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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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彷徨

「俺に会いたい人って・・・誰なんだろう・・・。」

 城門までの長い廊下を、シロヤとローイエは並んで歩いていた。

「お兄様・・・気を付けようね。」

 心配そうにローイエが呟いた時、二人は城門前に到着した。

 そして、シロヤが城門に手をかけた時、城門の向こうから鳴き声が聞こえた。

「・・・!」

 その鳴き声を聞いた瞬間、シロヤは動きを止めた。まるでシロヤだけ時間が止まったように。

 その鳴き声は、シロヤが小さい頃から聞いていた鳴き声。そして、シロヤの心を晴らす鳴き声でもあった。

 いてもたってもいられず、シロヤは城門を開いて叫んだ。

「クロト!!!」

 城門の先に立っていたのは、紛れもなく、滝でシロヤを助けて落ちたクロトだった。

「クロト!!!」

 シロヤは駆け出してクロトに抱きついた。クロトも嬉しそうに頬をすり寄せている。

「クロト・・・!クロト・・・!!!」

 クロトを抱きながら、シロヤは涙をどんどんと溢れさせていく。それを見ていたローイエ、そしてフカミとキリミドも涙を流していた。

「お兄様・・・!」

「クロトさん・・・シロヤさん・・・会えて・・・よかったです・・・!」

「・・・。」

 しばらく四人と一頭は、再会を喜ぶ涙を流し続けた。


「フカミさん、キリミドさん、本当にありがとうございます!」

 フカミとキリミドに全力で頭を下げるシロヤ。

「再会できて本当によかったです!シロヤさん!」

「もう離れ離れにならないようにしなさいよ?」

 フカミは照れ隠しをするかのようにそっぽを向き、キリミドは涙を流しながら笑った。

「えへへ!お兄様!」

 いつの間にか、ローイエが満面の笑顔でシロヤに抱きついた。

「お兄様もクロト様も帰ってきたから〜?」

「そうですね!後は・・・シアン様だけですね!」

 ローイエの笑顔に答えるように、シロヤも満面の笑みで返した。

 その時・・・。


「シロヤ様!ローイエ様!」


 城の方から、叫び声と廊下を走る音が聞こえた。

 後ろを振り向くと、リーグンが立っていた。

その表情は険しく、ひどく焦っていた。

 ただ事ではないことを感じ取ったシロヤの顔が自然と締まる。

「どうしたんですか!?リーグン様!」

「早く来てください!シアン様が・・・シアン様が・・・!」

 それを聞いた瞬間、シロヤは地面を蹴って全速力でシアンの部屋に走っていった。

「お兄様!」

「シロヤ様!」

 ローイエ、リーグン、そしてクロト、フカミ、キリミドも、シロヤを追って城に走っていった。


「シアン様!」

 シロヤがシアンの部屋に着くと、シアンの部屋にいたのはレジオンだけだった。そしてそのレジオンの表情は、リーグンと同じく険しく焦っていた。

「シロヤ・・・。」

 レジオンがシロヤに声をかけた瞬間、シロヤは部屋に入ってシアンのベッドを見た。

「・・・シアン・・・様・・・?」

 ベッドに横たわるシアン。その目は閉じられていて生気を感じ取ることが出来ない。全く動かないそれは、さながら死体のようだった。

 膝から崩れ落ちるシロヤに、レジオンは言葉を続けた。

「大丈夫だ・・・シアンはまだ生きている・・・ただ・・・。」

「そこからは僕が説明します。」

 いつの間にか、リーグン達はシアンの部屋の前に立っていた。リーグンはゆっくりとシアンに近づいた。

「リーグン様・・・シアン様は一体・・・。」

「大丈夫です。シアン様は眠っているだけです。」

 しかし、リーグンは表情をさらに暗くした。

「ただ・・・今のシアン様は心を無くしている状態にあるんです。」

 リーグンはさらに続けた。

「シアン様は強い現実逃避のため、心の奥深くに逃げ込んでしまったのです。普通の人ならしばらくすれば戻ってこれるのですが・・・。」

 そこでリーグンは言葉をつまらせた。

「・・・普通の人ならって・・・どういうことですか?」

「・・・シアン様は今・・・心の中をさ迷っている状態にあるんです。万が一・・・このままさ迷い続けてしまえば・・・シアン様が目覚めることは・・・。」

 リーグンは再び言葉をつまらせた。

 シロヤはすぐさまシアンに駆け寄り、シアンに向かって全力で叫んだ。

「シアン様!!!俺です!!!シロヤです!!!」

 涙を流しながら、シロヤはシアンに向かって何度も叫んだ。

「シアン様!!!目を覚ましてください!!!」

 何度も何度もシロヤは叫んだ。しかし、シアンは一向に目を覚ます気配はなく、無機物のようにシロヤの腕の中で佇んでいた。

「シアン様!!!シアン様!シアン様・・・!」

 次第に声に力が無くなっていき、いつの間にか声は嗚咽に変わり始めていた。

「うぅ・・・シアン・・・様・・・!」

 力無く泣き続けるシロヤ。

 そのシロヤに一番最初に声をかけたのは、リーグンだった。

「・・・シロヤ様。」

 さっきのような暗い口調ではなく、はっきりとした口調に変わっていた。

「方法は・・・あります。」

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