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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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攻防

 腕を包む砂が、次第に形となってくる。レーグの腕に現れたのは、またもや巨大な砂の剣だった。

「また剣かよ・・・。」

「ヒヒヒヒヒ!ただの剣ではないですよ!」

 そう言うと、レーグは剣を振り上げて地面を切った。


「!!!!!」


 激しい音が鳴り響き、思わずシロヤは目を閉じた。

「ヒヒヒヒヒ!現実を確認しなさい!」

 ゆっくりとシロヤは目を開け、レーグが切った地面を確認した。

「っ!!!」

 思わず後ろに下がる。

 シロヤが見たのは、レーグが砂の剣で切った地面だった。砂の地面は激しく切り裂かれ、まるで地割れのようになっていた。

「ヒヒヒヒヒ!では・・・行きますよ!」

 間髪入れずに飛び出してくるレーグ。右肩を狙って繰り出された剣を、シロヤは咄嗟に剣で受け止めた。

「ぐぅ!」

「ヒヒヒヒヒ!」

 不気味に含み笑いを続けるレーグと拮抗するシロヤ。

 砂の大剣を受け止めた時とは比べ物にならないくらいに重い一撃。剣を持っている手に強い衝撃が走る。

「ちっ!」

「隙有り!」

 強い衝撃を受けたシロヤの手が、一瞬弛んだ。その一瞬の隙を狙って、レーグは体制を変えた。空中で重心を軸にして体を横回転させ、シロヤが構えていた逆側に剣を持っていった。


ヒュン!


「なっ!」

 受けが間に合わないと思ったシロヤは、身を屈めてしゃがみこんだ。レーグの剣が豪快に空を切る。

 すかさずレーグに一撃を与えようと、思いっきり地面を蹴るシロヤ。勢いをつけて、シロヤは剣を振った。


ザシュ!


「!?」

 手応えがなかった。空中で剣を振り切っているため、レーグは隙だらけなはずだ。しかし、シロヤの剣が捉えたのは砂の塊だった。砂の塊は、真っ二つに割れて地面に落ちていった。

「ダミー・・・?」

「ヒヒヒヒヒ!」

 同じく剣を振り切って、隙だらけになったシロヤの後ろに現れたのは、同じく砂の塊だった。砂の塊はシロヤに向かって飛び込んでいき、射程距離内に入った時には、砂が無くなりレーグの姿が現れた。

「後ろとったり!ヒヒヒヒヒ!」

 シロヤを後ろから切りつけようと、レーグは剣を振り上げた。

 その瞬間、シロヤが動いた。

「っ!」

 一瞬ためらったレーグ。しかし、シロヤは目立った動きをしなかった。

 気にせずレーグは、シロヤの背中めがけて剣を降り下ろした。


キィィィン!


「っ!?」

 振り下ろした剣はシロヤには届かず、力によって軌道を変えられてしまった。空中でよろめきながら見てみると、シロヤは剣を左手に持ち替えていた。

「ぐぅ!なぜ左手に・・・。」

 レーグは空中で体制を整えようとするが、その一瞬の隙に、シロヤは地を蹴っていた。

「しまった!狙いはそれか!」

「当たり!」

 空中で無防備な状態のレーグに、渾身のパンチを入れる。

「ぐぅ!」

 後ろに吹き飛ぶレーグ。

 シロヤは、後ろから来た剣を左手で持った剣で返すことで、その勢いを利用した右手での攻撃を狙ったのだ。

 確かに、シロヤの利き手である右手で剣を受けた方が力を加えやすいが、左手の攻撃は慣れていないため、威力が落ちてしまう。

 逆も同じだが、勢いをつけることで利き手じゃない方の手の力をカバーして、慣れている方の右手の攻撃の方には、さらなる勢いを足すことができたのだ。

「うぅ・・・戦闘中にそれだけの策を練ることができるとは・・・。」

 よろめきながら、レーグが立ち上がる。

「ふぅ・・・やはり接近戦なんてアホらしいですね・・・。」

 レーグはやれやれと言わんばかりに、両手を横にしてため息をついた。

「考えてみれば、賢者が剣での接近戦なんてバカみたいな話ではないですか?」

 問いかけてきたレーグに、シロヤは無言のまま剣を構えた。

「そもそも、私は国を思っているからこそシアン様暗殺を決行したんですよ。」

「はぁ?何言ってるんだ!」

 さっきまでの戦意は消え去っていて、普段のレーグのような口調で淡々と語り続けた。

「シアン様は本来、いてはいけなかった存在。しかし、今日のバスナダを束ねる女王となっている。皮肉なものですな。ヒヒヒヒヒ!」

 相変わらず、人をイライラさせる口調と含み笑いだ。シロヤは聞き流そうと剣を持ち直した。

「まぁ・・・私はバスナダが好きですからね。願わくは私が新たな王となり、よりバスナダを住みやすく発展させようとしていたのですが・・・。」

「黙れ!お前は・・・バスナダを軍事国家にして全世界の頂点に!」


ドス!


「・・・えっ?」

 突如現れた痛み。それは、シロヤの心臓部近くの痛みだった。

「もういいでしょう。あなたとシアン様の二人が死ぬことで、一番この国は平和になるのですから。」

「な・・・に・・・?」

「この国は私が責任を持って管理いたしますから。」

 レーグは杖を軽く振るった。その瞬間、シロヤの胸に刺さっていた砂のトゲが、形を崩して地面に落ちていった。

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