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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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策略

 クピンが霊力を注ぎ込んだ結果、シロヤの剣は名刀と言えるレベルにまで上がっていた。

「ヒヒヒヒヒ!無名の名刀が相手ですか。これはお厳しい・・・ヒヒヒヒヒ!」

 口では厳しいと言っているが、その表情には余裕があった。

「それならば手加減はいらないでしょう。ヒヒヒヒヒ!」

 軽い含み笑いをしながら、レーグは再び杖を振るった。

 身構えるシロヤの前に現れたのは、四体の砂の人形だった。

「さぁ、サンドドール達よ。お相手して差し上げなさい。」

 そう言った瞬間、四体の砂人形が同時にシロヤに飛びかかった。

 砂人形の動きは早く、さらに四体同時に相手しているシロヤは、明らかに不利だった。

 剣がレベルアップしたとはいえ、シロヤ自身の力が上がったわけではない。四体の砂人形を同時に相手取り、シロヤは苦戦を強いられて苦い顔をする。

「ぐっ・・・。」

「ヒヒヒヒヒ!」

 四体の砂人形に翻弄されるシロヤ。それを見ながら、レーグはさらに含み笑いを続けた。

 次第にシロヤの体に傷が増えていく。

「くそっ!」

 決死の覚悟で剣を振るう。剣が砂を捉え、一体の砂人形がその姿を崩した。

「えっ?」

 確かに剣は砂人形を捉えたが、切っても手応えを感じずに崩れてしまった。

 明らかに脆い。さっきの砂の剣に比べると、その差は歴然だ。

「まさか・・・魔力を節約してるのか?」

 一瞬の閃きがシロヤによぎる。

 レーグは、先程の砂の塔と砂の針と砂の剣で、魔力をかなり使っていた。さらに、レジオンとプルーパを封じている砂の檻の維持コストを加えると、レーグの魔力は半分以上は減っていた。

 しかし、賢者は自然と魔力が回復する。そして、今使っている砂人形の維持コストは非常に低い。つまり、レーグは今、魔力を回復する時間稼ぎを砂人形に任せているのだ。

 砂人形が脆いのは、砂人形の耐久力はレーグが消費する維持コストと比例するためである。現在レーグが消費している維持コストは、砂人形の形を保たせて戦わせる程度しか消費していない。

 シロヤはそれに気づき、すぐさま攻撃の体制に入る。

 一体を失ったことによって、砂人形のコンビネーションに隙間ができ始めていた。タイミングを見計らい、シロヤは隙間を狙って剣を振るう。

 砂人形一体が形を崩す。

「ヒヒヒヒヒ!」

「!」

 含み笑いが聞こえた。見てみると、レーグの目の前に何かが現れた。現れたものは、高速回転しながらシロヤに向かってくる円盤状の砂だった。

「砂の・・・ノコギリ!」

 すぐさま体制を変えて飛び出すシロヤ。続けて二体の砂人形もシロヤを追う。

「ヒヒヒヒヒ!逃げても無駄ですよ!」

 ノコギリがもう一つ増えた。日本の砂のノコギリもシロヤのあとを追う。

「ちっ!」

 逃げ回るシロヤ。それを追う砂人形と砂のノコギリ。時には砂人形を誘導するかのように、時には砂のノコギリを撒くかのように動き回る。

 しかし、どれだけの動きをしても、砂人形も砂のノコギリも諦めてはくれない。

「・・・うわぁ!」

 急に転んだシロヤ。その前には、二体の砂人形が待ち構えていた。

「ヒヒヒヒヒ!もう終わりですよ!やってしまいなさい!」

 砂人形の手が伸びていき、先が針のように尖った。それを見たシロヤは、後ろに手をつきながら笑い出した。

「ヒヒヒヒヒ、死の直前が怖くて壊れてしまいましたかな?」

「フフフフフ・・・。」

 笑みを止めないシロヤ。

 そして、二体の砂人形がシロヤに向かって、尖った手を突き出した。


「!!!やめろ!」


 急な叫び。その叫び主は、シロヤに・・・ではなく、シロヤの前の砂人形のさらに後ろに叫んだ。

「お前達!避けろ!避けるんだ!」

 叫び主は、今度は砂人形に向かって叫んだ。

 叫び主はレーグだった。レーグが叫んだのは、二回目は砂人形だが、一回目は砂のノコギリに向かってだった。

 砂のノコギリは、シロヤに向かってどこまでも着いてくる。そして、今のノコギリの位置とシロヤの間には、砂の人形がいた。

 どんどんと近づいていく二枚のノコギリ。後ろにノコギリが迫っていることを知らない砂人形。

 そして・・・。


ザシュ!!!


 シロヤの前で、二体の砂人形が切れるような音と共に形を崩した。砂人形にぶつかっていった二枚の砂のノコギリも、同じく形を崩した。

「よし!何とかなった!」

 体制を立て直したシロヤは、小さくガッツポーズをした。

「むぅ・・・まさか・・・人形とノコギリの位置を誘導していましたね?」

 ノコギリが出現してからのシロヤの動きは、人形とノコギリをぶつけるために誘導するためのものだったのだ。

 再び剣を構えるシロヤ。それに対して、レーグは始めて表情を歪ませた。

「少々油断しましたね・・・では、そろそろ本気でいきましょうか!ヒヒヒヒヒ!」

 レーグは杖を振るった。その瞬間、レーグの足元の砂が盛り上がり、レーグの腕を包み込んだ。

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