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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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分断

 レジオンは、城に向けて走っていた。それを追うプルーパとシロヤ。

 しばらくしてたどり着いたのは、城から少し離れた砂丘だった。

 砂丘を登りきった瞬間、レジオンは背中の大剣の柄に手をかけた。

「さて・・・そろそろ出てきてもらおうか?レーグ。」

「えっ?」

 レジオンが呟くと、突然砂丘の一部が大きく盛り上がった。

「うわぁ!」

 急に盛り上がったことによって、足元の砂が暴れまわる。耐えきれずに、シロヤはバランスを崩した。

 盛り上がった砂が徐々に落ちていき、その中が明らかになっていく。その中にいたのは、自分の身長よりも長い杖を持っている小柄な老人だった。

「ヒヒヒヒヒ!よくわかりましたね!」

「当然だ。お前とは城に入ってからの同期生だからな。」

 対峙する二人。レジオンは今にも大剣を抜こうとしている。レーグも同じように構えたが、一瞬で構えを解き、含み笑いを始めた。

「ヒヒヒヒヒ!あなたと戦うのは次の機会にさせてもらいましょう。」

 そう言うと、レーグはレジオンの方に向かって、杖を軽く振った。


ゴゴゴゴゴ!


「何だ!?」

 そう言った瞬間、レジオンの周りの砂が動き始めた。レジオンを包み込むように盛り上がる砂。その場から離れようと地面を蹴った。

「無駄ですよ!ヒヒヒヒヒ!」

 さらに砂が盛り上がり、一つの大きな柱となってレジオンに向かってきた。

「ちっ!」

 間一髪で向かってきた柱を避けるが、その瞬間に、レジオンの体は砂の檻の中に封じられた。

「くそ!叩き斬ってやる!」

 レジオンは、背中の大剣で何度も砂の格子を斬りつけるが、叩き斬るどころかひびすらはいらない。

 それを見たレーグは、再び含み笑いをしながら向き直った。

「ヒヒヒヒヒ!あともう一人!」

 レーグは再び杖を振った。その瞬間、プルーパの周りがレジオンと同じように盛り上がった。

「プルーパ様!」

 みるみるうちに形成されていく砂の檻。

「くっ!」

 砂の格子を蹴りつけるプルーパ。しかし、大剣で斬りつけても効果がないほどの強度を持つため、蹴り程度ではダメージは無いに等しかった。

「なら・・・これはどう!?」

 プルーパは、ドレスの足元から短剣を取り出した。手一杯に短剣を持ちながら、プルーパは激しい舞を踊った。

 だんだんと激しくなる舞、そして勢いが最高潮になったとき、プルーパは持っていた短剣を全て放った。

 しかし・・・。

「ヒヒヒヒヒ!無駄無駄!」

 短剣はレーグには届かず、レーグの前に現れた砂の柱が、飛んできた短剣を砂の中に封じ込めた。気づけばプルーパは、完全に砂の檻に捕らえられていた。

「ヒヒヒヒヒ!」

 しばらく続く含み笑い。

 気づけば、そこにはシロヤだけが残っていた。

「ヒヒヒヒヒ!何故自分だけが取り残されたのかわからない、といった表情ですね。」

 レーグは含み笑いを続けながら、タバコを吸い始めた。

「俺は・・・閉じ込めないのか?」

 そう聞いた瞬間、レーグは今までにないくらいに高笑いを始めた。

「ヒーヒッヒッヒッヒ!何を言っているのですか!私の今の狙いはあなたなのですよ?」

「今の狙いだと・・・俺が目的ってどういうことだ!?」

 レーグは再び高笑いしながら話を続けた。

「私達が望むのは、シアン現女王の失脚、そして死。」

「それと俺がどう関係しているんだ?」

 レーグはさらに高笑いをした。

「ヒーヒッヒッヒッヒ!まだわからないのですか!?」

 高笑いをしながら、レーグはタバコの前で指を鳴らした。その瞬間、タバコの火が一瞬にして消え去った。

 加えていたタバコを投げ捨て、レーグはさらに続けた。

「まだわからないんですか?あなたが死ねば、シアン女王がどうなるのかというのを!」

 シロヤは固まった。

「わからないようですね。まぁ、わからないなら好都合です。このまま死んでください!」

 レーグが軽く杖を振ると、砂の槍が現れてシロヤに向かって放たれた。

 棒立ちのシロヤに向かって高速で飛んでいく砂の槍。

「シロヤ君!」

「シロヤ!」

 檻の中の二人が叫ぶ。

 間に合わないと思った直後、シロヤと槍の間に突然、黒く大きな影が割り込んだ。


ヒュン!


 槍が突き刺さる。しかしそれはシロヤにではなく、間に割り込んだ黒い影にだった。

「お前・・・。」

 割り込んだのはクロトだった。砂の槍をまともに食らったクロトの体が、少しずつ血の色を含んでいく。

「クロト!しっかりしろクロト!」

 倒れるクロトに駆け寄る。しかし、近づいた瞬間にクロトは大きく叫んだ。

 まるで、クロトが「僕の事は気にしないで!」と言っているようだった。そしてシロヤには、今のクロトの叫び声がそう聞こえた。

 ゆっくりと立ち上がり、背中の剣を抜いて構える。

「まだ・・・俺はシアン様に"答え"を出してない。答えを出すって・・・シアン様に言ったんだ!」

 決意を固め、シロヤはレーグに向かって飛び出した。

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