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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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呼応

 砂丘の向こうから流れてきた光は、瞬く間に砂漠を包み込んでいく。光はさらに増えていき、やがて、倒れているレジオンやランブウやバルーシ、そして、全く動かないシロヤも包み込んだ。

「何ですかこれは!!!何が起こっているんですか!?」

 レーグは光に包まれながら、疑問の言葉を発している。

 プルーパは力を振り絞り、光輝く砂をすくって、霞む視界で砂を見つめた。

「これ・・・まさか・・・。」

 プルーパは砂を見つめながら、信じられないと言うような表情を浮かべていた。

 プルーパがすくった砂は、一粒一粒が光輝いていて、見ているだけで力が湧いてくる。

「砂じゃない・・・やっぱりこれは・・・!」

 プルーパが言葉を発しているのに気づいたレーグは、すぐさまプルーパに近づいて叫んだ。

「これは・・・何なんですか!答えなさい!」

 レーグが杖を振るう。しかし、砂の針が出現することはおろか、砂は一切の動きを見せなかった。

「何故!?何故砂を操れない!」

 焦りを見せるレーグに、プルーパは倒れながらゆっくりと語りだした。

「簡単よ・・・だってこれ・・・砂じゃないもの・・・。」

「砂じゃない!?ならば何だと!」

「自分で・・・確かめなさい・・・!」

 レーグはすぐさま砂をすくった。途端に、レーグの顔が青ざめていった。レーグの手のひらの上の物は、"星の形をした砂金"だった。そしてこの砂金の正体を、レーグはよく知っていた。

「これは・・・まさか!」

「そうよ・・・!あなたが求めていたもの・・・星よ・・・!」

 砂漠に広がる光は、全ては星が放っていた砂金の光だったのだ。レーグの手から星が降り落ちるが、拾おうともせずにレーグはさらなる疑問を投げ掛けた。

「しかし・・・何故急に・・・!」

「流星・・・。」

 霞むような声でプルーパが呟いた。

 流星。百年に一度、星の形をした砂金が出現する現象。プルーパもレーグも初めて見る現象だったが、それは当然の話だった。

「しかし・・・まだ百年経ってないはずでは!」

「ふふふ・・・。」

 プルーパは静かに笑った。まるで全てが分かっているかのように。

「呼び寄せたのよ・・・星に選ばれた戦士が・・・ね。」

 その瞬間、レーグの後ろで光の柱が上がった。光はゆっくりと砂金となって落ちていき、現れたのは一人の戦士の姿だった。

「ぐぅ!くそ!」

「あぅ!」

 プルーパの頭を全力で踏みつける。気絶する直前のプルーパは、何故だか微笑んでいた。

 気にせずに何度も頭を踏みつけるレーグ。

「・・・おい。」

 声が聞こえた瞬間、レーグの肩に誰かの手がかかった。その手には一切の傷がなく、星と同じように光輝いているようだった。

「その足を・・・離せ。」

 すぐさま魔法で距離をとるレーグ。プルーパが光に包まれていくのを見守りながら、選ばれた戦士は星に向かって優しく微笑んだ。

「貴様が選ばれた戦士なのか!シロヤ!」

 レーグの叫びに選ばれた戦士が反応し、ゆっくりと口を開いた。

「あぁ、気づいたら傷も何も無くなっていた。」

 そして、選ばれた戦士―――シロヤはゆっくりと剣を構えた。

 しかし、レーグは構えようとせず、嬉々とした表情を浮かべた。

「素晴らしい・・・素晴らしいよ!君は星の素晴らしさを教えてくれたのだ!」

 レーグはそのまま星を掴んだ。

「さぁ!その素晴らしき力を私にも!これがあれば無敵!敵無し!最強だ!ヒヒヒヒヒ!」

 高笑いしながら、どんどんと星を撒き散らしていくレーグ。しかし、星はレーグの周りでゆっくりと落ちていくだけで、力を与えるようには見えなかった。

「何故だ・・・何故私の力は増えないのだ・・・。」

 愕然とするレーグ。一瞬まばたきをした瞬間、レーグの目にはシロヤの顔が映りこんだ。

「しまっ!」

 防御をしようとしたが間に合わず、シロヤの剣がレーグの上半身を横に斬りつけていた。

「うあぁ!」

 後ずさりをしながら、レーグは切られた傷跡に魔法をかけようとする。しかし、その一瞬よりも短いと思われる瞬間に、シロヤは第二撃をレーグに与えた。

「くっ!」

 足を切られ、思うように動けなくなったレーグは、そのまま地面に倒れこんだ。

「くぅ!何故だ!何故なんだ!」

 またもや一瞬隙を見せたレーグ。その一瞬のうちに、シロヤはもう間合いを詰めていた。

「さっきのはバルーシさんの分、今のはランブウさんの分だ。」

 ゆっくりと、シロヤは腕に剣を突き立てた。

「ぐぁぁぁぁぁ!!!」

「これが・・・レジオンさんの分。」

 突き立てた剣を引き抜き、右足を高く上げた。そのまま高く上げた右足を、レーグの頭めがけてまっすぐに勢いよく降り下ろした。

「がはっ!」

「これが・・・プルーパ様の分だ。」

 頭を踏みつけられたレーグは、ゆっくりと立ち上がって再び構えた。

 しかし、構えるという戦闘での一動作すら、今のシロヤにとって間合いを詰めるには十分な時間だった。

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