表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
28/156

根性

「・・・!」

 剣を持った相手は固まった。それどころか、他の四人も同じく固まっていた。

 バルーシの頭を狙って降り下ろされた剣は、確かにバルーシにヒットした。

「くぅ・・・うぅぅ!」

 ヒットしているが、バルーシは倒れない。バルーシは、向かってくる剣を頭で受け止めたのだ。

 そしてそのまま、頭に剣の刃が食い込んでいる状態から、バルーシは反撃した。

「・・・ぐっ!」

 今まで声を出していなかった相手が、初めて苦しみの声を上げた。鳩尾に打撃を食らった相手は、そのまま膝をついて倒れた。

「あ・・・あり得ない・・・。」

「すごい出血量・・・。」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 肩で息をするバルーシ。

「でも、そろそろヤバイんじゃないかしら?」

「そうですね。それだけダメージがあれば・・・。」

 今、バルーシは立っている。しかし、今立っていることが奇跡だということは、バルーシが一番よくわかっていた。

 全身に刻まれた剣、銃、ボウガンの傷。ボウガンが貫通したことで真っ赤に染まる脇腹。そして、頭には剣を真っ向から受け止めたためにできた深い傷。

 流れ出る血は、バルーシの体、頭を真っ赤に染めあげている。

 そして、バルーシは目がほぼ見えていない。失明ではないが、視界はぼやけていて周りを認識していない。

 しかし、バルーシは立っている。そして、残った七人衆の内の四人に向かっていった。

「な!まだ動けるの!?」

「こいつ・・・不死身か?」

 ボウガンと銃をそれぞれ構える。

 今のバルーシに、戦術をその場で考えるような力は残ってない。

 バルーシを動かしているのは、シアンやシロヤ等、この国に住む人々、守らなければならない人々への忠誠心。

 そして、生まれながら人が持っている力。バルーシ特有とも言える、バルーシの心の力。


"根性"


「うきゃ!」

「うぐぁ!」

 バルーシに恐怖した二人は、一瞬の隙を作ってしまっていた。バルーシはそれを見逃さなかった。すかさず繰り出された打撃は、二人を地に伏せさせた。

 向き直って、残りの二人に向かって突撃するバルーシ。

「どこまで恐ろしいの・・・?この男は。」

「油断なりませんな・・・。」

 二人は武器を素早く取り出し、素早く構えた。

 一人は槍、もう一人は片手斧、どちらも近距離戦用の武器だ。

 すぐさま、バルーシは剣を取り出して槍と片手斧を防いだ。そして始まる二対一の競り合い。バルーシが不利なのは言うまでもないが、バルーシはただひたすらに競り合いを続けた。

「くっ!」

「・・・!」

 二人は、いつの間にかバルーシに圧倒されていた。次第に後ろへと後ずさっていく二人。

 そして・・・。


ガキィィィン!


「うっ!」

「ぐわぁ!」

 二人の武器を弾き飛ばしたバルーシは、そのままの勢いで蹴りを放った。

 綺麗な弧を描いて、二人は飛んでいった。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 激しく息をしながら、バルーシは周りを見回した。

 バルーシには見えていないが、七人衆は全員倒れていた。

「後を・・・追わなければ・・・。」

 ふらふらのまま、バルーシは三人が向かっていった方角へと歩きだした。


ヒュン!


「えっ・・・?」


 突如後ろから聞こえた、空気を切り裂く音。音の正体は・・・。

「ボウ・・・ガン・・・?」

 そしてそのボウガンは、ふらふらのバルーシの足を貫いた。

「キャハハハ!油断しすぎだよ〜!」

「まさかここまで油断しているとは・・・。」

「まさか私達が立ち上がるなんて思いもよらなかったでしょうね。」

「詰めが甘いとはこのことでしょうか。」

「・・・。」

 立ち上がったのは五人だった。

「立ち上がったのは我々だけですか?」

「最初の二人はダメージを受ける前に気絶させられたからでしょうね。」

「キャハハハ!ダッサ〜イ!」

 全員、武器を構え直す。

 そしてバルーシは、新たに与えられたダメージによって完全に意識を手放そうとしていた。

「キャハハハ!早く死んじゃえ!」

 さらにバルーシを追い詰めようと、ボウガンをさらに構える。

 もはや真っ直ぐ歩けないバルーシは、それに抗うことができない。

「キャハハハ!」

 笑いながら、ボウガンの引き金を引いた。


キィン!


「え!?」

 確かにバルーシの背中を狙って放ったボウガンは、空中で方向転換したかと思えば、そのまま勢いをなくして砂の上に落ちた。

 そして、落ちたボウガンの傍らには、同じく勢いをなくして落ちた物体が落ちていた。

「これって・・・銃弾?」

 そんな事が起きてることを知らないバルーシは、そのまま勢いをなくして倒れこんだ。


「よくやったな、バルーシ。」


 倒れこむバルーシを受け止める一人の男。もちろん、バルーシはその男を知っていた。

「バルーシに変わって、今度は俺がお相手しよう。」

 そして男―――ランブウは銃を取り出して構えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ