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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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絶望

 目を閉じて死を覚悟したプルーパ。しかし、体に痛みは訪れてこなかった。

 ・・・自分はもう死んでいるのだろうか?

 そんな考えが頭をよぎる。

「・・・。」

 ゆっくりと目を開けるプルーパ。目の前の景色が頭に流れ込む。

「!!!!!」

 瞬間、プルーパは声にならない叫びを上げた。針の壁は、プルーパと壁の間に現れた第三者によって止められていた。第三者は壁の針を全身に受け、おびただしい量の血を出しながら壁の進行を止めていた。真っ赤な血がプルーパにまで届く勢いで吹き出し、プルーパの頭をわずかに染めた。

「ぅ・・・。」

「シロヤ君!!!!!」

 針の壁を、シロヤは体で止めていた。自分の血で服や髪を真っ赤に染めながら、シロヤは必死に壁を止めていた。

「プルーパ・・・さ・・・ま・・・。」

「シロヤ君・・・!!!」

 消えそうな声で名前を呼ぶシロヤを見て、プルーパはぼろぼろと涙を流した。そんなプルーパに、シロヤは必死に微笑んだ。

「もうやめて・・・!シロヤ君・・・!」

 涙を流しながら懇願するプルーパだが、シロヤは何も言わずに微笑み続けた。

 本来なら絶命してもおかしくないぐらいの傷を受けながらも、シロヤはまだ生きている。そんな事実を受け止められないレーグは、今までに見たことない程の叫びを上げた。

「うぬぅ!何故まだ生きているんですか!!!」

 軽く杖を振って砂の檻を壁ごと崩す。それによって、シロヤとプルーパは外へと出された。

 すぐさまレーグは杖を震い、シロヤの足元に砂の針を作り出した。砂の針が勢いよくシロヤの両足を貫いた。

「ぐぅぅ!」

「いやぁ!もうやめて!」

 プルーパが叫んだ瞬間、新たに現れた砂の針が、同じくプルーパの足を貫いた。

「きゃあああ!!!」

「ぐ・・・プルーパ様・・・!」

 両足の支えを失って、プルーパはそのまま前のめりに倒れこんだ。

「ヒヒヒヒヒ!素直に全身を貫かれて死んでいればいいものを!」

「レーグ・・・!レーグ!」

 貫かれた足に精一杯の力を込めて、思いっきり地面を蹴る。そのままレーグめがけて、シロヤは我が身を投げ出すかのように走り出した。

「まだ動けるんですか?なら・・・こうしましょう!」

 シロヤの進路の砂が盛り上がり、またもや砂の針が勢いよく飛び出て、シロヤの右胸を狙った。

「ぐ・・・うぉぉ!」

 走りながら叫ぶシロヤ。叫んだ衝撃で全身の傷から血が吹き出るが、お構いなしにシロヤは走り続けた。

「右胸・・・狙いは・・・右胸!」

 右胸を狙って飛び出てきた砂の針を避けて、その勢いのままレーグに体当たりした。

「うぐっ!」

 シロヤの体当たりを受け、レーグは後ろに吹っ飛んだ。

「ぐぅぅ!少しあなたをなめていたみたいですね!」

 レーグはさらに杖を振るった。その瞬間、地響きと共に大量の砂がレーグの周りで浮き始めた。

「ヒヒヒヒヒ!」

 また杖を振ると、大量の砂が大量の砂の槍へと変化した。

「ヒーヒヒヒ!これだけの砂の槍!避けきれますかな!?ヒーヒヒヒ!」

 三度杖を振ると、砂の槍がまるでマシンガンのようにシロヤに向けて放たれた。

「くぅぅ!」

 剣でその身を守りながら、ゆっくりと前に進もうと足を前に出す。しかし、その足を狙って砂の槍が降り注ぎ、シロヤの足をまるでサボテンのような姿に変えた。

「うぅぅ!!!」

 苦痛を訴えるような声が漏れる。しかし、攻撃は全く止まない。

 踏み出した足だけでなく、もう片方の足や腕にも砂の槍が突き刺さり、頭を掠めた砂の槍は、わずかに尖端を血で染めて地面に還っていく。

「そろそろ・・・幕を下ろしましょう!」

 一際大きな挙動で杖を振ると、大量の砂の槍が一点に向かって降り注いだ。

「これで終局です!」


・・・・・・・・・・・・・・・。


 レーグ以外の全員が同じ方向を見ていた。そして、声はおろか息すらままならない状況に陥っていた。

「シロヤ・・・君・・・。」

「シロヤ・・・シロヤ・・・!」

 プルーパとレジオンの声がどんどんと震えていく。もはやその声からは、冷静さを完全に欠いていた。

「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ヒーヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 無情に響く高笑い。その先にいたのは、槍に上半身の大半を貫かれて、完全に力を無くしたシロヤの姿があった。

「シロヤ君・・・シロヤ・・・君・・・。」

 倒れながら、いつまでも名前を呼び続けるプルーパ。いつの間にか地面の砂を握っていた。砂はいくら強く握っても、まるで流れるようにプルーパの手から落ちていった。

 サラサラと流れ落ちる砂。それはいつの間にか、小さな山を作っていた。

「シロヤ君・・・シロヤ君・・・!」

 名前を呼び続けるプルーパの目に、一瞬だけ砂の山が光ったように見えた。

 一瞬だと思った光は、どんどんと強くなっていく。

「っ!」

 一際強い光の後にプルーパが目にしたのは、大量の光が砂丘の向こうから流れてくる光景だった。

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