呼応
砂丘の向こうから流れてきた光は、瞬く間に砂漠を包み込んでいく。光はさらに増えていき、やがて、倒れているレジオンやランブウやバルーシ、そして、全く動かないシロヤも包み込んだ。
「何ですかこれは!!!何が起こっているんですか!?」
レーグは光に包まれながら、疑問の言葉を発している。
プルーパは力を振り絞り、光輝く砂をすくって、霞む視界で砂を見つめた。
「これ・・・まさか・・・。」
プルーパは砂を見つめながら、信じられないと言うような表情を浮かべていた。
プルーパがすくった砂は、一粒一粒が光輝いていて、見ているだけで力が湧いてくる。
「砂じゃない・・・やっぱりこれは・・・!」
プルーパが言葉を発しているのに気づいたレーグは、すぐさまプルーパに近づいて叫んだ。
「これは・・・何なんですか!答えなさい!」
レーグが杖を振るう。しかし、砂の針が出現することはおろか、砂は一切の動きを見せなかった。
「何故!?何故砂を操れない!」
焦りを見せるレーグに、プルーパは倒れながらゆっくりと語りだした。
「簡単よ・・・だってこれ・・・砂じゃないもの・・・。」
「砂じゃない!?ならば何だと!」
「自分で・・・確かめなさい・・・!」
レーグはすぐさま砂をすくった。途端に、レーグの顔が青ざめていった。レーグの手のひらの上の物は、"星の形をした砂金"だった。そしてこの砂金の正体を、レーグはよく知っていた。
「これは・・・まさか!」
「そうよ・・・!あなたが求めていたもの・・・星よ・・・!」
砂漠に広がる光は、全ては星が放っていた砂金の光だったのだ。レーグの手から星が降り落ちるが、拾おうともせずにレーグはさらなる疑問を投げ掛けた。
「しかし・・・何故急に・・・!」
「流星・・・。」
霞むような声でプルーパが呟いた。
流星。百年に一度、星の形をした砂金が出現する現象。プルーパもレーグも初めて見る現象だったが、それは当然の話だった。
「しかし・・・まだ百年経ってないはずでは!」
「ふふふ・・・。」
プルーパは静かに笑った。まるで全てが分かっているかのように。
「呼び寄せたのよ・・・星に選ばれた戦士が・・・ね。」
その瞬間、レーグの後ろで光の柱が上がった。光はゆっくりと砂金となって落ちていき、現れたのは一人の戦士の姿だった。
「ぐぅ!くそ!」
「あぅ!」
プルーパの頭を全力で踏みつける。気絶する直前のプルーパは、何故だか微笑んでいた。
気にせずに何度も頭を踏みつけるレーグ。
「・・・おい。」
声が聞こえた瞬間、レーグの肩に誰かの手がかかった。その手には一切の傷がなく、星と同じように光輝いているようだった。
「その足を・・・離せ。」
すぐさま魔法で距離をとるレーグ。プルーパが光に包まれていくのを見守りながら、選ばれた戦士は星に向かって優しく微笑んだ。
「貴様が選ばれた戦士なのか!シロヤ!」
レーグの叫びに選ばれた戦士が反応し、ゆっくりと口を開いた。
「あぁ、気づいたら傷も何も無くなっていた。」
そして、選ばれた戦士―――シロヤはゆっくりと剣を構えた。
しかし、レーグは構えようとせず、嬉々とした表情を浮かべた。
「素晴らしい・・・素晴らしいよ!君は星の素晴らしさを教えてくれたのだ!」
レーグはそのまま星を掴んだ。
「さぁ!その素晴らしき力を私にも!これがあれば無敵!敵無し!最強だ!ヒヒヒヒヒ!」
高笑いしながら、どんどんと星を撒き散らしていくレーグ。しかし、星はレーグの周りでゆっくりと落ちていくだけで、力を与えるようには見えなかった。
「何故だ・・・何故私の力は増えないのだ・・・。」
愕然とするレーグ。一瞬まばたきをした瞬間、レーグの目にはシロヤの顔が映りこんだ。
「しまっ!」
防御をしようとしたが間に合わず、シロヤの剣がレーグの上半身を横に斬りつけていた。
「うあぁ!」
後ずさりをしながら、レーグは切られた傷跡に魔法をかけようとする。しかし、その一瞬よりも短いと思われる瞬間に、シロヤは第二撃をレーグに与えた。
「くっ!」
足を切られ、思うように動けなくなったレーグは、そのまま地面に倒れこんだ。
「くぅ!何故だ!何故なんだ!」
またもや一瞬隙を見せたレーグ。その一瞬のうちに、シロヤはもう間合いを詰めていた。
「さっきのはバルーシさんの分、今のはランブウさんの分だ。」
ゆっくりと、シロヤは腕に剣を突き立てた。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!」
「これが・・・レジオンさんの分。」
突き立てた剣を引き抜き、右足を高く上げた。そのまま高く上げた右足を、レーグの頭めがけてまっすぐに勢いよく降り下ろした。
「がはっ!」
「これが・・・プルーパ様の分だ。」
頭を踏みつけられたレーグは、ゆっくりと立ち上がって再び構えた。
しかし、構えるという戦闘での一動作すら、今のシロヤにとって間合いを詰めるには十分な時間だった。