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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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起床

 朝、爽やかな砂漠の朝日が窓から降り注ぐ。窓の位置が、ちょうど朝日を枕元に降り注がせ、爽やかに目覚めることが出来る。

 と、ここまでがレーグから話された部屋の説明だ。しかし、爽やかな朝日はシロヤに降り注いでなかった。

「・・・?」

 ゆっくりと目を開けると、窓を誰かが遮っているようだ。遮っている人は、シロヤの頭を撫でながら、顔を真上からずっと見つめていた。

「ん?起きたか?おはよう。」

 微笑みを浮かべ、頭を撫でながら、目覚めたシロヤに声をかける。シロヤの頭には、柔らかい枕の感覚があったが、横を見てみると、昨日使っていた枕が無造作に転がされていた。じゃあ今、自分の頭の下にあるのは何なんだろうか・・・。

 まだ状況を理解できないシロヤ。頭の中で出した結論は

「夢・・・か。」

 再び目を閉じるが、目覚めてから時間が経ったシロヤは思考が復活していた。

 再び目を開けたシロヤは、状況を瞬時に確認した。今、シロヤは頭を撫でながら膝枕をされていた。そして、膝枕をしている人物は

「どうした?そんなに見つめられては照れるではないか。」

「・・・シ!シアン様!」

 シアンは、微笑みながらシロヤを見つめていた。対称的に、シロヤの顔はどんどんと焦りの色が強くなった。

「どうした?私の膝枕を気持ちよくないか?」

「い!いや!そういう訳では!すいません!」

 慌ててベッドから飛び降りようとするシロヤを、シアンが体で制止させる。強引に頭を胸に持ってかれるシロヤ。

「そんなに堅くなるな。今は私が王族ということは忘れるがいい。」

「あ・・・は・・・はい。」

 しばらくシアンに甘えさせられるシロヤ。再びまどろみ始めてきたシロヤは、強引に眠気を圧し殺してシアンに話しかけた。

「そういえばシアン様、俺にぴったりの役職っていったい・・・。」

「おぉ、話すのを忘れていた。何にせよ、話がわからなければ決断なんて出来ないな。」

 シアンは撫でていた手を止め、凛とした瞳でシロヤを見つめながら、ゆっくりと語りだした。

「これは、そなたにしか出来ないことだ。」

「でも・・・俺は頭が良いわけでもないし、剣の腕が良いわけでも・・・。」

「そんなことではない。そなたにしかできぬ、そなたにこそ相応しいことだ。」

 シアンは一呼吸置いたのち、目を閉じて再び語りかけた。

「そなたには、私のそばにずっといてほしい・・・。」

「・・・え!?」

 シロヤは驚きの声を上げた。しかし、シアンはそのまま言葉を続けた。微かに頬が赤くなっている。

「私と共に・・・この国を・・・支えてはくれぬか。だから・・・私と・・・。」

 声を次第に籠らせる。言葉を発するのをためらうかのように、シアンは何回も体を揺すった。

「・・・シアン様?」

 シアンは頬をどんどんと赤くしていった。一瞬見えたシアンの乙女の姿に、シロヤはドキッとした。


「・・・女王様。」

 急に割り込んできた第三者の声。シロヤはこの声に聞き覚えがあった。昨日の夜中、プルーパが話していた最も怪しいといわれる人物だ。

「レーグ!?何故お前がここにいる!?この部屋はクピンが担当しているではないか!」

 シアンはシロヤを抱いたまま怒鳴った。よほど、二人きりの空間を邪魔されたことが腹立たしいのだろう。

「そんなに怒らなくても・・・朝食が出来ましたんでお呼びしに来ただけですよ。」

 レーグは悪そうにいったが、顔は全然悪びれている様子はなかった。むしろ、良いタイミングに来たとでも言わんばかりの表情だ。それが、シアンを怒らせた要因の一つでもあるようだ。

「それならば朝食をここに二人分持ってこい!私はこのお方と二人でいただこう!」

「いやいや、もうローイエ様もプルーパ様もいらしていますので、残りはお二人だけなんですよ。」

 女王を怒らせているにも関わらず、全く動じていない。シアンは少しムッとした表情のまま考え込んだ。

「む・・・二人が待っているのならしょうがない・・・。続きは朝食後に話そう。」

 シアンはシロヤを静かに離し、早歩きで部屋を出た。そしてそのあとをレーグが追う。

「ではシロヤ様、お早めにいらしてください。ヒヒヒヒヒ。」

 最後の含み笑い、シロヤはレーグに言い様のない寒気と不気味さを感じた。

「・・・。」

 ここで考えていてもしょうがないと、シロヤは考えるのをやめて部屋を出た。

 その瞬間

「キャッ!」

「うわぁ!」

 ドアを開けて部屋を出てすぐ、シロヤは誰かとぶつかった。

 ぶつかった少女は黄色く長い後ろ髪を二つにまとめていた。華やかなドレスに身を包んでいて、背丈はシロヤよりも小さい。見た感じ、歳もシロヤより下だろう。

「あれ?もしかして・・・シロヤ様!?」

 少女はシロヤを見るなり、目を輝かせて近づいた。

「え?そうだけど・・・。」

「わぁ!お姉様を助けてくれたんだよね!」

 少女はシロヤに抱きついた。その少女の言葉の中に、シロヤはいち早く気づいた。

「お姉様!?ていうことは君、いやあなたは!?」

「うん!私のお姉様は第一女王様と第二女王様なんだよ!私も第三女王なの〜!」

 抱きついたまま少女はシロヤに笑顔で答えた。逆にシロヤはまたもや焦りの顔になる。

「シロヤ様〜!ご飯の時間だから食べにいこ〜!」

「う・・・はい。」

 シロヤは少女に抱きつかれたまま、朝食の場を目指した。

「そういえば名前言ってなかったね!ローイエっていいま〜す!」

「ローイエ・・・様?」

「様いらないよ〜!」

 いつの間にかシロヤの前に来たローイエは、シロヤの胸に顔を埋めた。

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