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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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帰還

 クロトはフカミとキリミドの言葉を信じて、さらに走り続けた。走ることをやめれば、クロトは間違いなく命を落としてしまう。

 しかし、クロトはここで命を落とすわけにはいかないと、さらに走るスピードを速めた。限界を越えてもなお、シロヤに会うためにクロトは走り続けた。

「・・・・・・・・・。」

 詠唱を続けるキリミド。まだ降りてこないフカミ。走り続けたクロト。

 最初にアクションを起こしたのは・・・。


「・・・クロトさん!避けてください!」


 キリミドの叫びを聞き、クロトは道を外れてその場所から離れた。

 その瞬間、キリミドの後ろから巨大な草が現れた。草は木に向かって伸びていくと、枝に絡まって木の動きを止めた。

「お姉ちゃん!」

 キリミドが叫ぶと、木、クロト、キリミドが急にたくさんの影に覆われた。

 上空を見上げると、たくさんの大きな木の幹が、動きを止められている木に向かって勢いよく落ちてきていた。

「砕けなさい!」

 さらに勢いを増す木の幹を、フカミは空中で操っていた。

 木はフカミの攻撃によってどんどんと傷ついていき、やがて木の幹に貫かれて沈黙した。

 たくさんの幹が突き刺さった木に、もはや枝を動かす力はなかった。


「ハァ・・・ハァ・・・。」

 ゆっくりと地上に戻ってきたフカミはもちろん、駆け寄ってきたクロトとキリミドも荒く呼吸をしていた。

「できることなら・・・使いたくなかったんだけどね・・・奥の手は・・・。」

 フカミとキリミドは同時に頷いた。

 キリミドが敵の動きを止めて、それに向かってフカミが木の幹を降らせる。単純そうに聞こえるが、フカミとキリミドにとってはエネルギーの消費量が激しく、まさに奥の手だったのだ。

 動けなくなっている二人を背中に乗せ、クロトはゆっくりと砂漠に向かって歩きだした。

「ごめんなさい・・・クロトさん・・・迷惑をかけてしまって・・・。」

 背中で泣きそうになっているキリミドを励ますように、クロトは大きく鳴いた。


 やがて太陽の光と砂が現れて、気がつけばクロト達は未開拓地帯の森を抜けていた。

「久しぶりね・・・外に出るのは・・・。」

「早くシロヤさんに会いに行きましょう。」

 二人は急かすが、クロトはゆっくり、背中の二人に負担を与えないように歩いた。これが、クロトなりの二人への配慮だった。

「クロトさん・・・。」

「飼い主に似るって・・・本当みたいね・・・。」

 二人はクロトの背中で笑いあった。


 しばらく歩くと砂丘があり、その砂丘を越えれば街、街を越えれば城に着く。

 クロト達が砂丘を越えた辺りで、初めて人の姿を捕らえた。

 人はクロトの姿を確認した途端、驚いたような表情を浮かべて走り寄ってきた。

「クロト・・・!本物なのか・・・!?」

 信じられないといった表情を浮かべている人に向かって、背中のフカミが話しかけた。

「もちろん本物。滝の上から落ちてきた本物のクロトよ。」

「怪我は元々あった足の傷も含めて治っていますのでご安心ください。」

 そして、"自分はもう大丈夫!"と言わんばかりに足を上げたクロトに向かって、その人―――レジオンは涙を浮かべて笑った。

「よかった・・・本当によかった・・・。」

 肩を震わせながら、レジオンは再開を喜ぶクロト達に抱きついた。

「ありがとう・・・本当にありがとう・・・!」

「ちょっと!痛いわよ!」

「レジオンさん・・・!強いです・・・!」


 レジオンは涙を袖で拭き、現状をクロト達に話した。

 クロトが死んだと思い込み、自分を失ってしまったシロヤ。同じく自分を失ってしまったシアン。片腕を切り落としたバルーシ。全身傷だらけで眠るプルーパ等、レジオンが知っている範囲の全てを話した。

「最近国がおかしいと思ってたのは・・・。」

「シロヤさんとシアンさんが原因だったんですね・・・。」

 クロトは寂しそうに鳴いた。

 それを見て、レジオンは切り替えるように言葉を続けた。

「今からでも遅くねぇ。クロト、シロヤに会いに行くぞ。」

 大きく頷き、クロトは城に向かって走るレジオンについていった。

「シロヤのことだ。今頃目を覚ましてるかもしれないが、やっぱりお前が無事だってことを教えなきゃ締まらないだろう。」

 やがて、クロト達は城にたどり着いた。

 久しぶりに思える城の前に来て、クロトはそこで立ち止まった。

「待ってろ。今すぐシロヤを連れてくるぜ。」

 走って城の中に入っていくレジオン。

 それを見つめながら、フカミが口を開いた。

「・・・ここに来たの・・・何年ぶりかしら・・・。」

「お姉ちゃん・・・来たことあるの?」

 キリミドが聞くと、フカミは表情をしかめながら頷いた。まるで、思い出したくないと言っているような表情を浮かべている。

「さっきのあれといい・・・一体何が起きているのかしら・・・。」

 呟いた瞬間、城の扉が開かれた。

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