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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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強襲

 ただひたすらに走った。ランブウもプルーパも、自分のために戦ってくれている。思いを無駄にしないためにも、ただひたすらに走り続けた。

 やがて、シロヤとクロトは砂浜に出た。

「あれ?この海って・・・。」

 シロヤはこの海に見覚えがあった。この海は、星夜祭でシアンと二人で花火を見た灯台がある海だ。この海は、シロヤ達が最初にいた関所とちょうど反対側にある所だった。

「このまま行けば・・・未開拓地帯か・・・。」

 シロヤ達は灯台と森を目印に、再び走り出した。

「・・・?」

 しばらく走っていると、シロヤはある異変に気づいた。

「クロト・・・?」

 森を抜けた辺りから、クロトの走り方がぎこちなくなっていた。変に思ったシロヤは、クロトから降りて足を見た。

「!」

 クロトの足は、かなりの量の出血をしていた。シロヤ達が通ってきた道は、道とはまだ呼べないぐらいに荒れていた。木の枝や草を掻き分けていくうちに、クロトの足はかなり傷ついていたのだろう。

「クロト・・・無茶しすぎだぞ。」

 シロヤの言葉を聞いたクロトは、鳴きながら足踏みをした。おそらく"まだ走れる!"と言っているのだろう。

「クロト・・・ごめんな。」

 シロヤはクロトに跨がり、再び走り出した。


ヒュン!


「!」

 突如、シロヤの耳に空を切る音が響いた。その瞬間、シロヤの視界が揺れた。

「うわぁぁぁ!」

 視界はどんどんと傾き、シロヤは砂浜に倒れこんだ。

「いてて・・・。」

 ゆっくりと立ち上がるシロヤだが、体に新しい傷はついていなかった。シロヤはただ、地面に倒れこんだだけのようだ。

「クロト、大丈夫か?」

 シロヤはクロトの方を向いた。その瞬間、信じられない光景がシロヤの目に映った。

「クロト!!!」

 シロヤはクロトに駆け寄った。クロトは砂浜に倒れていて、その足からはおびただしい量の血が溢れていて、砂浜を赤く染めていた。

「何だよこれ・・・どうなってるんだ?」

 さらに酷くなる出血。シロヤの目に映ったのは、クロトの足に刺さっている何かだった。

「これ・・・矢だ。」

 クロトの足に刺さっていたのは、木で作られた矢だった。矢はクロトの足を貫通し、砂浜に刺さってクロトの動きを止めていた。

「何で・・・急に矢が?」

 そう呟いた瞬間、さらに空を切る音がシロヤの耳に響いた。空を切る音は、すぐさま砂を裂く音に変わった。

「!」

 見ると、シロヤの前にさらに矢が突き刺さっていた。まだ矢を放っている人物が近くにいる。

 シロヤはすぐさま剣を構えた。

 矢が飛んできたと思われる方向、砂丘の向こうから、ゆっくりと何かが近づいてきた。

「・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」

 シロヤは目を疑った。砂丘の向こうから現れた人物は、シロヤにとっては予想を遥かに越えた人物だった。

「見つけたぞ・・・。」

 シロヤは、口元を震わせながら現れた人物の名を呼んだ。

「シアン・・・様・・・。」

 砂丘に立っていた人物は、まぎれもなくシアンだった。ドレスに身を包んではいるが、手には長弓が握られている。その長弓は、使い方次第では強力な武器になり得る代物だった。そしてシアンは、その使い方を完全に熟知していた。

 シアンを見て、体が固まってしまったシロヤ。

 それに向かって、シアンは三本の矢を手に持って弓を引いた。

「!」

 避けようと考えた瞬間、シアンの手から三本の矢が放たれた。しかし、三本の矢はシロヤの体を越え、その先の地面に刺さった。

 狙いを外したのかと思ったシロヤだったが、すぐさまそれが何なのかわかった。

「くっ・・・体が・・・。」

 シロヤの体は、シロヤの意思では動かなくなっていた。

「・・・。」

 シロヤの体が動かなくなったのを見て、シアンは弓を下ろしてゆっくりと近づいてきた。

「!」

 シロヤは目を疑った。近づいてきたシアンの目は、初めて会った時の凜とした目ではなかった。色の無くなった無機質な目に、シロヤは恐怖を募らせていった。

「あぁ・・・愛しいお方よ・・・。」

 無機質な目をしたシアンは、いつの間にかシロヤの一歩前まで来ていた。ゆっくりとシロヤの顔に触れるシアン。

「そなたが・・・愛しい・・・。」

 いつの間にか、シアンは目から涙を流していた。無機質な目から流れる涙は、ゆっくりと頬を伝って砂浜に落ちていく。

「シアン様・・・。」

「う・・・うぅ・・・。」

 抑えられずに涙を流し続けるシアン。そして、シアンは矢を一本握った。

「痛くはしない・・・全てを私に委ねてくれ・・・。」

「えっ・・・?」

 シアンは矢を構え、シロヤに突き立てようと振りかぶった。

「シアン・・・様?」

「そなたを愛しているぞ・・・。」

 そして、シアンは矢を振り下ろした。

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