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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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国事

「お前・・・本当に大丈夫なのか?」

 レジオンは心配そうに聞いた。病み上がりのリーグンを前線に復帰させる事が、レジオンにとっては抵抗があった。

 しかしリーグンは、そんなレジオンの心配の視線を気にしていないかのように笑った。

「僕なら大丈夫ですよ。国に関わることなんですから、これぐらいの無茶は当然です。」

 リーグンはずっと笑顔だった。

「それに・・・シロヤ様に気持ちよく目覚めてもらうためにも、国のいざこざは早めに解決しなければ、うっ!」

 言葉の途中で、リーグンは腕を押さえてうずくまった。

「リーグン!」

 レジオンが駆け寄ると、リーグンの着ていた服の袖が赤くなっていき、腕を伝って指先から血が滴り落ちていた。

「だから無理するなって!出血多量で死ぬぞ!」

 すぐさま近くにあった包帯に手をかけたが、リーグンは無言でその手を掴んだ。

「・・・リーグン・・・。」

 ただ無言でレジオンを見つめるリーグン。自分は大丈夫だということを無言で伝える。

「・・・死ぬような真似はするなよ。」

「・・・はい!」

 二人は同時に立ち上がり、医務室を出ていった。


「とは言ったものの・・・。」

 レジオンは作戦会議室にやって来て、数人の兵士と学者を集めて頭を抱えていた。

 国事を任されたが、頭を使う仕事を得意としていないレジオンにとっては、かなりの大仕事であった。

 今レジオンが見ているのは、星夜祭後に調査兵団によってまとめられたレーグ側の人間のリストだった。

「しっかしまぁ・・・意外と裏切り者が多いなぁ・・・。」

 リストに乗っていた人物は五十人を遥かに超えていた。その中には、砂の竜王時代から城に出入りしている学者や、一般市民と多種多様な人達の名前が書かれていた。

「とりあえず、暗殺にどれだけ関わっているのかを三段階評価で全員まとめよう。三の評価がつけば封印獄か処刑、二の場合は投獄、一の場合は軟禁処分だ。」

 レジオンはその旨を伝え、学者と兵士に評価を一任した。その間にレジオンは、別の紙に目を通した。

 今目を通しているのは、暗殺直前に書いたと思われる予算案だった。おそらく、新たな王が即位した時に通そうとしたのだろう。

「・・・学ばないな。」

 予想通り、軍事予算が例年の予算案に比べてはね上がっていた。

「・・・・・・ん?何だこれ。」

 ふとレジオンは、一番下の項目に目を通した。そこには、例年にはなかった新たな予算が組まれていた。

「・・・"封印護衛"?」

 新たな項目の名前は、"封印護衛"と書かれていて、他の予算と比べて少し予算が多かった。

「レーグ・・・一体何がしたいんだ・・・?」

 そう思ったレジオンは、近くにいた学者に話しかけた。

「おい、レーグの評価は?」

「もちろん三です。おそらく処刑になるかと・・・。」

「いや、レーグは封印獄処分で頼む。」

「元七人衆の処分はいかがなさいますか?」

「判断に任せる。」

 そう言って、レジオンは予算案の紙を置き、違う紙に目を通した。


 一方その頃、リーグンはシロヤとシアンの部屋の食事を厨房にもって行く途中だった。

 もちろん、二つの食事は一つも減っていなかった。

「・・・シロヤ様、シアン様・・・。」

 運びながら呟くリーグンは、悲しい表情を浮かべていた。

 厨房に着くと、リーグンは悲しい表情のまま食事を置いた。

「あの・・・リーグン様?」

 心配したのか、近くにいた料理長が話しかけてきた。

「やはり・・・お二人とも召し上がりませんでしたか・・・。」

「・・・はい・・・。」

 しばらく二人の間に沈黙が走る。

「・・・あ、それとお願いがあります。」

「はい・・・なんでしょうか?」

「メイドのクピンさんが過労で倒れていますので、何か元気になれるようなものを作ってあげてください。」

「クピンさんがですか!?分かりました!」

 すぐさま調理にかかった料理長達を後ろに、リーグンは厨房を後にした。


 暗い表情のまま、シロヤの部屋に向かうリーグン。

「何か・・・いい方法はないのかな・・・。」

 そう呟いて道を曲がった。その時、リーグンの目の前に人が映り込んだ。

「リ!リーグン様!」

 ビックリしたような表情を浮かべる人物は、リーグンの名前を叫んだ瞬間に膝を崩した。

「何で・・・寝てないんですか!クピンさん!」

 立っていたのはクピンだった。顔を熱で真っ赤にしながらも何とか立とうと足に力を入れるが、熱で体力を奪われているクピンにとっては、体制を維持するのは困難なことだった。

「早く・・・シロヤ様の・・・部屋に・・・。」

「そんな!無理しすぎですよ!」

 介抱しようと抱き抱えた瞬間、さらに奥から人の気配がした。

「クピンちゃん・・・無理はしないで・・・。」

 奥からやって来た人物は、ふらふらになったクピンの肩をゆっくりと持ち上げて、ゆっくりと医務室へと向かっていった。

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