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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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銃士

「お前は確か・・・ランブウ!」

「ご名答。」

 返事と同時に、ランブウは持っていた銃を発砲した。


キィン!


「ひ!」

 相手が持っていたボウガンを弾き飛ばす。それを見た他の四人が、ほぼ同時に武器を構え直す。

「・・・遅い。」

 相手が構え直すと同時に、ランブウは懐に手を入れながら引き金を引いた。

「ぐ!」

「・・・!」

 素早く放たれた二発の銃弾が、二人の武器を弾き飛ばした。

 それと同時に、懐から勢いよく手が引き抜かれた。引き抜かれた手には、銃が一丁握られていた。ランブウは華麗なガンスピンを決めながら、もう一丁の銃を素早く放った。

「わ!」

「う!」

 引き抜かれた方の銃で、残り二人の武器を弾き飛ばす。

「流石ね・・・。」

 素早く武器を取ろうとした五人。しかし、五人の手が武器に触れることはなかった。

「くぅ!」

「きゃあ!」

「うぅ!」

「ぐわっ!」

「・・・!」


 ほぼ同時に五人がうずくまる。五人の手が、みるみるうちに真っ赤に染まる。ランブウは、五人の手に狙いを定めて、ほぼ同時とも言える速度で銃を五発放ったのだ。

 ランブウは、静かに銃をしまった。

「ま!待て!」

 一人が立ち上がって、震える手で武器を持って叫んだ。

「まだだ!まだ利き腕をやられただけだ!」

「そ!そうだ!俺はまだやれる!」

 一人がそう言うと、銃口をランブウに向けた。しかし、ランブウは動かない。

「やめとけ。怪我じゃすまなくなるぞ。」

「黙れ・・・!」

 放たれる銃弾。それと同時に、ランブウも銃弾を放つ。


キィィィン!


 一際甲高い音が響く。放たれた敵の銃弾は、ランブウが放った銃弾によって勢いをなくして、ふわりと宙を舞った。

「まさか・・・放たれた銃弾を・・・。」

 ランブウは、相手が放った銃弾を銃弾で弾いたのだ。

 それだけでは終わらないと、ランブウはさらに発砲する。

 ランブウが放った二発の銃弾は、またさらに空中で甲高い音を放った。


ヒュン!


「うわぁぁぁ!」

「きゃあああ!」

 ランブウが放った銃弾は二発だが、二人を掠めたのはそれぞれ二発の銃弾だった。

 訳がわからない二人は、そのまま体が膠着してしまった。

「ランブウ・・・舞っていた銃弾に銃弾を当てたのね。」

「よくわかったな。」

 涼しい顔をしているが、ランブウが行ったのは高等技術と言ってもまだ足りないぐらいの技だ。

 単に弾が当たっただけでは、勢いをなくした弾の勢いを戻すことはできない。当てる角度や当てる場所等も計算しなければできない芸当である。さらにランブウは、勢いをなくした弾と新たに放った弾の軌道を、四つの銃弾をぶつけることで操作したのだ。

 これだけの計算を一瞬で行えるのは、銃士としての才能。そしてランブウが持っている特有の力。


"集中力"


「くそ!お前らなんなんだよ!」

 そう言うと、五人が武器を構え直した。

「まだやるのかい・・・しょうがないなぁ・・・。」

 ランブウは足を軽く振りかぶって、地面を蹴りあげた。

「うわぁ!」

 上がる砂埃は、どんどんと強くなっていった。

 五人は、完全に砂で封じられた空間に分断されてしまった。

「くそ!どこだ!どこにいる!」

 一人が激昂しながら周りを見渡す。しかし、どんどんと悪くなってく視界は、砂以外を捉えていない。

「なめやがって・・・うぉらあああ!」 銃を乱射する。その音を聞いたもう一人が、慌てた様子で叫んだ。

「ダメ!こんな砂埃が舞ってる中で銃を撃っては!」

「うるせえぇぇぇ!」

 銃口から放たれる銃弾は、空しく空を切って落ちていく。そして、銃弾が放たれたと同時に出てくる、小さな火花。

 当人がそれを危険なことだとわかったのは、五人が突然の大爆発に巻き込まれた後だった。


「やれやれ・・・。」

 砂埃が、ランブウの後ろで突然爆発した。その爆発は、外から見たら小規模に見えるが、砂埃の中の者にとっては大爆発と感じるだろう。

「銃士なら・・・戦う環境を考えて銃を扱わなければな。ましてや・・・バスナダの銃士にでもなったらな。」

 砂埃が舞う中で銃を放つことは、バスナダの銃士にとっては危険行為だとされている。それも当然、そんな状況下で銃を撃つとどうなるのかというのは、何回も教えられていることなのだ。

 バスナダという環境であるからこその銃士の弱点。

「撃った時に出る小さな火花は、舞う砂の一粒に引火したと同時に連鎖反応を起こし、爆発する。」

 俗に言う"粉塵爆破"と呼ばれている現象だ。

「冷静さを欠いたからこうなるんだぜ。覚えておきな、バスナダ七人衆。」

 爆発した所を見ると、まだ煙が上がっていて確認できない。

「まぁ・・・死んではいないだろうな。あいつらも・・・こいつも。」

 ランブウは、足元で倒れているバルーシに目をやった。

「ほら起きろ!後を追うんだろ?」

 倒れていたバルーシは、いつの間にか小さな寝息をたてていた。

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