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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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責任

 シロヤの言葉を聞いて、ローイエは満面の笑みを浮かべた。まるで、言ってほしかったことを言われたかのように。

「うん!」

 ローイエはそのままシロヤに飛び付いた。

「うわぁ!」

 急に飛び付かれ、シロヤはそのまま後ろに倒れた。しかし、ローイエは嬉しそうにシロヤの胸に頬を擦り付けていた。

「シロヤお兄様!また四人で一緒にお食事しようね!」

 淀みの全くない笑顔を浮かべるローイエ。それに答えるように、シロヤはぎゅっとローイエを抱いた。

「わかりました、ローイエ様。」

 それを聞いたローイエは、ムッと怪訝そうな表情に変わった。

「もうお兄様!様ってつけないでよ〜!」

 怪訝そうな表情のままシロヤを見上げるローイエ。シロヤは少し恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと口を開いた。

「じゃあ・・・えっと・・・ローイエさ・・・ちゃん?」

「〜♪」

 瞬時に嬉しそうな表情に変わった。


「お兄様、お姉様がまだ目を覚ましてないの。」

「シアン様・・・。」

 二人は今、シアンの部屋の前にいた。

「シアン様!俺です!シロヤです!」

 部屋の前で叫ぶようにシアンを呼ぶが、返事はおろか、部屋の中から物音一つ聞こえてこなかった。

「・・・シアン様・・・。」

「お姉様!シロヤお兄様だよ!」

 ローイエも同じように叫ぶが、やはり結果は同じだった。

 しばらく無言になる二人。

 その時、背後から二人に声がかけられた。

「ローイエ様!・・・!?」

 二人が振り向くと、立っていたのは食事を乗せたトレイを持ったリーグンだった。

 リーグンはシロヤを見て、トレイを持つ手を小さく震えさせていた。トレイの上のスープが小さく波を立てている。

「シ・・・シロヤ様・・・!目を覚まされたのですか・・・?」

 まだ信じられないといった感じのリーグンに、シロヤは小さく会釈をした。

「ご迷惑をお掛けしました・・・リーグン様。」

 それを聞き終えない内に、リーグンはシロヤに駆け寄った。

「シロヤ様!本当に・・・本当によかった・・・!」

 さっきまでのシロヤのように、リーグンの目からも涙が溢れていた。

「シロヤ様・・・本当にありがとうございます・・・!」

 リーグンは涙声になりながら、シロヤに向かって口を開いた。

「ありがとう・・・って、お礼を言うのはこっちですよ!」

「いえ・・・シロヤ様が自分を失ってしまったのは私達の責任です・・・例えシロヤ様があのまま目を覚まされなくても、私達は生涯シロヤ様に尽くそうと決意してました。」

 その言葉に、ローイエは深くうなずいた。シロヤのために生涯を尽くそうとしていたのは、リーグンだけではなかった。ローイエだけではなく、プルーパやバルーシ、レジオンやランブウも同じだった。

「シロヤ様が目覚めていただいたおかげで、私達は償いのチャンスを得ることができました。本当に・・・ありがとうございます!」

 深々と頭を下げるリーグンの頭を、シロヤは慌てた様子で上げさせた。

「償いなんていりません!看病してくれただけでも俺はそれ以上の感謝をしていますから!」

 それを聞いたリーグンは、流れていた涙を軽く袖で拭いて、ゆっくりと顔を上げた。その顔は、涙をこらえながら笑っていた。

「いえ・・・私達はシロヤ様が目覚められてからが本番です。そして・・・後はシアン様のお目覚めを待つだけです。」

 三人は同時にシアンの部屋を向いた。全く開く様子のない扉。その奥から、物音は一切聞こえてこない。

「・・・この状態のまま・・・もう二日が経ってしまってます・・・。」

 リーグンが呟くのを聞いて、シロヤは扉に数回手を触れた。

「・・・体当たりすれば・・・開くかもしれません・・・。」

 シロヤは扉からゆっくりと離れて、軽く伸びをして構えた。


「待て、シロヤ。」


 構えたシロヤに急にかけられた声。向くと、立っていたのはレジオンだった。

「レジオンさん!」

「よ、ちゃんと目を覚ますって信じてたぜ。」

 レジオンはゆっくりと扉に近づいて、コンコンと扉を叩いた。

「強行突破するには一人じゃ荷が重いぜ。この扉はな。」

 そう言って、レジオンはシロヤの背中を叩いた。

「ま、ここは俺とリーグンに任せてくれや。」

「でも・・・。」

 シロヤが口を開こうとした瞬間、レジオンはすぐさまそれを遮った。

「お前に会いたいって奴が・・・城門前にいるらしいんだ。会ってきな。」

 レジオンは再びシロヤの背中を強く叩いた。

「俺に・・・会いたい人?」

「細かいことは会ってから聞きな。」

 シロヤはレジオンに言われ、城門に向かっていった。

「お兄様、私も行きます。」

 その後ろを、ローイエが小走りでついていった。


「レジオンさん、シロヤ様に会いたい人って・・・。」

「俺もビックリしたんだが・・・まぁ、今のシロヤに一番ピッタリな奴だ。」

 レジオンは軽く伸びをしてから、扉に向かって体当たり準備をした。

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