を赤らめ、シロヤは初めて口にした。

 バスナダに来てから、シアンと出会った時からシロヤが抱いていた想い。

 シロヤがシアンを助けにいく一番の理由であり、シロヤを動かす一番の原動力でもあった。

「!!!」

 ローイエは最高の笑顔を浮かべた。それはローイエが一番聞きたかった言葉であり、シロヤが一番言うべき言葉でもあった。

「うん!」

 笑顔のままローイエは頷いた。それに続き、周りにいた人達も言葉を続ける。

「ようやく白状しやがったな!シロヤ!」

 レジオンはシロヤに近づき、笑いながら軽く肘をシロヤの胸に当てた。

「その気持ち、シロヤさんらしいですよ!」

「眠りについたお姫様の目を覚まさせるのは王子様の役目よ。」

 キリミドとフカミも笑顔でシロヤを激励した。

「・・・。」

 笑顔のまま、シロヤはクロトの方を見た。クロトは小さく鳴いて頷いた。それは、"いってらっしゃい"とクロトが言っているように思えた。

「うん・・・クロト、行ってきます。」

 シロヤは軽く伸びをしてリーグンの方を向き直り、目で合図を送る。

「待てシロヤ!」

 急に声をかけたのはレジオンだった。レジオンは、シロヤに向かって剣を放り投げた。シロヤは剣をキャッチして見てみると、それは自分の剣だった。

「レジオンさん・・・ありがとうございます!」

 レジオンに頭を下げ、シロヤは再びリーグンに合図を送った。

 合図を受けたリーグンは、杖を取り出して詠唱を始めた。

「お兄様。」

 詠唱を待つシロヤに、ローイエは声をかけた。

 笑顔のまま、ローイエは自分が言いたかった言葉をシロヤにぶつけた。

「お兄様!私も・・・私もお兄様が大好きです!」

「ローイエ様・・・。」

「帰ってきたら私とお姉様達と一緒のお布団で寝ようね!」

「・・・はい!」

 ローイエの告白に、シロヤは笑顔で答えた。

「えへへ!」

 少し頬を赤くしたローイエは、照れを隠すように笑った。

「シロヤ様!準備が整いました!」

 リーグンの言葉に、シロヤは剣を強く握りしめ、表情を引き締めた。

「シアン様・・・待っていてください!」

 シロヤは眠っているシアンに言葉をかけた。

 その瞬間、シロヤの体を光が包み込み、やがて光は柱に形を変えた。柱が強い光を放つと、柱はシロヤを離れてシアンに向かって降り注いだ。

 光が止んだ時、シロヤはそのまま前のめりに倒れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ