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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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衛兵

「・・・シアン・・・どうして何も話してくれないの?」

「・・・。」

 王室の玉座に腰掛けているシアンに、プルーパは寂しそうな顔で詰め寄っていた。

 対してシアンは、一切表情を替えない。

「ねぇ・・・答えて!何で何も言ってくれないの!?」

「・・・。」

「何で・・・?私達・・・家族でしょ・・・?ねぇ・・・シアン・・・。」

 次第に涙声に変わっていき、プルーパの足元に涙が落ちていった。

 なおも表情を変えないシアンに、プルーパはさらに涙を流しながら詰め寄った。

「お願いシアン!一言でもいいから・・・声をかけてよ・・・!お願い・・・!」

 膝から崩れ落ちるプルーパを、シアンは無表情でただ見下ろしていた。

「うぅ・・・!うぅぅ・・・!」

 溢れてくる涙を抑えきれず、プルーパは膝をついて泣き出した。


「・・・女王様。」


 突如聞こえた第三者の声。振り向くと、扉の前にいたのはレーグだった。

「レーグ・・・あなたは確か王室に出入りが許されていないはずですよ。」

「細かいことは気になさらずに・・・ヒヒヒヒヒ!」

 王室に響く含み笑い。プルーパは顔をしかめるが、シアンは一切表情を変えない。

「・・・何の用だ。」

「ヒヒヒヒヒ!単なる助言ですよ、助言。ヒヒヒヒヒ!」

 それを聞いたシアンは、勢いよく玉座から立ち上がった。

「一学者が私に助言だと!?ふざけるな!」

 そう言って、シアンは近くの衛兵に叫んだ。

「そこの学者をつまみ出せ!」

 衛兵が一斉にレーグに群がって、たちまちレーグはつまみ出されてしまった。

「・・・。」

 それを見届けたシアンは、玉座を離れて自室へと向かっていった。

「待ってシアン!話を聞いて!お願い!」

 そんなプルーパの叫びもむなしく、シアンは無言のまま自室へと入っていった。

「シアン・・・。」

 シアンが入っていった部屋の扉を、プルーパはしばらく見つめ続けていた。


「ヒヒヒヒヒ!」

「レーグ・・・あなた・・・。」

 王室を出ると、レーグが扉の前に立っていた。

「女王様が心配なのですか?まぁあれだけ避けられていれば当然ですよねぇ・・・ヒヒヒヒヒ!」

「口を慎みなさい。私も一応王族なのよ。」

 レーグは悪びれる様子もなく、ただ笑い続けていた。

「・・・もういいわ、あなたと話してると頭痛くなるわ。」

 そう言って、プルーパはレーグを通りすぎて自室に向かおうとした。

「ヒヒヒヒヒ!何を心配する必要があるのですか?」

 プルーパは動きを止めた。

「・・・どういうことよ?」

「ヒヒヒヒヒ!近々わかりますよ!」

 それを言われ、プルーパは勢いよく振り向いてレーグを睨み付けた。

「言いなさい!シアンに何をするつもり!?」

「何も致しませんよ?私はただ言葉をかけるだけ・・・ヒヒヒヒヒ!」

 含み笑いを止めないレーグ。しびれを切らしたプルーパは、レーグに掴みかかろうと前に出た。

 その瞬間・・・。


ヒュン!


「ほぅ・・・。」

 プルーパは動きを止めた。

 レーグは首に剣を向けられていた。そして剣を向けていたのは、王室への扉の前にいた衛兵だった。

「それ以上の王族への無礼は許しません!」

 衛兵はレーグを睨み付けて剣を強く握った。

「ヒヒヒヒヒ!あなた・・・衛兵でしょう?」

「私はバスナダの王族に忠誠を誓った身。例え身分が上の方でも、王族への無礼を見逃すわけにはいきません!」

 レーグと衛兵はしばらく睨み合った。

「ヒヒヒヒヒ!怖い怖い。」

 全く怯えた様子を見せず、レーグは含み笑いを続けながらその場を立ち去った。


「・・・ありがとうね。」

 プルーパは衛兵に軽く頭を下げた。それに対して、衛兵は萎縮しながら敬礼した。

「プルーパ様から感謝の義を頂き、光栄至極に存じます。」

「あはは、そんなに改まらなくていいわよ。」

 プルーパは、笑いながら衛兵を見つめた。

「ん〜・・・顔見えないから兜取ってくれないかしら?」

 プルーパに言われ、衛兵はゆっくりと兜を取った。中から銀髪の髪の青年の顔が現れた。

「あら、かっこいいじゃない。歳も私と同じぐらいじゃないかしら。」

「そんな恐れ多い・・・。」

 衛兵はさらに萎縮した。

「レーグに剣を向けた貴方なら信用できるわね。」

 プルーパはしばらく衛兵を見つめたのち、表情を引き締めて真剣な口調に変わった。

「貴方を"短期間調査兵"に任命します。以後、王室への見張りを続けながらレーグの動向を観察してください。」

「は!はい!粉骨砕身の覚悟で任務に当たらせていただきます!」

 勢いよく敬礼をした衛兵に、プルーパは微笑みかけた。

「うん、期待してるわね。」

 そう言って、プルーパは立ち去ろうと背を向けて歩き出した。

「・・・あぁ、名前聞いてなかったわね。貴方、名前は?」

「はい!バルーシと申します!」

「うん、わかったわ。じゃあよろしくね、バルーシ。」

「はっ!」

 衛兵―――バルーシは力強く敬礼をした。

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