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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第二章 眠る女王と決意の光
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急変

「皆の衆!昨夜の星夜祭は大成功に終わった!皆の頑張りが大成功に導いたのだ!」

 凛とした声で演説を始めたシアン。

「しかし・・・昨夜、大臣のレーグとバスナダ七人衆が重症を負うという事件が起きた。我々は、以前にバスナダを訪れた旅人、シロヤをA級犯罪者に認定、国を追放することにした。」

 少し前に起きた出来事を淡々と語るシアン。話しているうちに、シアンは目に涙を溜めていた。

「しかし・・・。」

 そう呟いた瞬間、シアンの頬に一筋の涙がこぼれ落ちた。

「しかし!その後、レーグの部屋からこの署名が見つかった!」

 シアンは紙を取り出して、その紙を高くあげた。

「これには、レーグとバスナダ七人衆の署名がなされている。そしてこの署名された紙に書かれた内容は、私の暗殺を企てるための計画書だった!」

「っ!」

 テレビを見ながら、シロヤは絶句した。

「おかしい・・・なぜあの署名がシアンの手元に・・・?」

 ランブウが驚いたように呟いた。

 テレビの向こうのシアンはさらに演説を続けた。

「私は愚かな間違いをしていた!あのお方はレーグやバスナダ七人衆を手にかけようとしていたのではなく、私を助けようと尽力してくれたのだ!」

 そして、シアンはぼろぼろと涙を流した。泣きながらも、涙を拭おうとせずにシアンは演説を続けた。

「私は・・・実に愚かだ!命を二度も助けてくれた者を犯罪者と認定して追放するなど・・・実に愚かだ!」

 どんどんと強くなるシアンの演説。涙を流しながらも、その声は凛としている。

「この愚かな所業を犯したことを・・・私はあのお方に謝りたい・・・。しかし、あのお方はもう戻ってこないだろう・・・。」

 強くなっていた演説がどんどんと涙声に変わっていく。

「だから・・・私は今、ここに宣言しようと思う!私のこの判断が皆に被害を与えるのではないかと思うが、私の最初で最後のわがままだと思って聞いてほしい!」

 深呼吸を一つして、さらに凛とした声で宣言した。




「再びあのお方を城に迎え入れるため、出国禁止命令を出すことに決定した!」




「えっ!?」

 シロヤは驚きの声を上げた。

「やばいな・・・女王は本気みたいだな・・・見ろ。」

 ランブウが一つの方角を指差した。その先にいたのは、銀色の鎧を見にまとった兵士の集団が歩いていた。

「まさか兵団を出してくるとは思わなかったぜ・・・おそらくあれを率いているのは・・・。」

 ランブウがさらに指差すと、そこにいたのは、立派な銀色の鎧に身を包んだ男が先頭になって兵団を率いていた。しかし、その男は体に包帯を巻いていて、苦痛の表情を浮かべていた。

「バ!バルーシさん!?」

 先頭のバルーシは、明らかに怪我が完治していないようだ。動く度に鎧が傷口を開かせ、その度にバルーシは苦痛の表情をさらに強めていた。

「シロヤ、今すぐここから逃げろ。丸一日でも逃げ切ればなんとかなる。」

 ランブウはテレビを消して、バルーシら兵団がいる方向とは違う方向を指差した。

「このまま関所の壁を頼りに走っていけ。この先は街からは見えないようになっている。」

 シロヤはすぐさまクロトに乗り、ランブウが指差していた方角に向かって走り出そうとした。

「ランブウさん!ランブウさんはどうするんですか!?」

 シロヤは立ち止まってランブウに声をかけるが、ランブウはその場を動かずに手だけを動かした。どうやら"早く行け!"と言っているようだ。

「ランブウさん・・・ありがとうございます。」

 シロヤは小さく会釈すると、ランブウが指差していた方角に向かって走り出した。


「ランブウさん、もういいですか?」

 草影から、数人の男が顔を出した。男達はそれぞれ違った形の銃を持っていた。

「あぁ、さて・・・少し荒くなりそうだな。」

 そう言って、ランブウは背中に隠していた散弾銃を構えた。それと同じように、男達も持っていた銃を構えた。

「言っておくが殺すなよ。相手は同じ国の人間、言うなれば家族みたいなものだからな。」

 そう言うと、男達が一斉に銃を構えた。

「っ!皆伏せろ!」

 銃を向けた方向にいるバルーシが叫んだ。しかし、ランブウの叫びの方が一瞬早かった。

「撃てぇぇぇ!」

 一斉に銃弾が放たれ、兵士達の鎧にぶつかり光となった。

「くぅ!閃光衝撃弾か!」

 閃光衝撃弾は、強い光と衝撃を放ち、被弾した敵を気絶させる弾である。

「第二射用意!撃てぇぇぇ!」

 さらに放たれた閃光衝撃弾により、兵団達は次々と倒れていった。


 後ろから聞こえる銃声。しかしシロヤは振り返らずに走り続けた。振り向けばランブウの思いを無駄にする。そう思い、シロヤは振り返りたい気持ちを必死に押さえ込んだ。

「ランブウさん・・・無事でいてください。」

 走り続けるシロヤは、やがて大きな岩の前にたどり着いた。


ヒュン!


「!」

 岩の前に着いた瞬間、横から謎の衝撃がシロヤの前を走り抜けた。

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