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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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好意

 強く目を閉じるシロヤ。痛みに耐えようと必死に体を力ませるが、痛みはやってこなかった。

「・・・?」

 ゆっくり目を開けてみると、シアンの矢は自分の腹部に届く直前で止まっていた。そして矢を止めているのは、砂だった。

「シロヤ様!大丈夫ですか!?」

 支えていた砂が落ちたと同時に、矢も一緒に地面に落ちた。

 いつの間にか、シアンもシロヤから距離をおいていた。そしてその間に、緑髪の男が立っていた。

「シロヤ様、ご無事で何よりです。」

 緑髪の男はすぐさまシロヤの後ろに回り込み、地面に刺さっていた弓を破壊する。同時に、シロヤの体が動きを取り戻した。

「シロヤ様、遅れて申し訳ありません・・・。」

 すまなそうに言葉を低くする緑髪の男に、シロヤはすぐさま言葉を返した。

「こちらこそ、助けていただきありがとうございます。リーグンさん。」

 そして、シロヤは緑髪の男―――リーグンの横に立った。


「リーグン・・・裏切り者の息子が何の用だ?」

 シアンは今にも弓を引かんとしている。リーグンは表情を変えようとせずに、シアンを一心に見つめていた。

「・・・シロヤ様、ここは私が引き受けます。」

「リーグン様?」

 リーグンは杖をクロトに向けて振った。その瞬間、クロトの足の矢が抜け、傷がどんどんと閉じていき、出血が完全に止まった。

「さぁ、早く!」

 さらに杖を降ると、シロヤの体が宙に浮いた。

「うわわわ!」

 そのままシロヤは、立ち上がったクロトの背中に乗せられた。

「待ってくださいリーグン様!」

「シロヤ様・・・私達の心配は無用です。シロヤ様の背中は任せてください。」

 しかし、シロヤは納得がいかないといった表情を浮かべていた。

「何で・・・何で皆・・・俺のために戦うんですか・・・?」

 溜まっていた疑問を投げ掛けるシロヤ。それに対して、リーグンは振り向いて笑顔を向けた。

「そんなこと・・・単純なことですよ。」

 笑顔のまま、リーグンは疑問への答えをシロヤに言った。


「皆、シロヤ様のことが好きなんですよ。」


 さらにリーグンは続けた。

「私にはわかるんです。皆、シロヤ様と一緒にいる内に好意が芽生えてきたんですよ。

シアン様はあなたの強さに、

プルーパ様はあなたの純真さに、

ローイエ様はあなたの包容力に、

バルーシさんはあなたのまっすぐな心に、

レジオンさんはあなたの誠実さに、

ランブウさんはあなたの諦めない心に、

クピンさんはあなたの優しさに、

フカミさんとキリミドさんはあなたの勇敢な心に、

そして私も、あなたの立ち向かう心に、それぞれ好意を抱いているんですよ。」

 固まるシロヤ。

「私達がシロヤ様を守るのは、私達の単なる自己満足でもあるんです。

私達はシロヤ様が好きだからこそ、シロヤ様の選んだ選択を無理矢理変えるようなことはしません。」

 リーグンの杖を握る手が強くなる。

「だから・・・私達を信頼してください!」

 話を聞いたシロヤは、うっすらと涙を目に溜めていた。

「リーグン様・・・ありがとうございます!」

 シロヤは涙を隠すように叫んだのち、未開拓地帯に向かって走り出した。

 小さくなっていくシロヤを、リーグンは森に入っていくまで見つめていた。


「余計なことをしよって・・・!」

 怒りを露にするシアン。それを見て、リーグンはさらに杖を握る力を強めた。

 リーグンは直感で、シアンは自分よりも実力が上であると分かった。

 しかし、リーグンは逃げるようなことは一切しない。シロヤの背中を守るために。

「リーグン、本気で貴様を潰しにかかる。命の保証はしないぞ。」

 矢を出し、弓を構える。ただそれだけの動きが、リーグンの緊張をさらに高めさせた。額から汗を流すリーグンだが、杖を握る手を一切弛めなかった。

「シアン様が本気なら、私も本気を出すだけです!」

 すかさず杖を振るい、砂を槍に変えてシアンに向けて放った。

「単調だな・・・。」

 すかさずシアンは矢を放った。シアンの放った矢が砂の槍を貫き、すぐさま形を失って地面に落ちた。

「ならば次はこちらからだ・・・。」

 シアンはすぐさま矢を五本持ち、不規則に放った。

 不規則に放たれた矢は、不規則な動きでリーグンに向かっていく。

「っ!」

 不規則な軌道を予測できず、一本の矢がリーグンに突き刺さった。

「くぅ!」

 腕に刺さった矢に一瞬気がいってしまい、さらに襲ってくる四本の矢に気が回らなかった。

 反応できずに動きが止まるリーグンに、四本の矢は容赦なく貫こうと向かってきた。

 そして・・・。

「ぐわぁぁぁ!!!」

 リーグンの体を、合計五本の矢が刺し貫いた。

 おびただしい量の血を出しながら倒れるリーグン。

「勝負あったな・・・リーグン。」

 シアンはゆっくりと歩み寄り、倒れているリーグンの体に向けて矢を向けた。

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