窮地
「シロヤァ!!!」
「シロヤ君!!!」
「ヒヒヒヒヒ!ヒヒヒヒヒ!ヒーヒヒヒ!」
レジオンとプルーパが同時に叫ぶ。その先にいるのは、高笑いを続けるレーグ。そして、まるで糸が切れたように膝から崩れ落ちるシロヤの姿があった。
「レーグゥゥゥ!!!」
ドドドドドドドド!!!
「!?」
突然、怒号とともにレーグの足元で砂が舞い上がった。
「誰だ!?」
レーグは、何かが飛んできた方向を向いた。
「貴様は・・・何故ここに・・・?」
レーグの向いている方向にいたのは、傷だらけの青年を抱えた男だった。
「若い新芽を摘むなんて・・・悪趣味すぎないか?レーグ。」
突然の乱入者―――ランブウが、レーグに二丁の拳銃を向けた。
しかし・・・。
「ヒーヒヒヒ!誰が来たかと思えば・・・古株の門番風情の役立たずですか!ヒーヒヒヒ!」
嘲笑うかのように高笑いするレーグに、無言でランブウは銃弾を放った。
「ヒヒヒヒヒ!」
高笑いしながら、レーグは杖を振って砂の壁を作り出した。銃弾は砂の壁に阻まれ、壁の後ろにいるレーグには届かなかった。
「ちっ・・・。」
「ヒヒヒヒヒ!わからないんですか?銃士なんて低級クラスの人間が賢者に立ち向かうこと自体が愚かだと言うことを!」
「黙れ・・・。」
構わず発砲しようと引き金に力を加えるランブウ。
「!?」
しかし、ランブウがいくら引き金に力を加えても、銃口から弾は発射されなかった。
ランブウが銃口を確認すると、銃口には砂が奥まで詰められていた。
「くそっ・・・。」
二丁の拳銃を素早くしまって、流れるような素早い動作で、背中にかけてあった散弾銃に手を伸ばした。
しかし、レーグにとっては今のランブウの動きは遅すぎるぐらいだった。
すぐさま杖を振るレーグ。その瞬間、ランブウの足元が鋭く盛り上がり、砂の針が出現してランブウの腕を貫いた。
「っ!」
砂の針を伝って、ランブウの血が地面に落ちていく。血がだんだんと落ちていくにつれて、腕の力が無くなっていき、いつの間にか散弾銃を地面に落としてしまっていた。
「ヒヒヒヒヒ!腕破壊は銃士相手に一番効果的ですからね!」
再び杖を振ると、出現したのは砂の拳だった。砂の拳は、素早くランブウの鳩尾を狙って伸びていった。
ドス!
「ぐぅ!」
そのまま後ろに吹っ飛ばされるランブウ。そして、ランブウに支えられていたバルーシは、支えを失ってしまい前のめりに倒れた。
「うぅ・・・。」
「そこのゴミも処理しておきましょう。」
倒れた衝撃で目を覚ましたバルーシに向かって、レーグは軽く杖を振った。
その瞬間、バルーシの胸をめがけて、砂の針が素早く突き刺さった。
「ぐわぁぁぁ!!!」
再び前のめりに倒れるバルーシ。倒れている所の砂が徐々に赤く染まっていった。
「レーグ・・・!シロヤ君だけじゃなくランブウとバルーシまでも・・・!許さない!」
檻の中のプルーパが激昂して、短剣を構えた。
「ヒヒヒヒヒ!さっき無駄だとわかったのではないのですか?」
レーグの言葉が終わる前に、プルーパは短剣を高速で投げていた。
「だから無駄だと言っているでしょう!ヒヒヒヒヒ!」
すぐさま砂の壁が出現して、プルーパの短剣はそこで阻まれてしまった。
「ヒヒヒヒヒ!檻の中にいても危険ですね・・・ならば・・・。」
レーグは再び杖を振った。それはプルーパに向かってではなく、その後ろの砂の檻に向かってだった。
「危ない危ない!まさか砂の格子を破壊しようなんて・・・。」
見ると、砂の格子がひしゃげていた。ひしゃげた格子を破壊しようと、閉じ込められていたレジオンは、格子に何度も大剣をぶつけていた。
「ヒヒヒヒヒ!出られてはたまりませんから・・・。」
その瞬間、レジオンを包む檻が変化した。再び復活した格子。そして、新たに現れたのは、まるで拷問器具のような針の壁だった。
「ちっ!また破壊すればいいだけだろうが!」
再び大剣をぶつけた。
その瞬間、砂の格子から新たに砂が現れ、大剣もろともレジオンを絡めとった。
「くそ!離しやがれ!」
暴れて砂から逃れようとしているレジオンに向かって、容赦なく近づいてくる。
そして・・・。
「ぐあああぁぁぁ!!!」
無情に貫かれるレジオンの体。おびただしい量の血が針の壁を真っ赤に染まる。
「レジオン!!!」
プルーパが叫んだ。
次の瞬間、プルーパを閉じ込めていた砂の檻が変化した。
「えっ?何!?」
怯えた声を出すプルーパに向かって砂が伸び、プルーパの体を絡めとった。
「いやぁ!シロヤ君!シロヤ君!」
「無駄ですよ無駄!シロヤは死んだんですよ!ヒヒヒヒヒ!ヒーヒヒヒ!」
すでに目の前まで迫っていた砂の壁。解けない砂の拘束。プルーパは思わず目を閉じた。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。