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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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襲撃

「さぁ、行きましょうか。」

 次の日、クロトはフカミとキリミドと共に自然の家を出発した。

「このまま進めば滝の上に出るわよ。」

 フカミとキリミドに連れられながら、クロトは昨日見た石板のことを考えていた。

 何故か、クロトの頭から石板のことが離れることはなかった。

「・・・そんなに石板のことが気になるの?」

 気づいたフカミがクロトに言った。クロトはそう言われ、ゆっくりと頷いた。

「あの石板・・・実は私達が持ってきた物なのよ。」

 フカミは昔を思い出すように語りだした。

「昔ね、森にあの石板の欠片が落ちてたの。それを全部回収して繋ぎ合わせたらあの石板が出来たって訳よ。」

「石板の内容は私が集めたんですよ。」

 二人が石板の話をし終えた頃、クロト達は森に建てられた教会の前にやって来た。この教会は、シロヤとプルーパがレーグを追ってやって来た場所だった。

「さぁ!ここまで来たらもうすぐよ!」

「早くシロヤさんに会いに行きましょう!クロトさん!」

 クロトは大きく鳴いて、早く会いたいと思い走り出そうとした。


「・・・・・・・・・待って!」


 走り出そうとしていたクロトを制したのはフカミだった。フカミは森に感じる"何か"を捕らえ、クロトとキリミドを守るように前に出た。

「お姉ちゃん・・・?」

 フカミのただ事ではない雰囲気を感じとり、キリミドは心配そうに聞いた。

 しかし、フカミは答えずにじっと視線の先の森を見ていた。

「・・・。」

 動かずに森を見続けるフカミ。

 そして、フカミは森に向かって叫んだ。

「出てきなさい!」

 フカミが叫んだ瞬間、森から草木をなぎ倒すような強く大きな音が聞こえてきた。その音は次第に大きくなっていき、やがてそれは姿を現した。

「!!!」

 それが姿を現した瞬間、フカミは戦闘体制に切り替えて、足元に草の壁を作り出した。

「汚染植物!?」

 現れたのは動く木だった。木はフカミ達を捕らえた瞬間、枝を伸ばしてフカミ達に襲いかかってきた。

「くぅ!」

 草の壁が枝の攻撃を防いだが、その衝撃はフカミにダメージを与えた。

「お姉ちゃん!」

 キリミドが駆け寄って治癒魔法をフカミにかけるが、どんどんと強くなっていく木の攻撃に、次第にフカミは体力を消耗していった。

「キリミド・・・離れてなさい。」

「お姉ちゃん・・・?」

 フカミは枝を伸ばし、クロトとキリミドを自分から離れさせた。

 それと同時に、草の壁が枝によって破壊された。素早く枝がフカミに向かって伸びていく。

「枯れなさい!」

 向かってきた枝に向かって、フカミは淡く光った手のひらを向けた。


「お姉ちゃん!!!」


「えっ?」

 光は確かに枝に届いたが、枝は枯れる様子を見せずにフカミに向かって伸びてきた。

 急いで枝を避けようとするが、アクションを起こす前に、枝はフカミの目の前まで迫っていた。

「お姉ちゃん!!!」

 キリミドが枝を伸ばしてフカミを助けようとした瞬間、横を風が吹き抜けた。

「!!!」

 枝はそのまま地面に突き刺さったが、フカミの体を捕らえていなかった。

「・・・クロト?」

 気づいた時、フカミはクロトの前にいた。クロトは全力で地面を蹴り、フカミをギリギリで助けることに成功したのだ。

「クロトさん!お姉ちゃん!」

 駆け寄って治癒魔法をかけるフカミ。

 クロトはフカミとキリミドを背中に乗せると、さらに伸びてきた枝を避けるために走り出した。

 走り続けるクロトの背に乗ったフカミは、キリミドに向かって深刻な顔を浮かぶた。

「・・・キリミド。」

「どうしたの?お姉ちゃん。」

 治癒魔法をやめ、キリミドはフカミの言葉を聞いた。

「あれ・・・植物じゃないわ。」

「えっ?だって枝も葉もあるよ?」

「あれは全くの別物よ。枯れなかったからもしかしてと思ったんだけどね・・・。」

 さらに激しくなる攻撃。クロトは次第にスピードを落としかけていた。

「お姉ちゃん!クロトさんが!」

「クロト!今から言うことをよく聞いて!」

 フカミは真剣な表情でクロトを見ながら、はっきりとした口調で話始めた。

「このまま走ってあいつの気を引いて。一分だけでいいわ。一分あれば準備できるわ。」

「まさか・・・あれをやるの!?」

 キリミドは驚いたように声を上げた。対してフカミは氷のように冷静でいて、表情は決意を秘めていた。

「これ以上・・・この森を荒らさせはしないわ!」

 そう叫ぶと、フカミは高く飛び上がった。

「クロトさん!私が合図したらすぐに逃げてください!巻き添えを食らってしまいます!」

 そう叫ぶと同時に、キリミドはクロトから飛び降りてすぐさま詠唱を始めた。

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