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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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防戦

 突撃してくるシロヤをみて、レーグが軽く含み笑いをした。

「ヒヒヒヒヒ!攻めが単調すぎですよ!」

 レーグが杖を振るうと、突然砂が盛り上がって塔となり、シロヤとレーグの間に立ちふさがった。急な障害が出現して、シロヤは立ち止まった。

「ヒヒヒヒヒ!」

 砂の塔の向こうから含み笑いが聞こえた。その瞬間、砂の塔が盛り上がり、そこから砂の針が放たれた。

「うわぁ!」

 飛んでくる砂の針を避けようと、シロヤは横に跳んだ。

 避けきれなかった分の針がシロヤの体を掠めて、軽い傷がいくつも刻まれた。

「なるほど、反射神経は中々のものですね。」

 砂の塔の奥からさらに聞こえるレーグの声。

 その声が聞こえると同時に、シロヤに向かってさらに針が放たれた。

 すぐさま体制を立て直して、横に跳ぼうと足に力を込めたした瞬間、シロヤの足元の砂が盛り上がった。

「!」

 盛り上がった砂がシロヤの脇腹に向かって伸びていった。

「うっ!」

 足元からの急な攻撃に対応できず、直撃を食らったシロヤ。よろけるシロヤに向かって、放たれた針が襲いかかった。

「くっ!」

 真正面から飛んでくる針。構えた剣で体を守るが、腕や足に針が刺さり、シロヤの服を赤く染めていく。

「ヒヒヒヒヒ!随分と粘りますね。」

「ぐっ・・・このままじゃ・・・。」

 これ以上は持たないと思ったシロヤは、何かを決心するかのように目を閉じた。

 カッ!と目を見開き、シロヤは自分の体を守っていた剣を下ろした。

「シロヤ君!?」

「くぅ!」

 思わずプルーパが叫んだ。

 剣で守っていた体に針が刺さり、シロヤの顔が苦痛に歪んでいく。

「ヒヒヒヒヒ!諦めて死ぬ気になりましたか?」

 さらに笑うレーグ。そんなレーグを見たシロヤの顔が、一瞬笑みに変わった。

「誰が・・・そんなこと言った!」

 叫ぶと同時に、シロヤは足を前に出した。

「シロヤ!まさかお前・・・進む気か!?」

 思わずレジオンが叫んだ。

 シロヤは、針が飛んでくる方に向かって歩き始めた。勢いを増していく針を身体中に受けながら、シロヤは一歩一歩踏み出していった。

「むぅ!針は効果なしですか。」

 途端に針が止み、さらに大きく砂の塔が盛り上がった。

「ヒヒヒヒヒ!これはどうですか!?」

 盛り上がった砂から、巨大な砂の剣が現れ、シロヤに向かって伸び始めた。巨大な砂の剣を前にして、シロヤは下ろしていた剣を再び構えた。

「ヒヒヒヒヒ!止める気ですか?無駄ですよ無駄!ヒーヒヒヒヒ!」

 高笑いをするレーグ。

 しかし、シロヤの表情は決意に満ちていた。

「止める・・・止めてみせる!」

 砂の剣が勢いを増し、シロヤに襲いかかる。それに向かって、シロヤは剣を振るった。

「シロヤ!」

 レジオンが叫んだと同時に、砂の剣はシロヤに到達した。

「ぐぅぅぅ!!!」

 シロヤの剣と砂の剣がぶつかり合う。砂の剣の勢いを真っ向に受け止めるシロヤの体は、どんどん後ろに押されていく。剣を持つ手がカタカタと揺れ、次第に力が入らなくなる。

「そろそろ限界のようですね。ではトドメといきましょうか!」

 砂の剣がさらに大きくなり、勢いも増していった。

「くぅ!」

「ヒヒヒヒヒ!」

 シロヤの体がブレ始める。勢いを増した砂の剣を真正面から受け止めているシロヤの体は、予想以上にスタミナを消耗していた。

 しかし、シロヤは手の力を弛めなかった。

 一方、砂の剣を維持し続けているレーグは、どんどんと表情を歪ませていた。

「くぅ・・・なぜここまで持ちこたえるとは・・・。」

 対象物(ここでいう砂)を形にして維持するのは、術者に対して予想以上の負担をかける。それは、"賢者"であるレーグも例外ではない。

「仕方ありません・・・。」

 小さく呟くと、レーグは砂の剣の勢いを止め、間に立ちふさがっていた砂の塔を崩した。

 それと共に、砂の剣が形をなくして落ちていった。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 肩で息をするシロヤ。

「砂の剣を受け止めるとは・・・よほどの名刀でなければ不可能なはずですが・・・。」

 もちろん、シロヤの剣が名刀ではないのは、シロヤが一番よく知っていた。

「何で・・・?」

 剣を見つめるシロヤ。すると、剣が急に言葉を走った。

「ロ・さ・・シロ・・ま・・・シロヤさま・・・シロヤ様!」

 か細い声がシロヤの耳に響く。その声を、シロヤは聞いたことがあった。

「この声は・・・クピンさん?」

 声の主がクピンであることがわかった瞬間、頭に映像が流れこんだ。


「クピン!これを握って!」

「これって・・・シロヤ様の剣?」

「ほら、早く!」

 プルーパに促され、クピンは剣を持って目を閉じた。

 その瞬間、剣にクピンの霊力が流れこんだ。


「クピンさん・・・。」

 映像が止み、シロヤは再び剣を見つめた。

「・・・ありがとう。」

 剣を見つめたまま、シロヤはクピンへのお礼の言葉を呟いた。

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