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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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依頼

 豪華な空間の中で一人ぼっちになったシロヤは、寂しさのあまり呼び鈴を鳴らした。

 すぐさまドアは開いた。立っていたのは、身長がシロヤよりも低いが年は同じぐらいのメイドだった。

「お呼びでしょうか、シロヤ様。」

 かしこまった態度にシロヤはまたもや萎縮してしまった。

「えぇっと・・・名前は?」

 萎縮したあまり出た言葉は、まるでナンパでもしてるかのような質問だった。メイドは一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐさま対応してみせた。

「私はシロヤ様専属のメイドに任命された、クピンという者です。至らぬ点があるかもしれませんがよろしくお願いいたします。」

 深々と礼をするクピン。シロヤも礼で返す。

「実は砂風呂の準備ができましたので、これからお呼びしようと思っていたのですが、いかがなさいますか?」

 砂風呂は、砂漠地帯のバスナダの名物だ。他の砂漠地帯とは違う、特有の成分が入った砂風呂は美肌効果が高いと他国でも噂になるほどだ。もちろん、シロヤはバスナダに来てから砂風呂に入ろうと思っていた。

「じゃあお願いします!」

「ではこちらです、ついてきてください。」


 クピンに連れられ、シロヤは城の廊下を歩いた。

 その途中、ぶつぶつと呟きながら兵士がシロヤの脇を通った。誰に聞かせるわけでもない声でぶつぶつと呟く兵士。兵士は、さっきクロトを連れていった人、名はバルーシだ。シロヤは、レーグにも感じた違和感を再び覚えた。

 一度覚えた違和感はどこまでもついてきた。急に変な緊張を覚えるシロヤ。

 緊張を覚えたままのシロヤを、クピンは何も気付かないまま案内する。

「こちらが砂風呂です。では入る前にお背中をお流しします。」

「へっ!?」

 さっきまでの違和感が飛んでいった。


「ふぅ・・・何か無駄に気を使った気がする・・・。」

 人から背中を流してもらうなんて初めての経験だったシロヤは、気を休めるどころの話ではなかった。つるつるになった肌が、より冷や汗を倍に感じさせた。

「・・・トイレどこだ?」 冷や汗が尿に変わったのか、急にもよおしてきたシロヤ。場所がわからず、成り行きで部屋の外に出てみる。

 長い廊下の先、シロヤの部屋から五つほど離れた部屋のドアに、一人の兵士が立っていた。ドアにぴったりと耳をつけている。どうやら盗み聞きをしているらしい。何か殺気立ってる気がしないでもない。そして周りには誰もいない。

「背に腹は変えられないか・・・。」

 流石に後ろから話しかけても斬られはしないだろう。勇気を出して兵士に話しかけてみる。

「あの・・・トイレは・・・。」

 兵士はこちらを振り返り、手のひらを開いてシロヤに向ける。「待て」のサインだ。

「・・・・・・・・・よし。」

 兵士はしばらくしたのち、シロヤの腕を掴んで近くの部屋に入った。中はどうやら会議室らしき場所だった。部屋の中にあったドアを指差す兵士に会釈をし、シロヤはドアを開けて小部屋に入った。

「・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ〜!」


「さっきはすまなかった。どうしても聞きたいことがあったのでな。」

 兵士はシロヤに頭を下げる。

「いや、別にいいですよ。こっちも何かすみません。」

 今二人がいる場は、どうやら兵士の休憩室兼作戦会議室らしい。夜も遅いため、二人以外誰もいない。

 二人しかいない空間に流れる沈黙。耐えきれなさそうと感じたシロヤは、部屋から出ようとドアに向かって歩きだした。

「ありがとうございました。じゃあおやすみなさ」

「シロヤ様。」

 シロヤの言葉を遮るバルーシ。急に顔つきが変わり、口調も重くなる。

「・・・勇敢なシロヤ様になら話せるでしょう。しかし、ここで聞いたことは他言無用でお願いしたい。」

「・・・・・・・・・はい。」

 勇敢な、の部分を訂正する前に肯定してしまったシロヤ。バルーシを取り巻く異様な雰囲気、重々しい空気がシロヤをうなずかせた。

 バルーシはゆっくりと話を続けた。

「この国には、政治を行う"バスナダ七人衆"という機関があります。最近、その機関が不穏な動きをしているという情報が入ったのです。」

 シロヤは瞬時に悟った。自分は今、とんでもないことに片足を突っ込んでいるのではないかと。

「こんなこと、他国の者に頼むのも変かもしれませんが、ぜひ我々と調査をしていただきたいのです。」

「いやいや!俺は勇敢でも何でもありませんから!ただの農民でして!」

 必死に誤解を解くシロヤに向かって、何度も頭を下げるバルーシ。

「お願いします!無理矢理なのは百も承知、しかし、女王様の命も関わっている可能性がある以上、戦士一人の戦力、学者一人の知恵でも必要なのです。」

 必死に頭を下げるバルーシに、シロヤはとうとう折れ始めていた。

「いや・・・でも・・・。」

 再びしどろもどろになるシロヤ。

「!!!」

 一瞬、バルーシが動いた。背中の剣に手をかけ、闘志を剥き出しにする。

 ビックリして後ろを振り替えると、ドアの向こうに気配を感じた。

「中に誰がいるの〜?」

 大人の女性の声だ。それを聞いたバルーシは、戦闘体制を解いてドアを開けた。

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