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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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決断

「うわぁ!」

 思わずのけ反ってしまい、シロヤはクロトから落ちた。

 起き上がって岩を見てみると、岩の三ヶ所が細くえぐれていた。

「何だ・・・これ?」

 そう呟いた瞬間、さらに謎の衝撃が飛んできた。

「っ!」

 しゃがんで衝撃を避けるが、衝撃はシロヤの後ろの岩にさらにえぐった。

「くっ!誰だ!」

 謎の衝撃が飛んできた方向を見ると、馬に乗り槍を構えている少女が立っていた。

「ダメ!この国から出ちゃダメなの!」

 少女は目に涙を浮かべながら叫んだ。

「ロ!ローイエ様!?」

 立っていた少女はローイエだった。ドレスを着ていた普段のローイエから一転、防具を身に付け、手にはローイエの身長よりも長い槍が握られていた。

「お兄様!お兄様は・・・私達を助けてくれたんだよね!?私達を救ってくれたんだよね!?」

 ローイエは涙をこぼしながら叫んだ。

「・・・俺は・・・犯罪者・・・。」

「嘘!お兄様はレーグを倒してくれたんだよね!?」

 ローイエは槍を再び構え、目にも止まらぬ速さで槍で空を突いた。その瞬間、槍からシロヤめがけて衝撃波が放たれた。

「くっ!」

 辛うじて避けるも、シロヤではついていくのが精一杯で、反撃をする余裕すらなかった。

「ローイエ様!俺はこの国の人間じゃないから・・・俺が!」

「そんなの聞きたくない!私は命を救ってくれたお兄様が大好きなの!」

 シロヤの叫びが、ローイエの涙の叫びによってかき消される。

「お兄様が・・・大好きなの!もっとお兄様と一緒にいたいの!お姉様も絶対同じだよ!」

「・・・。」

 黙りこむシロヤに向かってさらに叫ぶローイエ。

「私もお姉様も・・・もっともっとお兄様とお話ししたりお食事したりしたいの!一緒にいたいの!間違いなんかでずっと会えないなんて嫌なの!お別れしたくないの!」

 泣き叫ぶローイエは、さらに槍での攻撃を早めた。

「っ!」

 何とか避けようとするが、速い上にどんどんと加速していく槍の連撃。

「ぐわっ!」

 ついに避けきれずに、シロヤは槍の衝撃波をまともに受けた。

「うぅ・・・。」

 受けた部分が赤く染まる。岩のようにえぐれはしなかったものの、衝撃波でかなり深手を負ってしまったようだ。

「お兄様!絶対に私達が幸せにするから!一緒に幸せになろうよ!」

 さらに叫ぶローイエだが、シロヤはそんなローイエに顔色を変えなかった。

「でも・・・俺はよそ・・・者だ・・・から・・・。」

 その言葉を聞いて、ローイエはさらに涙を流した。

「いやぁ!嫌だよぉ!お兄様!うわぁぁぁん!」

 さらなる槍の衝撃波が放たれた。


キィィィン!


「っ!」

「何!?」

 突如、槍の衝撃波が何者かによって力を失った。

「シロヤ君!無事!?」

 茂みの奥から声が聞こえた。声と共に出てきたのは、ドレスに身を包み、手に短剣を構えた女性だった。

「プルーパ様!」

「シロヤ君!無事みたいね、うっ!」

 駆け寄ってきたプルーパが、突然うずくまった。見ると、両足の包帯がみるみるうちに赤く染まっていっている。

「プルーパ様・・・怪我、完治してないんじゃ!」

「今はそんなこと・・・心配してる暇じゃないわ!」

 プルーパは、ローイエの方を向き直し、短剣をさらに構えた。

「シロヤ君、ここは私に任せて早く行って!」

「そんな!怪我をしているプルーパ様を置いてくなんて!」

 シロヤの言葉を聞いたプルーパは、シロヤに向かって満面の笑みを浮かべた。

「いいのよ。シロヤ君のためだもの、この程度の傷で止まったりしないわ。」

 そう言って、プルーパはシロヤの背中を強めに叩いた。

「さぁ!行きなさい!」

 シロヤは口から出そうだった言葉を飲み込み、無言のままクロトに乗って走り出した。

「シロヤ君・・・頑張ってね。」

 小さくなっていくシロヤの背中に、プルーパはウィンクをした。


「お姉様!何でお兄様を逃がしちゃうの!?」

 納得のいかないローイエは、プルーパに槍を向けた。

「ローイエ!シロヤ君は私達のために国を出るって言ってるのよ!」

「そんなの嫌だよ!お姉様だってお別れしたくないでしょう!」

 プルーパは少し黙った。確かにプルーパも、シロヤがこの国に留まっていてくれるのは嬉しいことだ。

 しかし、シアンがやっていることが正しいとは思っていなかった。

「確かに私も・・・シロヤ君ともっと一緒にいたいわ・・・。」

「だったら何で!?何で逃がしちゃうの!?」

 言われたと同時に、プルーパは短剣を持ち直した。

「わかってるわよ・・・でもね!一番辛いのは・・・辛い思いをしているのはシロヤ君なのよ!私達のために国を出ていくって決断したシロヤ君が・・・一番辛い思いをしているのよ!」

 思いを叫んだプルーパは、いつの間にか涙を流していた。

「いやぁ!お兄様ともっと一緒にいたいの!」

 ローイエがプルーパに向かって槍の衝撃波を放ち、プルーパがローイエに向かって短剣を投げた。

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