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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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小屋

 レジオンは、小屋の扉をゆっくりと閉じた。

 小屋の中はそれほど広くはないが、必要最低限の生活をするには充分な物が一通り揃っていた。しかし、長く使ってないのだろうか、大半の物が埃を被っていた。

 レジオンは、背負っていたシロヤをベッドに横たわらせた。しかし、シロヤは何かを発することもなく、何も映らない瞳のままで動きを止めていた。

 シロヤを見つめる二人。

「一体・・・何があったんですか?」

 シロヤを見つめながらクピンが訪ねた。

「・・・。」

 少し黙ったのち、レジオンは口を開いた。

「クロトが・・・滝壺に落ちちまったんだ・・・。」

「!」

 クピンは絶句した。

「そんな・・・!シロヤ様とクロト様は兄弟同然の存在なのに・・・。」

 シロヤはまだ脱け殻のように横たわっている。それを見ながら、レジオンは唇を噛み締めた。

「もう少し・・・俺がもう少し早く来ていれば・・・!」

 クロトも一緒に助けられたかもしれない。その言葉を発する前に、レジオンは強く握った拳を地面に叩きつけた。

「くっ・・・俺がもう少し・・・。」

 自分を攻め続けるレジオン。その横では、クピンがシロヤとレジオンをずっと見つめていた。

「・・・シロヤ様・・・。」

 名前を呼んでも、ベッドの上のシロヤは反応しなかった。


・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


 大分時間が経っただろうか。

 レジオンは何とか立ち直ったものの、シロヤは以前目を覚まさない。

「まだ目を覚まさないか・・・。」

「はい・・・食事も口にしません・・・。」

 今だ目を覚まさないシロヤの額に、そっと手を置くクピン。

「あぁ・・・どうにかしないと・・・時期に見つかっちまう・・・。」

 この小屋は、滝からかなり離れた所にある。しかし、いつかは兵団がここまでやってこないとは限らない。

 そっとレジオンは、壁にかけてあった大剣に手をかけた。

「いざとなれば・・・戦うしかないか・・・。」

 レジオンは大剣を構えた。


「!」


 突如、レジオンが動いた。体制を低くし、今にも大剣を振り下ろさんとばかりに構えた。

「クピン!隠れてろ!」

 クピンはすぐさま、小屋の奥に身を隠した。

 ゆっくりと扉が開いていく。レジオンは額から汗を一滴流しながら、相手が現れるのを待った。

「・・・・・・・・・・・・・・・!」

 扉が開き、人が入ってきた。それを見た瞬間、レジオンは戦闘体制を解いた。

 入ってきた人物は、杖を持った緑髪の男だった。

「リーグン・・・。」

 リーグンはゆっくりと小屋に入り、ゆっくりと扉を閉じた。

 そして・・・。

「・・・・・・・・・。」

「リーグン!」

 リーグンは、レジオンの前で前のめりに倒れた。

 レジオンがリーグンに駆け寄ると、小屋の床が赤く染まっていた。

「リーグン様!」

 すぐさまクピンが飛び出し、リーグンをもう一つのベッドに寝かせた。

 クピンはすぐさまリーグンの服を脱がして、薬を取り出した。

「・・・っ!」

 リーグンの体に刻まれていた傷。数は少ないものの、その一つ一つが深く、そこからさらに血が流れている。

「リーグン・・・まさかシアンと戦ったな?」

 リーグンの傷口を見たレジオンが、驚いたように言った。

 リーグンの傷口が弓矢によるものだというのを、レジオンは瞬時に理解した。しかし、リーグンにここまで深い傷を与える弓矢使いは、シアンしかいない。

「シアンと戦うなんて無茶しすぎだ・・・俺でさえ勝てないかもしれないのに・・・。」

 シアンの強さは、バルーシやプルーパはおろか、レジオンやランブウですらも凌駕する。それを知っていながら、リーグンはシアンと戦ったのだ。シロヤを守るために・・・。

「うぅ・・・。」

 小さく声を上げるリーグン。クピンはリーグンに応急処置をしていた。

「シアン・・・本気でヤバイみたいだな・・・。」

 応急処置を終え、リーグンは眠りについた。

「もうちょっと遅ければ・・・輸血が必要でした。」

「ギリギリセーフってところか。」

 リーグンとシロヤを見つめる二人。

「シアン様・・・私達を殺すおつもりなのでしょうか・・・。」

 心配そうに呟くクピン。

「・・・心配するな。信じるんだよ、仲間を・・・シロヤもな・・・。」

 その言葉に、クピンは安心した顔を浮かべた。そして、レジオンも少し微笑んだ。


「!!!」


 レジオンの表情が一変する。すぐさま大剣を手にしようとする。


「!?」


 小屋の中にいた二人は、今起きた現象を理解するのに時間がかかった。

 ただ単に窓ガラスが割れた、それだけの現象だが、レジオンは隙を作った。


ヒュン!


「うぁっ!」

 レジオンが腕を押さえてしゃがみこんだ。見ると、レジオンの腕には矢が刺さっていた。

「ぐっ・・・速すぎだぜ・・・。」

 レジオンは苦痛の表情を浮かべながら立ち上がり、大剣を手にして戦闘体制をとった。

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